堅牢なメルセデスに一度は乗りたかった
オクラ車の魅力はさまざまだけれど、そのひとつにボディカラーを掲げる人も少なくない。今回紹介するのはW123と呼ばれるメルセデス・ベンツのミディアムクラスの中でも、S123型となるワゴン230TE(1984年式)。この時代特有の「チナブルー」が眩しい。黒やシルバーのシャープなボディで街をゆく現行のメルセデスを見慣れた人からすれば、「えっ、これ本当にベンツなの?」と驚きを覚えるだろう。
オーナーの水野さんは、ファッションスタイリストとして雑誌や広告で活躍するほか、渋谷・富ヶ谷で古着とケールサラダとコーヒーのお店「OVERLAP」も経営する。日々大量の衣類を運ぶため、クルマは必需品。これまでもメルセデス・ベンツのゲレンデヴァーゲンやボルボ・940 エステートなど、趣味性と実用性を兼ね備えたちょっと古いクルマを乗り継いできた。
「ファッションもプロダクトも、1970年代〜90年代のデザインや雰囲気が好み。特に工業製品は、今と比べて無駄ともいえるほど時間とコストがかかっていますよね。僕のなかで、W123のメルセデスはそうした匂いが最も感じられるクルマなんです。なんとしてでも、一生に一度は乗るべきだと思っていました」
そう思いを募らせ続けていた2年前、ネオクラシックのメルセデスを扱うショップで出会ったのがこのワゴン、230TEだった。セダンが欲しかったものの、チナブルーの美しい塗装や状態の良さに魅せられ、500m試乗しただけで「買います!」と即決。ボルボ940を手放した。
コンディションはそれほど悪くなかったが、これまで所有してきたクルマのなかでは特に古い年代ということもあって、気まぐれに起こる不具合や故障はやはり皆無ではなかった。
「幸いにも深刻なトラブルには今のところ至っていないですが、突然道ばたで止まってしまったこともあるし、日常的なところでは日によってアイドリングにバラつきがあるなど、はじめは戸惑うことも多かったです。でも、基本的には丈夫なクルマですから、経年度合いを見ながら消耗品を交換してあげればそれほど苦労するイメージはありません」
水野さんは仕事でもプライベートでもほぼ毎日乗っており、関東近郊まで足を伸ばすことも少なくないという。もったいぶらずに乗ってあげることで、クルマの機関や足まわりの“健康”を維持することにもつながっているのだろう。ここ最近はすっかり調子がいい。
「走行距離も17万kmですし、そろそろエンジンとATはオーバーホールの時期かなと。修理の相談は家族にもしていますが、幸いにも妻は古いクルマに理解があるので助かっています。今のところは、このクルマが朽ちるか、または自分が維持できなくなるまでは乗り続けたいです」
固い意志をみせる一方で、ほかにも気になるクルマはあるみたいだ。
「60年代のフォード・マスタングやブロンコなどのアメリカンにも乗ってみたいし、現実的なところではメルセデスのVクラスやシボレーのピックアップ系が気になり始めています。でもこの123は手放せない(笑)。仕事を頑張ってもう1台増やすしかないですね(笑)」
1984年長野県生まれ。スタイリスト、ファッションディレクターとしてファッションメディアやTVなどで活躍する。2020年には、古着とケールサラダとコーヒーのお店「OVERLAP」を富ヶ谷にオープンした。