スパイスの魅力にとりつかれ、料理の要として使いこなすプロたちが、究極のスパイスメニューとそこにたどり着くまでのドラマを語り尽くす。
coQereの麻婆豆腐
本場のスパイスを使うから、この辛さを作り出せる!
2012年のオープン以来、熱烈なファンを獲得している四川料理の人気店。本場のスパイスをふんだんに使用した激辛麻婆豆腐¥1,600は、辛さとうまさで強いインパクトを与える。
店主の柘植さんは四川料理を中心に修業を重ね、8年前西小山に「コクエレ」をオープン。自分らしさをどう出すべきか悩んだ若き料理人がたどり着いたのが、本場のスパイスを徹底的に研究して、香りを極めることだった。
青山椒と赤山椒をはじめとする、麻婆豆腐のうまさのキーとなるスパイスの数々。
辛さの秘密は山椒。麻婆豆腐は青山椒と赤山椒を使うが、中国の漢源という地の山椒は香りが格別ということで、年に一度はわざわざ買いつけに中国の成都(四川省の中心地)まで足を運ぶ。
調理が始まると、刺激的な香りが鼻腔をくすぐる。まずは油に唐辛子の香りを移して色を出し、次に入れるのは、3年もののピーシェン豆板醬と四川豆板醬をブレンドして寝かせたもの。そして、青と赤の山椒を1対1で入れることで、複雑に折り重なった辛さとうまさを演出する。
「現地の市場で、きちんと自分の目でスパイスを確かめて仕入れないと、この味は表現できない。ただ辛いだけではない、本場の四川料理をぜひ味わってください!」
CURRY&SPICE BAR カリービトの 2種類のカレー
サラリーマン時代、営業の合間に ひたすらカレーを食べ歩いたのが原点
ある日、仕事で参加したスパイスカレーのイベントでそのおいしさに衝撃を受けた安川さん。それまで家庭のルウカレーと、会社近くにあるインドネパール系のカレーの二つしか知らなかった。ところが、国ごとに味が異なりスパイスさえあれば数えきれないほどのカレーを作れる、その奥深さに気がついたという。それからは仕事の合間に時間を見つけては毎日のようにカレーを食べ歩いた。そしてついに4年後、店を開く決断をした。
EN VEDETTEのCAKE E’PICE
スイーツにだってスパイスを入れてもいい! 自由な発想から生まれた焼き菓子
フランス修業で出会った現地のシェフたちのスパイスとの距離感にびっくりしたという森さん。日本ではありえない、スイーツにスパイスを当たり前のように入れている姿を目の当たりにして、なんでもスイーツにしてしまう自由さと貪欲さにしびれたという。
「例えばクッキーの基本は粉とバターですが、スパイスを使うことで表現の幅が広がる。生クリームもトンカ豆というスパイスを合わせることで、桜餅のような風味がプラスされオンリーワンの味になります。だが、スパイスはあくまで主材料を引き立てる黒子だと考えています」
フランスから輸入したスパイスを常に揃えている。
フランス語でスパイスケーキを意味する「ケークエピス」¥237(税込み)はその名のとおり7種のスパイス入りの大人の焼き菓子。甘さの中にキリッとした個性が際立ちお酒と合わせれば口の中で余韻を楽しめる。
伊良コーラのクラフトコーラ
和と洋のスパイスが出会って生まれた、世界で唯一のクラフトコーラ
社会人1年目にネットで見つけたコーラのレシピが始まりだった。世界中で愛されている飲み物に興味をもち、自分でも作ってみようとホールスパイスを煮詰めエッセンスを抽出したりして試作したが大失敗。それで持ち前の負けん気に火がついた。
試行錯誤する中、転機は和漢方職人だった祖父の遺品整理で思い出話を聞いているときだった。スパイスへの特殊な火入れ方法を知り、実際に試したところうまくいったのだ。
親友の「これだったらお金を出したい」のひと言がきっかけで仕事をやめ、コーラ作りに専念し始めた。
Text:kinmasataka