2020.06.20

【男のグルメ】焼売を愛する二人の男、岩井ジョニ男&小宮山雄飛の「焼売履歴書」

中華料理の中でもいぶし銀的存在のシュウマイだが、実は隠れファンだという大人が結構いることが判明。そんな愛好家の皆さんに、有益な情報をお届けする!

【男のグルメ】焼売を愛する二人の男、岩井の画像_1

岩井ジョニ男さん(芸人/40〜50歳)

【男のグルメ】焼売を愛する二人の男、岩井の画像_2

「選ばないで」と祈った崎陽軒のシウマイ弁当

 タモリさんの付き人を25歳から4年半務めた。付き人は想像以上に大変な仕事。朝早くに起きて、車で自宅に迎えに行き、常に一緒に行動し、自宅に師匠を送り届けて、ようやく一日が終わる。仕事終わりに「おまえも一杯飲むか」とタモリさんが自宅で手料理を振る舞ってくれることもあった。いい思い出だ。
 芸人を志したのは厳格な父親に対する反動だった。幼い頃に家族でテレビを見ていたら、父親がブラウン管の中の芸人を見て、「これでメシが食えるんだからいいよな」と言った。そのとき「こんな素晴らしい仕事があるのか」と気がついた。
 念願のお笑いの道に足を踏み入れたものの、仕事はハードでろくに休みもなかった。
 崎陽軒のシウマイ弁当との出会いはこの頃だった。ロケ先で初めて食べた弁当に衝撃を受けた。そのうまさに一気にトリコになった。忙しい毎日の心の支えになったのはシウマイ弁当だった。
 だが、人気の弁当にはなかなかありつけなかった。今でも忘れられない光景がある。その日の仕事場はニッポン放送。師匠やマネージャーに選んでもらうため、局が用意した弁当を楽屋に持参したときのことだ。選ばれなかった弁当が自分の昼食になるのだが、その日は珍しくシウマイ弁当が最後まで残った。黄色の包み紙がいつもより輝いて見えた。
 それからはシウマイ弁当の行方ばかりが気になるようになった。ニッポン放送の仕事の日は、師の前で「選ばないでください」と祈るようになった。もちろん心の中で。
 お腹が空いたときに食べるシウマイ弁当はうまかった。弁当の食べ方はあの頃から変わらない。宝石のように輝く焼売一つ一つに、カラシと醬油を丁寧にたらす。こぼさないよう緊張する一瞬だ。
 タモリさんはことあるごとにこう語ってくれた。
「人間は欲を出すとろくなことがないんだ」
 師の教えは今も自分の人生の指針となっている。
「贅沢なんてしなくていい。時々おいしいものが食べられるくらいでいいんです」
 シウマイ弁当は今でも最高の御馳走だ。


小宮山雄飛(ミュージシャン)

【男のグルメ】焼売を愛する二人の男、岩井の画像_3

母が買ってきた唯一の惣菜

母親はなんでも手作りする人でしたが、焼売だけは出来合いのものを買ってきました。当時は舶来ものに対する憧れがあったから、ハンバーガーやピザと同じ感覚だったんでしょう。今だったらタピオカくらいのイメージかもしれません。

【男のグルメ】焼売を愛する二人の男、岩井の画像_4
私がこれまで衝撃を受けた焼売は2つ。「山珍居」はオーソドックスでジューシーな焼売。この店はメニューに餃子がないあたりにも、焼売への強いこだわりを感じます。6個1100円

山珍居
東京都新宿区西新宿4の4の16
TEL:03-3376-0541
営業時間:12時〜14時、土・日曜17時〜21時30分(L.O.)
定休日:月曜

【男のグルメ】焼売を愛する二人の男、岩井の画像_5
「新橋亭」の焼売はポーションが大きく、メイン感があってとにかく肉々しい。ごちそうだから1個で大満足。1個250円

新橋亭 新館
東京都港区新橋2の4の2
TEL:03-3580-2211
営業時間:11時〜21時30分(L.O.)、土・日曜・祝日11時〜21時(L.O.)
定休日:無休



焼売は親戚のおじさんのようなもの

焼売って餃子より下の立場に甘んじているように見えますが、一方で高級店の円卓で食べるイメージもある。餃子は庶民のものになってしまったけど、焼売は点心のポジションを堅持しているのがすごい。材料がシンプルなだけに、限界があるのもいい。紳士服みたいなもので、流行に左右されづらいし、デザインや素材でアピールするしかないというか。僕にとっての焼売は、たとえるなら「親戚のおじさん」。頻繁に会うわけではないけど時々会うと刺激的で楽しい。そういう存在ですね。


Photos:Hiroyuki Takenouchi
Composition&Text:kinmasataka

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