コロナ禍を受け、東京を離れてテレワークをする人たちが増えている。しかし、検討はしているもののなかなか実行に移せないという人も少なくないはず。そこで、テレワークを実践している移住者たちの実体験を取材した。今回は東京から熱海に2015年に移住し、まちづくりに携わっている三好明さんのケース。
三好明さん
不動産会社代表
40歳
働く意義を教えてくれたのが熱海だった
「不動産管理会社の仕事は肉体的にも精神的にもハードで、早く東京から逃げ出したいと思っていました。そんな時、ボランティアで熱海のまちづくりに携わり、公共施設の管理を任されることになったんです。すると、ストレスでしかなかった東京のビル管理の仕事で身につけたスキルがとても役立ち、感謝もしていただきました。そこで、初めて仕事に意義を見出すことができたんです。自分のスキルが求められ、発揮できる場所に人生をかけたい。そんな思いで会社を辞め、熱海への移住を決めました」
①気分転換がしやすくなった
コワーキングスペースで働き、行きつけの喫茶店で休憩し、近くの温泉旅館の日帰り温泉に浸かる。そんな風に、熱海の街全体をまるで自宅の延長のように暮らす「まちごと居住」を提案している三好さんは、自身もそれを実践している。
「都会と違って気分転換もしやすいです。ちょっと歩いて海を眺めるだけでリフレッシュできますし、ゆっくりくつろげるお店もたくさんある。街の様々な場所で色々な気分転換ができるんです。街を歩いていると必ずと言っていいほど知っている人と出会うのもコンパクトな街ならではの魅力。地域の人たちと日常的に自然にコミュニケーションが取れる暮らしって実はとても豊かなことなんだと実感しています」
②散歩するようになった
東京にいた時に比べると、一日に歩く距離が格段に増えたという三好さん。いまや歩くこと自体に楽しみを見出すようになったという。
「毎日1万2000歩くらい歩いています。基本的に徒歩圏内での生活を送っていますが、毎日新しい発見があります。古い建物や空き家をどうリノベーションして活用するか妄想するのが趣味のようなものなのですが、熱海は街全体がレトロなうえ、空き家率も52.7%と全国でも見ても高い。私にとってはまさに宝の山のような場所なんです。本音を言うと、それが移住を決めた一番の理由だったりします(笑)。トタンの風合いが大好きでトタン愛好家を自称しているのですが、熱海はトタンを使った建物も豊富。新しい魅力的なトタンと出会うためにも、日々色んな場所を歩いています」
③お金の使い方が変わった
実は熱海にはチェーンやフランチャイズのお店は数少なく、立ち並ぶ店のほとんど個人商店だ。そんな環境が三好さんのお金の使い方に影響を与えた。
「東京にいた時はお腹が空いたらただ空腹を満たすために近くの適当なお店に入るのが普通でした。熱海に住むとお店の人と顔見知りになり、関係性が築かれていく。すると、誰がやっているお店で何を食べてどうお金を使うかを意識するようになったんです。結果、自分のお金の使い方に対する『納得度』がとても高くなったと感じています」
④生き方の選択肢が広がった
暮らし方、生き方の多様性があるのも熱海の魅力だと三好さんは語る。
「個人事業主、アーティスト、会社員をしながら複業している人、本業と別に会社を持っている人、仕事以外に歌手活動をしたり、ボランティアやイベントに携わっている人など、熱海には本当に色々な人がいます。彼らを見ていると、仕事ってひとつじゃなくていいんだとか、好きなことをやって生きていいんだと思えますし、自分にもそれができるんだと思わせてくれます。もちろん、やりたいことだけやって生きていくのは難しいことですが、生き方の選択肢が広がったのは私にとって非常に重要なことでした」
⑤東京が好きになった
「熱海に移住してから、東京ではあまり行くことのなかった昔ながらのスナックやジャズ喫茶などを訪ねることが増えました。そのうち、そうしたお店に興味が湧いてきて、上京した時に東京のディープスポットを巡るようになったんです。おかげで、今まで知らなかった東京の新しい魅力に気づくことができました。また、東京では新しいお店やサービス、イベントが次々に登場しており、上京するたびに東京のすごさを改めて実感しています。一度は離れたくてたまらなかった東京ですが、今ではいい刺激をたくさん与えてくれる大好きな場所になりました」
復興に尽力されている皆様には安全に留意されご活躍されることをお祈りいたします。
また、本記事が地域の魅力を伝える一助になることを願います。