デニムにうるさい4人が、最近注目のブランドの「正統派」モデルをはき比べ。それぞれの個性を彼らはどう評価したのか?
前編はこちら
デニムにうるさい4人がはき比べた
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圧倒的にリーバイス派。敬意を表してNEATでは5ポケデニムは作らない主義。
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リーバイス501ZXXや505Eなど十数本を所有する。前開きはジップフライ派。
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カジュアル、ドレスともに知見が深い。デニムはジャストレングスでクリーンに。
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ヴィンテージショップを営んだ経験があり、デニムも新旧問わず確かな知識あり。
Super Stitch MFG.
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パリのデニムリペアショップが始めたオリジナル。生地もボタンもイチから製作し、縫製の運針まで厳密に決めるこだわりよう。
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西野:このブランドを手がけるデニム好きのフランス人オーナーのアーサー・ルクレールさんと一緒にパリでイベントをしたことがありますよ。4年ほど前にデニムブランドをやりたいって言っていたのですが、こうして形になったんですね。
安武:ヴィンテージを完全再現した感じではないんですね。ピンク色の耳やオリジナルの刻印がされたボタンなど、さりげないディテールが秀逸。またバックポケットにアーキュエットステッチがなく、表立った特徴がないのも好感がもてます。
坂田:パリ発の日本製デニムというのがいい。ポケットのスレーキが厚手のコットンなのはうれしい。薄いスレーキが多くて、丈夫なのって意外とないんですよね。
平沢:部位によって縫製糸の番手や色を変えるなど、細部まで行き届いているのもうなりました。よく研究されています。
YOUTH OF THE WATER
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コム デ ギャルソンでジュンヤ ワタナベ マンのパタンナーを務めたデザイナーが手がけるニューカマー。スーピマ綿をたて・よこ糸に使用したセルビッジデニムはふっくらしており、糸の毛羽立ちを落とす加工を施すことで光沢のあるきれいな雰囲気に。
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平沢:カーペンタータイプの一本ですね。よく見ると、白と紺のステッチの分量が計算されていてまとまりが生まれています。また、アウトシームが後ろ寄りにあり、重心が前にいって立体感があります。既存のジーンズの作り方を踏襲せず、美しいパンツを作るようにパターンメイクしているのでしょうね。
西野:デニムでありながら高級なスラックスのような仕立て。素材だけデニムって感じでね。つややかな生地は品があっていい。今回の8本の中ではナンバーワンに決めました!
坂田:ステッチまでもきれいな光沢がありますね。ジーンズと意識せずにはける気がします。生地はやや軽めのオンスですが、はきジワがどう入っていくのかが楽しみです。
安武:裾をロールアップして、サスペンダーで吊ってはきたいです。クリースを入れてデニスラっぽくはいてもいいかも。
ANOTHER ASPECT
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アナザー アスペクトはデンマークのカジュアルブランド。環境に配慮したオーガニックコットンのイタリアンセルビッジデニムを使い、ウォッシュド加工を加えたオーソドックスな仕立て。スクエアのパックポケットはブランドのシグネチャー。
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西野:四角いバックポケットとか、ストライプの耳とか、原型にとらわれない姿勢に好感がもてます。何かを模倣するよりオリジナリティを追求する、そのチャレンジ精神に拍手!
安武:状態のいい古着のような色落ちと今っぽいゆるさが絶妙。縦落ちを感じる加工具合はグッドバランス。日本製だとヴィンテージに忠実に作るところが多いですが、ヨーロッパ製のアナザー アスペクトはいい意味でゆるさがあります。
坂田:ヴィンテージとは異なる文脈ですね。腰まわりはコンパクトで程よいストレート。フレアが苦手で、ワイドもちょっと…っていう人にちょうどいいシルエットなんじゃないかな。
平沢:一見すると普遍的なデニムに見えるのですが、ボタンの間隔がかなり短く、ステッチもこだわっていて細かいところで常識やぶりな一本。引き算よりかわいさ優先の足し算が潔い。
ents.
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普遍的な洋服を上質な素材で表現するエンツ。こちらはいわゆる“大戦モデル”をもとに高級素材のシルクとアメリカンコットンを混紡した糸を旧式の力織機で織り上げた極上品。
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坂田:正直に言うと、そこまでシルキーさを感じるわけではないのですが、しっかり重厚感があるのにはくと軽やか。細かいところですが、股部分のカンヌキの位置が浅くレディスっぽく見えるので、もう少し深めについているとはきやすいかな。
平沢:シルク混の生地と古い意匠の合わせ技に目を見張る。シルク混に話題がいきがちですが、腰のVステッチやボタンホールの糸をボディと同色で合わせたり、配色でステッチを使ったり、シルエットも大戦モデルに準じているのでしょうね。この価格は生地だけのせいじゃない。完成度高い!
安武:それでいてこれ見よがしじゃないですよね。言われないとわからないくらい自然に馴染んでいます。パッチもないですし。唯一、メッキ加工のボタンが目立つアクセント。
西野:キラリとしていてちょっとプレミアム感がありますね。