黒がない。デニムもない。
グローバルブランドの「UNIQLO(ユニクロ)」と、英国デザイナーのジョナサン・アンダーソンが手掛ける「JW ANDERSON(ジェイダブリュー アンダーソン)」がタッグを組んだコラボ特別コレクション「UNIQLO and JW ANDERSON(ユニクロ アンド ジェイダブリュー アンダーソン)」が2024年春夏シーズンも登場。4月19日(金)から限定店舗とオンラインストアで発売される。
その発売に先んじて、モデルの松本雄司がプレスルームで試着ルポ。今春夏の「In The Artist's Studio」のテーマに象徴される、冷静と情熱の狭間でエネルギッシュに揺れ動くアーティストたちの‟LifeWear”に迫ってみよう。
ちなみに松本が座っているデザインチェアは、ミッドセンチュリー(1940~60年代)期を代表する英国の家具デザイナーとして、ジョナサン・アンダーソンが敬愛するロビン・デイ(Robin Day / 1915~2000年)作。1963年に手掛けた「ポロ チェア」は彼の代表作であり、現代に到るまで量産されているベストセラーだ。軽量かつ耐久性に富んだポリプロピレン製でスタッキングも可能、アイコニックな丸い穴が屋外使用時に雨水を逃がすなど、デザインと機能を両立している。
松本:しかも、デザインチェアなのに開発当時から日本円で1脚・2万円程度のリーズナブルプライスだったと美術書に書かれています。デザインと機能の両立がユニクロと似ていると思いました。
そして、ロビン・デイに加えてもう1人、今春夏のクリエイションに影響を与えたミッドセンチュリー期の巨匠は、英国の織物デザイナーであるピーター・コリンウッド(Peter Collingwood / 1922~2008)。彼が得意とした大胆な幾何学柄は主にソックスの柄に反映されている。
壁面に目を向けると、「ユニクロ アンド ジェイダブリュー アンダーソン」の最新コレクションを着用したロンドン在住アーティストのスナップが飾られていた。表層のおしゃれを超越した彼らの日常に馴染む、堅苦しさや格式から解放された機能的でモダンなワードローブ、これが今春夏の根幹なのだ。
では、具体的にサンプルを吟味していこう。
英国ミッドセンチュリー期のグッドデザインから着想を得て、デザイナーのジョナサン・アンダーソンが練り出したアイテムは全17品目。冒頭に記したように全8アイテムのメンズには黒がなく、人気が集中しがちなデニムもない。一見してわかる通り、キーカラーは「ネイビー」だ。
コレクションの最大サイズはXXL(実店舗はLまでの取り扱い)で、試着用のサンプルはLサイズ。就寝前の筋トレを欠かさない松本雄司は身長181cmの細身体型。購入の参考にして欲しい。
リネンブレンドイージーパンツ ¥3,990
松本:いつもの試着ルポではわかりやすくデニムを軸にしてスタートすることが多かったはず。今春夏は新鮮なリネンパンツからですね。
手に取ったアイテムは、デニムがない今春夏の注目株である「リネンブレンドイージーパンツ」。綿67%・麻33%の混紡で程よいハリもある。リネン初心者にも安心のネイビーパンツだ。
イージーパンツ仕立てのワイドストレート。今春夏のロングパンツはこれ1型なので、シルエットを覚えておこう。「68 BLUE」のネイビーが手堅く人気確実だが、経年変化の風合いを最大限に味わえる「31 BEIGE」も大人買いしておきたい。コラボ特別コレクションでリネンパンツは珍しいのだ。
松本:色違いのベージュはデイヴィッド・ホックニーがはいてそうです。
ディテールをチェックすると、ウエストゴムに加えてベルトレスで着用できるスピンドルコードが内側に施されており、きっちりめに着こなすためのベルトループもある。ヒップポケットも大きめ。
松本:最初は単なるネイビーパンツに見えました。あと、このシャツの素材も変わっていますね。
これぞ試着ルポの醍醐味。カタログやオンラインストアではわからないリネンの清涼感を実感した松本、半袖シャツの素材感も気になるようだ。
シアサッカーシャツ(半袖) ¥2,990
夏が待ち遠しくなる3色展開の「シアサッカーシャツ(半袖)」。実は、トーナルチェックのパターンが身頃・袖・ポケットなどパーツ毎に異なるパッチワーク仕立てになっていた。裾には「JW ANDERSON」のシンボルマークが付く。
凹凸のあるシアサッカー素材にフォーカス。綿62%・ポリエステル38%の混紡素材はとにかく軽い。肌離れがよく、洗濯後のアイロン掛けも不要。トラッドな見た目も大人男子向けだ。
松本:遠目からは普通のネイビー。でも、近寄ると芸が細かいことがわかる。奥ゆかしい。
同じく素材感に特徴のあるリネンパンツとの相性も抜群。上下ともにネイビーをチョイスして、絶対に失敗しないコーディネートが完成した。
ウィメンズと共通する靴下とバッグの2アイテムを除き、今春夏のメンズカテゴリーは全8アイテム。カラバリも各2~4色の展開で、例年よりもコンパクトな商品ラインナップとなっている。
松本:トップスは5つ。全型・全色、着ます!
エクストラファインコットンブロードシャツ(長袖) ¥3,990
2アイテム目のトップスは「エクストラファインコットンブロードシャツ(長袖)」。
こちらはシアサッカーのような凹凸はなく、繊維長が35mm以上の超長綿を100%使用したフラットなエクストラファインコットンブロードを使用。異なる2つのマルチストライプを接ぎ合わせたデザインも今春夏らしい。「12 PINK」と「64 BLUE」の単純二択だが迷ってしまう。
なお、フロントボタン箇所に関して。
英国を拠点とする「ジェイダブリュー アンダーソン」らしく、「ユニクロ」最高峰のドレスシャツであっても、フロントボタン箇所は上前に帯状の布を追加した「表前立て」になっている。ノイズレスな仕立てを好むイタリア製シャツに多い、生地を折り返しただけの「裏前立て」と異なり、洗濯後に広げても身頃裏は開かずにフラットなままだ。
松本:僕はアイロン掛けが日課なのでどちらでもいい派です。でも、アーティストは洗いざらしで乾燥機に放り込んですぐに着ているイメージです。
ニットポロシャツ(半袖) ¥2,990
トップス3アイテム目。これまた人気を博しそうな「ニットポロシャツ(半袖)」は、綿52%・レーヨン36%・ナイロン12%の混紡素材。「68 BLUE」「56 OLIVE」「30 NATURAL」の3色ベースで、襟・袖・裾に施されたラインの配色が絶妙だ。
フロントボタンを排除したスキッパータイプのミニマルデザインで、男のデコルテがセクシーに映える。線ひとつ、仕様ひとつの差ではあるが、これが既存のレギュラーラインとは異なるコラボ特別コレクションならではのステイタスなのだ。
ドライカノコTシャツ(半袖) ¥1,990
とにかく今春夏は素材に凝る。
「30 NATURAL」と「69 NAVY」の2色展開の「ドライカノコTシャツ(半袖)」は本来ならばカットソーで落ち着くところを、定評のあるドライ機能付き鹿の子素材でリュクスに仕上げた。ポリエステル66%・綿34%でタフに扱える。
松本:そういえばアウターが見当たらない…。
コットンジャケット ¥6,990
松本:ありました!
綿100%の「コットンジャケット」を発見。アーティストのワイルドな創作活動に耐えるタフな作業着であり、そのままパトロンが集まるパーティウェアとしても着回せる。今春夏のアウターはこのジャケット1型のみ。裏地がなく、ラックに引っ掛けるフックは今春夏に共通するデザインだ。
松本:カラーは「68 BLUE」ともう1色、オフホワイトもありました。インナーをアーティストっぽい雰囲気に着替えて試着してみます。
グラフィックTシャツ(半袖) ¥1,990
公式ヴィジュアルでも目を引くキャッチーなアイテム。油彩で殴り描きしたかのような太ボーダー柄が印象的なコットン100%の「グラフィックTシャツ(半袖)」を3色試着してみた。押しつけがましくないアートTシャツの佇まいに、ジョナサンのデザインアプローチが垣間見える。
松本:これで、今春夏の5つのトップスは全型・全色試着済み。先ほどのネイビージャケットに合わせるならばどれだろう?
魅惑のバックシャン。
綿と麻をブレンドしたリネンパンツとコットン100%のジャケット、上下で素材は異なるが、ガーメントウォッシュの色調はザラつきのあるリネンの風合いと馴染みがよい。
Lサイズでも肩が落ち、気持ちオーバーサイズのボックスシルエット。ラペルを立て、フラップポケットに無造作に手を突っ込んでスタジオ界隈をぶらつくアーティストのイメージで着こなした。左胸のポケットを排除し、ボタンまでネイビーで統一するなど、すっきりとした全体観も好印象だ。
「英国の歴史の中でも特に1940〜60年代に注目し、芸術性と衣服の力強さを表現しました。古き良き作品を現代風に解釈したコレクションを日々の生活の中で楽しんでもらえたら嬉しいです」と、ジョナサンは公式コメントを残している。
ラフに着て洗ってを繰り返してボロボロになっても、かえって味が出そう。2024年春夏の「ユニクロ アンド ジェイダブリュー アンダーソン」で最も大人男子の支持を集めることが確実なトータルコーディネートで前編を締めくくろう。
松本:手持ちのリジッドデニムにも合わせてみたい。ブーツカットジーンズも面白そうです。
そういえば、先の3月8日に発売された「Uniqlo U(ユニクロ ユー)」でも黒が少なくネイビーがキーカラーだった。ネイビーを制する者が、ワンランク上の「大人のユニクロ」を制するのだ。
オマケの1枚。
松本:これ、ロングパンツで作らなかったんですね。さすがジョナサン・アンダーソンです。
ジャケットと同素材のパンツを発見した松本、それは夏向けのカジュアルショーツだった。続く後編では、アーティスト然としたショートパンツとのセットアップを中心にお届けする。乞うご期待!