日本にBMWを知らしめた傑作セダン
「駆けぬける歓び」。クルマ好きならずとも、一度はどこかでこの言葉を聞いたことがあるかもしれない。バイエルンのエンジンメーカーとして出発したBMWは、長年このキャッチフレーズとともに、走りの楽しさと実用性を兼ね備えたクルマを世に送り出してきた。
日本でBMWの名前が一躍有名になったのは、1980年代後半から90年代頭にかけてのこと。今回ご紹介する3シリーズセダン(E30型)は、バブル景気の日本において「ベンベー」「六本木のカローラ」などと呼ばれ、人気を博したコンパクトセダンだ。オーナーの中山さんは、今から6年前にライトブルーの318iと出会い、初の愛車として出迎えた。
「上京してから15年ほどはクルマの必要性を感じていなかったのですが、親しい友人など周囲でクルマに乗り始める人も増えてきて、自分にも欲しい気持ちが次第に湧いてきました。セダンを狙っていたものの、初めからE30を探していたわけではなかったですが、この個体が走行距離6万kmのフルノーマルだったこともあり、購入しました。平日は電車通勤なので、休日のちょっとした遠出に乗って楽しんでいます」
全長4325mm、全幅1645mmという5ナンバーサイズのコンパクトボディに、丸いヘッドライトと小さなキドニーグリル。デザインは現行のBMWと比べるとおどろくほどすっきりとしている。
「外装も内装も、デザインに無駄がありません。都内でも取りまわしがしやすく、新車当時から人気だったことがよくわかります。僕自身、洋服もシンプルながら作りが良いものを好みますし、このクルマは性格にとても合っているのでしょうね」
中山さんのもとへやってきてから6年が経つが、困った不調はエアコンの効きが悪かったことくらい。大きなトラブルには見舞われていない。
「実は妻の父が整備士でして、少しでも不具合が生じると細かく診てもらっています。エアコンの不調もおかげさまで直り、いまは快適。インテリアや腕時計もそうですが、作りのよいヴィンテージを丁寧にメンテナンスして使い続けることが好きなので、ちょっとやそっとの故障くらいは可愛くみえてきます(笑)」
主治医の縁に恵まれていたことは大きな救いだろう。「お義父さんに手伝ってもらいながら、乗れるだけ乗りたい」と話す中山さん。思いが詰まった最初の1台を、これからも末長く乗り続けてほしい。
1983年生まれ。アタッシュドプレスとして活動後、アーバンリサーチへ入社。現在は同社でプレスマネージャーを務める。
Photos: Tetsuya Toyoda