2025.02.25
最終更新日:2025.02.25

【あの人の行きつけ】大人が食すべき「銀座のランチ」3選【撮影・文・食|平野太呂】

【あの人の行きつけ】大人が食すべき「銀座のランチ」3選

写真家・平野太呂が、気になる人の行きつけにお邪魔。決まって頼むというメニューを食べて、本音をつづる連載から「銀座のランチ」にフォーカスしてピックアップ。

01:ぎんざ春日|天丼

ぎんざ春日の天丼。
風情ある店内で、お店の方と常連さんの会話も心地よい。サクサクの穴子に毎回満足です。

銀座の良心

「銀座で天ぷら」と聞くだけで構えてしまう。きっとあなたもそうでしょう? 僕もそうです。もちろん憧れはあるけれど、値段書いてないし怖い。もっと大人になったらね…なんて後回しにしている。しかし気がついたらもう自分も結構な大人の年齢…。しかし安心してください、僕たちには「ぎんざ春日」があるじゃないか。

 並木通りから路地に入ると小さな店構えに上品な白い暖簾がかかっている。引き戸を開けるとカウンターとテーブル席が二つ。いずれも白木の天板できれいに手入れされている。聞けば60年物だという。しかしとぎ澄まされたような店内ではなく、どこかホッとする感覚も残る。塗装されていない白木の肌触りが好きなので、これだけで好きな店と認定してしまいそうだ。江戸っ子気分が盛り上がる。ここはシンプルに天丼を。具は小ぶりな海老と穴子と野菜、タレは甘さ控えめのあっさり味。これなら午後に胃がもたれることもない。これで1000円ちょっと。いろんな方面に優しい。

 僕の中で「おいしいお店知ってそう」ランキング筆頭の中原さん。いや、ただ単においしい店を知っているだけではない。お店の雰囲気、働く人の雰囲気、常連さんの感じ、すべてひっくるめて「いい店を知っている人」ランキング筆頭だったのだ。まいりました、また来ます。

ぎんざ春日

1200円と破格だが、「原価がどう、というよりお客さんに満足してもらいたい」との板前の島田さんの言葉どおり、味は絶品。夜は板前割烹に。

東京都中央区銀座1-4-6
TEL:03-3561-1887
営業時間:11時30分~14時(13時45分L.O.)、17時~22時(21時L.O.)、土曜〜20時
定休日:日曜・祝日

THE CONRAN SHOP JAPAN CEO
中原慎一郎さん

空間やイベントのディレクション・プロデュースから、編集まで多岐にわたり活躍。打ち合わせで銀座に来た際に「路地好き」として散策していてこの店に出会ったそう。

02:漫莉キッチン|お粥セット「ムール貝粥」

銀座・漫莉キッチン |ランチのお粥セット「ムール貝粥」
ランチには3種類のお粥があり、どれもおいしい。店主の漫莉さんもすごく優しいです。

斜め前の広東

 自分の職場の近くにいい店があるかどうか。これって深刻な問題。僕は一カ所にとどまらない仕事だからいいけど、もし同じ場所に勤めるとなると冷や汗かいちゃう。だから森岡さんは幸せだ。だって森岡書店の斜め向かいにこんな中華料理屋さんができたのだから。

「漫莉キッチン」ではオーナーの漫莉さんとシェフが故郷の広東料理をアレンジして出してくれる。今回いただいたのはお粥。中華料理と聞くと味が濃くて、量が多いものを想像してしまうけど漫莉さんの料理は優しい。海鮮のだしがきいた滋味深いお粥で心底ホッとできる。聞けば、漫莉さんのお母さんの味なのだという。お母さんがじっくりとだしをとって作ってくれたお粥を、思い出しながら作っているのだそうだ。そんな味をこの銀座で味わえるなんてこれこそ贅沢じゃないか。

 思えば森岡さんは不思議な縁を感じる友人である。森岡さんを紹介してくれたのは母である。あるカフェで母と隣の席になったのが森岡さんだったのだ。森岡さんのもつ豊かなオーラがこうして人をつなげるのだ。きっと漫莉さんも感じているのだろう。

漫莉キッチン

森岡書店から徒歩1分。森岡さんが「だしの深みがあって美味です」と推してくれたお粥ランチはムール貝でだしをとった「ムール貝粥」のほかに銀杏と湯葉だしの「銀杏粥」、干鱈と生落花生だしの「貴妃粥」があり、いずれも¥1,000。

東京都中央区銀座1-24-5
TEL:080-3242-9868 
営業時間:11時30分~14時30分、17時30分~22時、日曜11時30分~21時
月曜休み

森岡書店 店主
森岡督行さん

一冊だけの本を扱う、書店でありギャラリーでもある「森岡書店」。銀座の中でも静かで落ち着いたエリアに佇む。開催情報はインスタグラム@moriokashotenでチェックを。

03:うなぎ ひょうたん屋6丁目店|鰻重

銀座 うなぎ ひょうたん屋6丁目店の鰻重。
関東風ではない鰻が食べられると知人に紹介されてから通っています

僕らは銀座で鰻を食べられるのか

 銀座で鰻というだけで若干の緊張を感じながらお店へと向かう。きらびやかなGINZA SIXの裏手に目指す「ひょうたん屋」はあった。お互い若い頃、夜な夜なストリートスケーティングに勤しんだ(僕は撮影ですが)田口くんの紹介である。その頃はお店が閉まった後、人のいなくなったオフィス街が主戦場だったはずなのに、今こうして銀座の鰻屋を紹介してもらえるとは感慨深いではないか。

 店に入ると緊張が和らぐ。僕が想像していた研ぎ澄まされた銀座の鰻屋のイメージをいい意味で裏切ってくれる。親しみのある居酒屋のような雰囲気なのだ。これなら安心して鰻を食べられる。店内をよく見ると、田口くんが描いた絵に加えて、スタジオジブリのものがちりばめられている。どうやらジブリのプロデューサーである鈴木敏夫さんの行きつけのようだ。お店のロゴも鈴木さんによるものらしい。

 関東では鰻をふっくらさせるために一度蒸すのだが、ここは蒸さずにそのまま焼く。端がパリッと香ばしいのがとてもおいしい。うん、ここなら「たまには銀座で鰻でもどう?」って僕にも言えるかもしれない。

うなぎ ひょうたん屋6丁目店

生から蒸さずに焼き上げる、表面はカリッ、中はふんわりとした独自のスタイルの鰻が楽しめるお店。写真の「鰻重 松」は¥4,800。

東京都中央区銀座6-12-15
TEL:03-3572-2511
営業時間:11時30分〜13時30分、17時30分〜20時30分(L.O.19時40分)、土曜17時〜20時(L.O.19時10分)
定休日:日曜・祝日

CHALLENGER デザイナー
田口 悟さん

「アメリカン・ガレージ」をコンセプトとしたブランド、CHALLENGERのデザイナーを務める。「ひょうたん屋6丁目店の店内には僕の絵も飾っていただいています」。

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