写真家・平野太呂が、気になる人の行きつけにお邪魔。決まって頼むというメニューを食べて、本音をつづるこの連載。今回は永積 崇さんが惚れ込んだロースとんかつ定食。
今月のあの人
こんなにうまいとんかつを出す定食屋を
ほかに知らない!
塩とソースで交互に楽しむのが好き
永積 崇さん/ハナレグミ
最新アルバム『発光帯』が発売中。「味つけが優しくて絶妙。食べ終わったら『もういっちょ仕事すっか!』という気持ちになる。そうやってできた曲は数知れず!」。
撮影・文・食/平野太呂
第2回三鷹 定食あさひのロースとんかつ定食に生卵をつけて。
この街の住人に嫉妬してしまいそうだよ
住んでいる街にいい定食屋があるのかないのか、それが問題だ。若いときは特にそう。もちろん40を過ぎた今だって切実だ。何を食べているかでその人の身体が出来上がるからだ。チェーン店の牛丼やラーメンばっかり食べていたら、背筋が丸まっちゃうよ。ご飯を前にすっと背筋を伸ばして静かに「いただきます」と言いたいんだ。楽しみにしていた鶏レバ定食が売り切れて残念がる若者に、「少ししかないけど」と大将が鶏レバをさっと炒めて持たせたのを僕は見逃さないよ。若者の「いただきます!」が気持ちいいんだ。
この店が開店した7年前、この街から引っ越したという永積崇くん。後ろ髪を引かれまくったのか、テレビとDVDプレーヤーを置いていったという(プレーヤーはまだ健在)。崇くんオススメのとんかつ定食に生卵を注文する。薄めの衣に包まれた豚肉は、北海道は厚真町の放牧豚。旨味がさっぱりとしている。そして気のきいた小鉢や根菜の味噌汁が定食の脇をしっかりと固める。何だろう、この「ちょうどよさ」は。近所に住む人たちがうらやましい。食べ終わると「ごちそうさま」よりも不思議と「ありがとう」に近い感情が湧き起こる。きっとそれは僕らを支えてくれる歌声を、この定食もそっと後押ししてくれていると感じたからだ。こうして僕らはつながっているんだ。
定食あさひ
北海道放牧豚(厚真町)のロースとんかつ定食¥1,150に生卵¥60を追加してご飯と一緒に食べるのが永積さん流。定期的にしょうが焼き定食との入れ替わりがあるのでご注意を。
東京都三鷹市下連雀2-23-15
TEL:0422-24-8071
営業時間:12時~14時30分(L.O.14時)、17時30分~21時(L.O.20時30分)
※現在はお昼のみの営業
定休日:火・水曜
Taro Hirano
カルチャー誌やファッション誌などで活躍。主な著書に『POOL』(リトルモア)、『ボクと先輩』(晶文社)など。
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