初の愛車はジウジアーロと決めていた
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トラック業界で世界有数のシェアを誇るいすゞ自動車。同社にはかつて乗用車部門があり、多くの名車を世に送り出していたことをご存知だろうか。その中の一台が、今回ご紹介する「いすゞ・ピアッツァ」。イタリアの工業デザイナーの巨匠ジョルジェット・ジウジアーロによる美しいボディラインは、一見すると国産車ではないような錯覚を覚える。こうしたクルマに出会えるのも、ネオクラ車の面白いところだ。
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代々木体育館前に現れた一台のピアッツァ。今や見かけなくなったアイボリーホワイトのボディカラーは、陽の光を存分に浴びても煌めくこともなく、しっとりと佇む姿がしおらしい。オーナーの後藤和樹さんは、22歳という若さではじめての愛車にピアッツァを選んだ。降りてきて開口一番「この場所、とても懐かしいですね」と話す。後藤さんは学生時代、この近くにあるデザイン学校に通っていた。
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「今もデザインの仕事に関わっていますが、学生時代からジョルジェット・ジウジアーロ氏のことは尊敬していました。それにクルマは幼い頃から好きだったので『初の愛車はジウジアーロ作品』と決めていたんです」
そして次第にピアッツァに心惹かれていったが、学生時代は手にすることが叶わず、就職したタイミングでいすゞ系の専門店で「MT」を条件にピアッツァ探しをスタート。1983年製という、きわめて希少な初期の個体に出会った。
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「流麗なデザインでありながら、大人4人が十分に乗れるスペースがあって、ハッチバックだから積載力も高い。エアコンもよく効いてくれますし、パワステもついているなどとても40年も前のクルマとは思えない実用性の高さです」
その中でも、後藤さんが特に気に入っているポイントは、メーターパネルの両脇に備わる「サテライトスウィッチ」。
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「運転しながら手を離さずに操作ができるので、慣れてくるととても使いやすい。ただ格好いいというだけではなく、使いやすさを追求したデザインであることがよくわかる一例です。ジウジアーロの機能美からは学ぶことがとても多いです」
仕事場にピアッツァで行くことはないが、休日はドライブに限らず、キャンプにもこれで行く。日頃から乗りまわすことこそが、クルマのコンディションを保つ秘訣。古いとはいえ丈夫な造りであるため、大きな故障に見舞われた経験もこれまでないという。
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「ピアッツァから乗り換えることは考えられないですね。ピアッツァを温存するために他の足グルマを買ったことも実はありましたが、結局はピアッツァに愛情を注ぐために短期間で売却し、1台体制に戻しました。また2台目を手に入れることがあれば、キャラが被らずに走りを楽しめるクルマがいいなと思っています」
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1997年神奈川県生まれ。デザイン会社に勤める傍ら、休日は同世代とのクルマ趣味を楽しむ。シトロエンC5も所有していたが現在は売却し、新たな足となるクルマを探し中。