「うなぎと古典芸能は似ているところがある」と語る講談師の神田松之丞さんのオススメ! 極上のうなぎが堪能できる名店を4つ紹介します。
Matsunojo Kanda
1983年東京都生まれ。2007年、三代目神田松鯉に入門。’12年6月に二ツ目に昇進。幅広い層から人気を集め、テレビやラジオでも活躍し、独演会のチケットは即日完売するなど、今最も勢いのある講談師。’20年2月に真打に昇進する。
伊豆栄さんは立川談志師匠が行きつけにしていましたけど、伝統芸能の仕事をしていると、わりとうなぎを食べる機会があるんです。自然とおいしいうなぎ屋さんの情報も入ってくるので、たまの休みの日にちょっと贅沢をしようかなというときは、うなぎを食べに行くことが多いです。
うなぎの魅力は、古典芸能と同じで、ベーシックな部分で勝負しているところでしょうか。それこそうな重でいえば、どれも基本的にはご飯があって、うなぎがのって、タレがかかっているだけ。それなのに、お店によって味が全然違う。これは講談や落語も一緒で、一言一句変えずにまったく同じ話をしていても、やる人によって説得力や面白さが全然違ってくる。同じ題材でこうも違うのかっていうところがうなぎの奥深さだなって思います。
1.伊豆栄 梅川亭のうな重
立川談志も愛した老舗の味
八代将軍・吉宗公の時代に、現在の本店が立つ上野池之端で創業した老舗。三河一色産のうなぎ、300年受け継がれる焼きの技術、変わらぬ配合で作り続ける秘伝のタレが織りなす伝統の味を愛するファンは多い。写真は「梅」¥5,400。「うなぎはふっくらと香ばしく、辛口のタレもいい。上野公園内の高台にあるので、景色も素晴らしい。ゆっくりと過ごしたいときにおすすめです」。
2.神楽坂 富貴貫のうな重
モダンな店内で食べるこだわりのうなぎ
1923年創業のうなぎ料理専門店「赤坂 ふきぬき」の姉妹店。うなぎは一年を通して最良のものを仕入れ、お米は契約農家から届くコシヒカリを使い、注文が入ってから土鍋で炊き上げる。写真は「松」¥5,800。「神楽坂の路地裏にある一軒家で、のれんをくぐると風情ある石畳が続き、店内にはバーカウンターもあってしゃれています。夜はうなぎ尽くしのコース料理のみ。ひつまぶしも名物です」。
3.わたべのうな重
伝統を守りながら、進化を続けるうなぎ店
うなぎは愛知県一色町の漁業組合より直接仕入れ、さいてから白焼きにし、よく蒸した後に焼き上げる関東風スタイル。お米は千葉県匝瑳市産のコシヒカリ、タレは創業以来70年余つぎ足したものを使っている。「うなぎの蒲焼きとフランス産の自家製フォアグラのテリーヌ」など一品料理も人気。写真は「特上」¥3,900。「うなぎは肉厚で脂がのり、タレはさっぱりしてしつこくなく、上品な味です」。
4.蒲原 よし川のうな重
桜えびのかき揚げも忘れずに
東海道15番目の宿場町、静岡県清水区蒲原にあるうなぎ店。看板の「うな重」¥3,000は、炭火でうなぎをじっくりと焼き上げることで、身はやわらかく、皮目はパリッとした仕上がりに。目の前の駿河湾でとれた桜えびや生しらすなどを使った料理も評判。「こちらで独演会を開いてもらったことがあって、そのときにうな重と桜えびのかき揚げをいただきました。本場だけあって、実においしかった」。
Composition&Text:Masayuki Sawada