今回は洋服”じゃないほう”の「ユニクロ」潜入取材。ファーストリテイリング有明本社に招待された編集部員が、本格的な食ルポとしてはメディア初登場となる「社員食堂」でランチした。ユニクロの中の人たちは毎日なにを食べているのか!?
編集部員が展示会やプレスルームに赴き新作をチェックする恒例の潜入取材ルポ、今回は洋服”じゃないほう”の変化球として、「社員食堂」に突撃。
UOMOブランド統括の山崎(中右)を筆頭に、副編集長のY神(中左)、H條(右)、H上(左)の4名が、日本が誇るグローバルブランドである「UNIQLO(ユニクロ)」の会社機能が集約された有明本部にお邪魔した。
Y神:来るまでにおなかすいちゃった。
H條:豊洲から距離ありましたもんね。
H條:ユニクロの社員食堂は、有明オフィス完成時から何度も掲載されておりますが、突っ込んだ食ルポとしてはメディア初登場になります。
山崎:わかった。早く食べてみたい。
Y神:お待ちください!
山崎:毎度せっかちで申し訳ない。この立方体が並ぶモニュメントは見覚えがある。
H上:昔のユニクロにはポロシャツの裾にワンポイントで施されていたりしましたよね。ミニマルデザインの潮流で、いつしか前面に押し出さなくなりました。
山崎:で、社員食堂はどこかな?
H條:社食は5階と6階にあり、各々メニューも違います。前編と後編で紹介しようかと。
Y神:この記事を読んで、「ちょうど有明にいるしユニクロの社食でランチでも食べようぜ!」と思っても部外者は入れませんので誤解なきよう。ゲストパスや商談があったりしたら社員食堂にも入れますけども。
山崎:うむ。それは念押ししておくべき。
訪れた(株)ファーストリテイリングは、(株)ユニクロや(株)ジーユーなどの衣料品会社を傘下にもつ持株会社。ここ有明本部のほか、港区のミッドタウン・タワーに東京本部を、山口県山口市に本社を置く。社員食堂を置く社屋は有明本部と山口本社だ。
いつのまにか5階の社員食堂に到着していたらしいが広過ぎていつ到着したかも定かではない。ゆったりとした座席配置で、営業時間以外でもリモート仕事やミーティングで使用可能。とりあえず、バラエティに富んだ週替わりのメニュー表を前にテンションが上がる4人だった。
H條:カレーにします。
山崎:俺も決めた。Y神は?
Y神:迷うのも楽しいので少々お待ちください。先にユニクロの担当者さんにお話を伺いましょう。
UNIQLO担当者:えっ!? うどん…ですかね。
山崎:やはり。早いし腹持ちがいい。
Y神:いきなり斬り込んじゃって誠にすみません。では、ざっくりとユニクロ社員食堂の歴史と規模感のようなものをお聞きしたいです。
UNIQLO担当者:承知しました。ファーストリテイリング有明本部は2017年2月に完成し、6階の社員食堂も同時期に、こちらの5階のほうの社食は2019年9月に開業しております。6階建ての社屋のうち社員食堂が5階と6階を占めており、計280席ある5階は満席時には400人が着席可能です。有明本部はファーストリテイリングのグループブランドの社員約2,000名が勤務しており、彼らの食を2つの社員食堂が11時から14時までの営業時間内でカバーしております。
Y神:もし御社の社員さんと「有明本部で打ち合わせしようよ」ってときは利用できますか?
UNIQLO担当者:可能です。ちなみに5階の社員食堂は「FOODHALL」と名付けられています。
山崎:そりゃあ食べてみたいよね。
UNIQLO担当者:はい。社屋が巨大なので、簡単に敷地外に出てコンビニでお弁当を購入というわけにもいきません。そのぶん社員食堂を充実させており、毎週金曜日に共有される翌週のメニュー表を楽しみにしている社員や関係者も多いと聞きます。
H條:「ユニクロランチ」みたいな名物は?
UNIQLO担当者:特にオリジナルメニューのようなものは設けておりませんが、うどんは有明以前、六本木ミッドタウンにオフィスがあった頃から忙しい人たちに人気のメニューでした。フロア全体を眺めていただくと、よい意味で個性が薄く万人に広く開かれた社員食堂だと思っていただけるのではないでしょうか。
Y神:いかにも。
H條:利用は給料天引きですか?
UNIQLO担当者:いえ。都度払いです。
山崎:ありがとうございました。
Y神:おしゃれ。
山崎:ん? ユニクロ銀座店の12階にある「UNIQLO COFFEE」ではない理由はなんだろう。
H條:あの「UNIQLO COFFEE」がオープンしたタイミング、ユニクロ銀座店の大規模リニューアルは2021年9月でした。ゲイシャ珈琲が忘れられません。
Y神:言いたいだけよね、ゲイシャって。
UNIQLO広報:5階の社員食堂にはスターバックス コーヒーが入っていますが、こちらもユニクロのオリジナルメニューはありません。フェスティブシーズンのフェアメニューや福袋等もございません。
山崎:わかった。食べよう。
H上:オーシャンビューの席にしましょう!
Y神:食レポって何を話せばよいのか。とりあえずこれをみんなの席に持って行ってあげよう。
Y神の注目は日替わりのデトックスウォーター(無料)。見た目もフレッシュだ。
山崎:そういえばY神とH條くん、今回はユニクロの洋服もロゴもコラボネタもなにも登場していないけど、そもそもユニクロ取材記事として成立するのかな?
H條:いい質問です!
Y神:ゆくゆくは有名企業を巡る「大人の社食ルポ」連載になるまで頑張りたいなと。
山崎:食べるだけ?
H條:ぜんぶ食べます!
山崎:大食い選手権ではないからね。
H條:ひぃ。
山崎:想定通り食器類に企業ロゴはなく、食材をメインに据えたところでサムネイルもバズりづらいはず。とはいえ、企業なりブランドなりのスピリットが社食から匂い立つような記事は面白いかもしれない。
H條:(一瞬たりとも気が抜けない。まるで鬼舞辻無惨の鬼会議のようだ…)
Y神:(ボクはUOMOマンガ「柳さん ごはんですよ」を思い出してしまったよ…)
H上:パッと見はアットホームな絵面ですが、編集会議のように詰められてますね。
Y神:いただきます(で、よいのかな…)。
山崎:さっきの話の続きだけど。
Y神:えっ。
山崎:企業が調理師免許保有者や飲食スタッフを雇用する直営の社員食堂は極めて稀で、給食センターのように民間の社食業者と契約するケースがほとんどのはず。果たして、社員食堂の斬り口で独自性のある記事は生まれるのだろうか。うん、旨い。
お楽しみ会ではなく栄養補給の場として瞬間チャージ。山崎のダンディな食事スタイルは、ドラマ『傷だらけの天使』(1974年)で主人公を演じた萩原健一が朝食に喰らいつくオープニングシーンを彷彿とさせる。そのむき出しの野生と共振するユニクロ社食のメニューが最安値の「かけうどん」であり、多忙を極めるユニクロ社員にとっては通過儀礼のようなもの。吸い寄せられるようにオーダーしたUOMOブランド統括の山崎もまた、その系譜を継ぐのだ。
山崎:出汁は関西風かと思いきや関東風。天かすは無料でトッピングできた。
H條:えっとY神パイセン、その「六白黒ぶた丼(醤油ダレ)定食」ですけども、特別出店の期間限定メニューであるうえ、うどんの倍以上の価格でござる。ユニクロっぽい安価で質のよい社食メニューを探してみましたと言いますか普通にランチ行きました的な…。
Y神:おいしい。
H上:私は「蒸し鶏と梅のさっぱり和風パスタ」にしてみました。カロリー表も細かいですし、社食のオリジナルメニューは女子人気も考慮しているはずです。味はメニュー名のイメージそのままで、よい意味でなんの変哲もなく、スタンダードなところがユニクロっぽい。
Y神:うまいこと言った。
週替わりのメニューの中で年中変わらず存在するメニューのひとつが「有明カレー」だ。ユニクロ社食の名物という触れ込みではないが、”有明”というネーミングにオリジナルのプライドを感じさせる。
H條:永遠に飲めます。
Y神:今なんて?
H條:私、毎日「有明カレー」でよいです。
Y神:ルーをひとすくい頂戴。うむ、甘党のボクでも大丈夫。
H條:日本独自の食文化として昇華した小麦粉入りカレールウ使用の直球インドカリーで、ルウにもコクと食感があります。子供の頃に親と一緒にドライブスルーで食したあの懐かしい味。シェフの気まぐれで少々のノスタルジーをトッピングしてくれました。
山崎:トッピングは福神漬けだよね。
ユニクロ社食の目玉が、5階のみで提供されるピザだ。トッピングは週替わりでハーフ&ハーフも注文でき、希望があれば厨房で人数分にカットしてくれる。取材日は「ポテトとベーコンのピザ」だった。
総務が勇んで導入したという本格的なピザ窯で高温で一気に焼き上げる。日本の一般的なデリバリーピザのSサイズ程度の大きさで600円。これは破格だ。
Y神:生地の表面はカリカリで中身はモチモチ。H條さんならば丸ごとペロリかしら?
H條:1人で食べるならハーフ&ハーフにしますかね。パイナップルもトッピングしたい派です。
UNIQLO担当者:トッピングはありません!
H條:H上氏のも食べてよいかしら?
Y神:デザート取りに行ったよ。
H上:これもよい意味で、イメージしたまんまの「みずまんじゅう&きなこわらび餅」の味でした。畳は落ち着くし食べたら寝ちゃいそうです。
山崎:いいじゃん、そこ。
H條:ジル・サンダーさんも好きそう!
ランチメニューのほか甘味も充実。きな粉と抹茶パウダーは好みでプラスできる。甘すぎず量も控えめで、口直しにぴったりだ。
H條:なぜに抹茶推し。そういえば、ファーストリテイリング会長兼社長・ユニクロ会長兼社長・ジーユー会長を務める柳井正(やないただし)さんの出身地、山口県宇部市はお茶の産地でした。
H上:まさかこの抹茶パウダーも?
UNIQLO担当者:そこまで凝っていません!
山崎:(背中に視線を感じる…)
酸いも甘いも噛み分ける山崎、リーバイス646のベルボトムで甘味コーナーへと歩みを進め、うどんと食べ合わせが良いのか悪いのか不明だが「ストロベリーショートケーキ」をピックアップした。
山崎:そろそろ6階の社員食堂に移動しようか。Y神、メニューはもうリサーチ済み?
Y神:1つだけ、取材漏れを撮ってから…。
山崎:いちおうH條くんから、「スタバはどこでも味、変わりませんから!」て伝言があったよ。
Y神:はいわかりました!
山崎:じゃ、先に行ってる。
5階の名物と言ってよいユニクロ専用スタバ。有明1丁目にある有明本社近辺でスタバを探すとなると、有明3丁目の「東京ビッグサイト」レストラン街まで出向かわなくてはならない。スタバを日々のルーティンに取り入れている族には嬉しい限りだ。
Y神:手持ちスタバ族だもの、「みずまんじゅう&きなこわらび餅」にはホットカフェラテ。社食っぽくないかもしれないけどこれはこれでよいと思うの。
Y神:はい。スタッフのみんなで美味しくいただきましたよっと。おなかいっぱいだ。
12時を過ぎると社員や取引関係者がひっきりなしに訪れるユニクロの社食。仕事のほかプライベートの会話まで飛び交う憩いの場として機能している。ここで心身ともに鋭気を養い、午後の仕事に向かうのだ。
Y神:この光景をH條さんが見たら、「社内恋愛もそれ以外も頻繁にありそうですね!」って絶対に言ってるはず。あれ? H條さんはいずこ?
H條:これはかなりの強敵。6階には定食2つ、丼もの1つ、麺類2つ、小鉢に加えサイドメニューまであるとは。果たして制覇できるのだろうか…。
5階にはスタバ、6階には何がある? 洋服が出てこないユニクロ社食ルポ、後編もお楽しみに!
Text: Takafumi Hojoh