2025.02.24
最終更新日:2025.02.24

【あの人の行きつけ】大人が食すべき「東京の町中華」3選【撮影・文・食|平野太呂】

【あの人の行きつけ】大人が食すべき「東京の町中華」3選

写真家・平野太呂が、気になる人の行きつけにお邪魔。決まって頼むというメニューを食べて、本音をつづる連載から「町中華」にフォーカスしてピックアップ。

01:祐天寺|三久飯店の牛ニラ定食の牛多め。

祐天寺_三久飯店_牛ニラ定食の牛多め
味はもちろん、常連さん、新規の方、すべてのお客さんを大切にする姿勢がとにかく素晴らしい。

コーナーショップは町中華

 祐天寺駅から少し歩いたところにある中華屋「三久飯店」。商店街の角に建つ、いわゆるコーナーショップ。白い暖簾に赤いテーブル。これぞ完璧な町中華。出入り口が二カ所あり、気の流れもよさそうだ。早速中に入ると、なにやら見覚えのあるステッカーが…すべての箸立てに貼ってあるじゃないか。なるほど、そういうわけだな。これは期待できそうだ。

 壁に貼られたメニューの多さ、細やかさからもわかるように、ここは庶民の味方であることがうかがえる。いいからこれを喰らえ的な威圧感がゼロなのである。三好さんからのお勧めも「牛ニラ定食の牛多め」である。聞けば、わかめラーメンにワンタン追加で、とかもあるらしい。どこまでお客さんに寄り添ってくれるのだろう。しかし、これは常連さんだけのサービスかもしれないので、一般客はひとまず普通に頼むのがいいのかもしれない。

 町中華にありがちなガッツリしょっぱい味つけではない。しっかり素材の味がする。食べた後もどこかスッキリとした食後感。これなら通える。ほかのメニューにも気になるものがある。よい店は混む。当然だ。しかしこの手の店にはサッと入ってサッと出て行きたい。うーん、いつ行くのが正解なんだろう。僕なりの作戦を立てなくては。

三久飯店

1972年創業の祐天寺の名店。店構えだけでなく、親族で運営しているお店の空気は、どこか懐かしさを感じさせる。三好さん曰く「お店にはENNOYやeveryoneのステッカーを預けていて、お客さんに配ってもらったことも」。三好さんの定番メニューは「牛ニラ定食」¥900の「牛多め」+¥150。

東京都目黒区祐天寺2-17-11
TEL:03-3711-5946 
営業時間:11時30分~15時、17時〜21時
定休日:月・火曜(祝日の場合は月曜営業)

everyone ディレクター
三好 良さん

話題のブランドやショップを手がける、業界でも注目のディレクター。「ホール・キッチンを仕切るまさひろさんとは、本当に親しくさせてもらっています」。

02:上野毛|鴻龍の梅チャーハンと焼き餃子。

上野毛 鴻龍 梅チャーハンと焼き餃子
高級中華と町中華の交ざり具合がいい! 油がとにかく上品で胃に残らない。

父の味

 かつて暴れ川だった多摩川が台地を削り、国分寺崖線という崖が東京の西に横たわっているのをご存じだろうか。今でも緑が多いこのエリアに、灰色の都会を逃れて居を移す政治家や財界人も多いという。そんな人たちに愛されてきたのが「鴻龍」である。そう書くとさぞ高級中華料理店だと思われるかもしれないが、そうではない。上野毛の小さな商店街が途切れるあたりに慎ましく佇む街の中華屋である。

 店に入るとネイビーのポロシャツを着たおかみさんが出迎えてくれる。編集者の小澤くんのおすすめは「梅チャーハン」と「焼き餃子」だ。とにかくお米がパラパラとしていて、要所要所での梅の食感が楽しい。細切りにした大葉をたっぷりとのせた、私史上最高の爽やかチャーハンであった。これは何度でも食べたくなる味だ。キッチンから出てきたシェフに親近感を覚えると、僕と同い年だった。先代のお父様から引き継いだ二代目。話をすると、これまでのお客さんも、新しいお客さんも満足させたいという気持ち、そして父の味を引き継ぎたいという強い思いを感じる。迷ったときは父が作った料理を口の中で思い出すという。小さい頃食べた父の料理の記憶と新しい試み。これが今の「鴻龍」を支えている。

鴻龍

重さやしつこさはゼロなのに、満足感は抜群な、極上の町中華。小澤さんのおすすめメニュー「梅チャーハン」¥1,650、「焼き餃子」¥550。
インスタグラムは@kouryu_official

東京都世田谷区上野毛1-28-15
TEL:03-3703-2397 
営業時間:11時30分~14時30分、17時~21時30分
定休日:月曜

編集者
小澤匡行さん

「東京スニーカー氏」連載でもお馴染みの小澤さん。「家族ぐるみでお世話になっています。餃子は僕にとって日本一。でも何を頼んでもおいしい」と推してくれたお店。

03:聖蹟桜ヶ丘|銀龍のチャーハン。

聖蹟桜ヶ丘  銀龍のチャーハン。
中学生くらいのときから、多摩川に釣りに行く際にいつも気になっていたお店です

桜咲く町中華

 街道沿いの町中華。この響きだけでぐっときてしまうのは僕が中年男性だからだろうか? 友人の鰤岡くんからおすすめされたメニューがシンプルに「チャーハン」だけなのもまたいい。労働者階級の僕たちに余計な装飾物は必要ないのだ。

 店の大きさよりも広い駐車場に車を停めてお店に入ると、元気に迎えてくれたのが店主の静恵さん。年季の入った店構えとのギャップが素敵。お父様からお店を引き継いで二代目となって15年たった。お店ができた当時から数えて四代目となるかわいいお客さんも来るという。チャーハンを作ってくれたのはお父様の代から働いている髪をポマードできっちりまとめているおじさまだ。何度も何度も布巾で拭かれ、もはやピンク色に変化している町中華特有の赤いカウンターテーブル。そこにコトンと置かれる八角形の皿にこんもりと盛られたチャーハンとスープ。とてもいい意味でなんでもない風景。もしこれが食べられない人生になってしまったら、そのときはこのなんでもない風景を慈しむんだろうな。そんなことを考えながらレンゲを口に運ぶ。

 店を出るとお客さんの行列ができていた。古きよき町中華を守りながらも静恵さんがどう変えていくんだろうか、そんなことを考えながら桜咲く春の多摩川を散歩しながら帰った。

銀龍

聖蹟桜ヶ丘駅と京王永山駅の中間に位置するお店。今回紹介した「チャーハン」¥850をはじめ、昔から愛され続ける味を楽しめる。

東京都多摩市関戸5-9-11
TEL:042-338-3386
営業時間:11時30分~15時、土・日曜・祝日~16時、17時~22時
定休日:月曜

今月のあの人|MOBLEY WORKS代表
鰤岡力也さん

ウッドワークを中心とした工房・MOBLEY WORKSの代表。「王道の町中華で間違いがなさそうなお店の佇まい。2~3カ月に一度は銀龍のチャーハンが頭をよぎります」。

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