写真家・平野太呂が、気になる人の行きつけにお邪魔。決まって頼むというメニューを食べて、本音をつづる。今回は神山隆二さんが教えてくれた、一家で営む吉祥寺のお店。
今月のあの人
美とんが入るビルには、
ほかにも好きな店があり、
家族との週末ランチでよく訪れます
神山隆二さん/アーティスト
ストリートブランド「FAMOUZ」で裏原宿にて10年間活動した後、アーティストとして国内外での展示を行う。「昔ながらのロースカツが心を満たしてくれます」。
撮影・文・食/平野太呂
第25回吉祥寺 美とんのとんかつ定食。
家族で紡ぐ吉祥寺
住みたい町ランキングで常に上位の吉祥寺。かくいう僕も学生の時分には吉祥寺の外れに住んでいた。武蔵野という響きが気持ちいい。背の高い木々が多くてね。とんかつ「美とん」は吉祥寺の駅前にある。今では人であふれかえっている吉祥寺駅前だけど、「美とん」があるビルの地下1階は落ち着いた雰囲気だ。昭和の古きよき装飾が各所に点在していて、クラシックな心持ちで暖簾をくぐることができる。
僕の中でとんかつ屋さんには3種類ある。一つは高級店、それとチェーン店、あとは庶民の味方のとんかつ屋。高級店にはおいそれと行けないし、チェーン店では心がカサカサする。「美とん」は庶民の味方のとんかつ屋でありながらクラシックさを堪能できる。まさに僕らにちょうどいいとんかつ屋さん。衣は薄めでお肉は厚め、ご飯に豚汁、お漬物。もう、これでしょ。大将は二代目。父親から味を引き継いでいる。妹さんたちが切り盛りをし、お母さんがそっと座っていらっしゃる。カウンターには昔の吉祥寺を知る古い常連さんが先代を偲んで集まっていた。
信頼おける先輩の紹介はやっぱりいいなあ。全部がちょうどいいんだ。とんかつの揚げ具合も、豚汁の温度も、お漬物の塩加減も、家族の温かみも。
美とん
1970年の創業以来、吉祥寺の街で愛され続ける老舗のとんかつ専門店。自家製のパン粉で揚げられたロースカツが味わえる「とんかつ定食」は¥2,100。
東京都武蔵野市吉祥寺本町 1-9-10 シュープラザビル 地下1階
TEL:0422(22)8586
営業時間:12時~15時、17時30分~20時(L.O.)
定休日:月曜 ※不定休あり
Taro Hirano
カルチャー誌やファッション誌などで活躍。主な著書に『POOL』(リトルモア)、『ボクと先輩』(晶文社)など。