2024.07.18

麻布十番・永新のネギそば。【「あの人」の定番メシを訪ねる。行きつけで、いつもの。|第29回 】

写真家・平野太呂が、気になる人の行きつけにお邪魔。決まって頼むというメニューを食べて、本音をつづる。今回はジェリー鵜飼さんが30代の頃、毎日通っていた中華料理店。

第29回 麻布十番|永新のネギそば。

麻布十番 永新のネギそば
忙しい30代の時期を支えてくれた、ちょっと懐かしい雰囲気の町中華
今月のあの人|アートディレクター
ジェリー鵜飼さん

アートディレクター&イラストレーターとして活動。「仕事が忙しかった頃、近所の『永新』には毎日のように通っていました。刻みネギたっぷりのそばは絶品」。

旅先の中華料理店

 石畳の車道、小さなお店が肩を寄せ合い、中心には小さな広場があって携帯式のイーゼルに画板を立てて絵を描いている人がいる。ここはパリかな? そう思ってしまうほどの風情を残している麻布十番。大使館が周りに多いから、いろいろな国の人たちが歩いている。1961年創業の中華料理店「永新」はそんな麻布十番の街角にある。古くて小さいながらも店の前にある食品サンプルはキリッと清潔で、この店が街にとって現役であることを物語っている。中に入ると中華料理店なのにどこか西欧風な内装。それがなんとも麻布十番に合っていてかわいらしい。

 ジェリーさんオススメのネギそばを頼む。ついあれこれ頼みたくなってしまうのだが、このネギそば、ネギのみならずしっかりとチャーシューも入っているし、スープの味もしっかりとしていて、僕のような中年男性でも満足感があるのだ。

 地下鉄の駅ができるまでは陸の孤島として独特な存在感を放っていた麻布十番だが、今でもこの街には特別な空気が流れているように思う。東京のど真ん中でありながら、少しトリップ感があるのだ。旅先でアジアの味が恋しくて飛び込んだ中華料理店。永新にはそんな雰囲気がある。

永新

麻布十番で60年以上前から営業している老舗の中華料理店。オーナーの楊さんは父から店を受け継いだ二代目。紹介したネギそばのほか、どのメニューも長く通う常連に愛され続ける。
東京都港区麻布十番2-2-7
営業時間:11時30分〜14時30分(L.O.14時)、17時〜20時30分(L.O.19時40分)
定休日:水曜、その他不定休あり

撮影・文・食
平野太呂

カルチャー誌やファッション誌などで活躍。主な著書に『POOL』(リトルモア)、『ボクと先輩』(晶文社)など。

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