春に欠かせない9アイテムにつき、目利きの9人がそれぞれマイベストを選出。ベーシックといえど、9人9様の細やかなこだわり満載で面白い。グレースラックスは気分はストレートに移行中。プリーツでささやかに個性を演出する。
COMME DES GARÇONS HOMME
「シルエットが最高で、10年以上マイ定番としてきました。わたりが広く、太すぎず細すぎず、ワンタックだから丸くなりすぎずシャープ。クロップド丈のテーパードなので革靴・スニーカーを問わずに着回せる。この春は初めてのリネン混に挑戦します」
「春夏にこだわりたいのはサイジング。何をジャストフィットにして、何をオーバーサイズで着るのか、フレッシュなバランスを常に探しながら楽しみたい」
BROOKS BROTHERS × NEAT
「柔和さとクリーンさを併せ持つニートのテーパードパターンがお気に入りです。別注によってCANONICO社製 サキソニー生地の滑らかなウールを使用しているのも美しいポイント」
「NY出身の自分なりに考える国際的なクラシックが好き。どの国で過ごしても馴染みよく映える服がいい。今季は日本の素晴らしい専業ブランドに多数出会いました」
CARUSO×NEAT
「カジュアルにはける2インプリーツのニートのパターンを、ナポリ出身の老舗ブランドであるカルーゾ製で仕立てた極上の一本。軽くて光沢のある生地にはひと目で上質さが見て取れ、縫製の美しさも十二分。カジュアルとドレスの中間に位置するスラックスです」
「今季らしい新鮮なものと、不朽の名品を組み合わせて大人らしいファッションを楽しみたい。ジャケットやTシャツは今、あらためて定番品に回帰しています」
A MACHINE
「拾った流木のフォルムをそのままパターンに落とし込んだというユニークな一本。サイドの波打ったラインや左右で裾の長さの違うデザインが斬新ですが、はいたときに違和感を感じさせないバランスも絶妙。エー マシンの作る予測不能なプロダクトから目が離せません」
青山にある玄人好みなショップで、新鋭ブランドを多数ピックアップ。「エレガントであることからハズれず、エッジのきいたデザインを軽快に着たい」
BERNARD ZINS × L'ECHOPPE
「Lポケットの“PILOT”はデイリーにはきやすく、初代のボスであるベルナール・ザンス氏がいつもポケットに手を入れて歩いていたという噂もある。先代が愛した一本はザンス好きとして見逃せません。ノープリーツのシャープな印象も好みです」
「そもそも僕のワードローブは白シャツ・デニム・ジャケット…のような王道の組み合わせ。その一点ずつを、いかにブラッシュアップするかが勝負です」
YAECA CONTEMPO
「ドレスパンツ感を出さずに、それでもスラックスを合わせたいときの要望に応えてくれる一本。ノータックでミニマルなので主張が強くなく、化繊系の素材はコットンのトップスにも馴染む程よい光沢。『ただ、きれいなパンツをはいている』というニュートラルな印象がいい」
「’80sのプレッピーを、今っぽく削ぎ落としたスタイルが気になる。ヨーロッパのお坊ちゃんのようなスクール風のアイテムや上品な配色に注目しています」
UNLIKELY
「ジャケットとまったく同じ素材で、スーツ感覚で着られる一方、裏地のないチノパンの縫製方法で作っているため裾をロールアップしてカジュアルにもはける万能なスラックス。ポケットの裏地はメッシュなので、肌当たりもさらっとしていて日常使いしやすいです」
「マイブームはアメリカントラディショナル。スタイリングのセオリーやキーアイテムを大事にしつつ、ディテールには現代の感覚を加えてアップデートしたい」
STEIN
「今季のツータックスラックスは張りのある高密度ウールギャバジンを使った、立体的なワイドシルエットが特徴。これまでと違うのはヒップまわりがタイトで、すとんと落ちるので上品さもキープできます。シュタインらしいミニマルさと、フォルムによる静かな存在感が気に入っています」
人気ブランドsteinのデザインを手がけ、セレクトショップcarolを主宰。「現代的なソリッドさと、ブランド独自のほのかなニュアンスを併せ持った服が好き」
TH PRODUCTS
「古めかしい印象になりがちなグレースラックスですが、デザイナーの堀内太郎氏が手がけるティーエイチ プロダクツはスマートに仕上げています。黒ではなくグレーだからこそ生まれる立体的でワイドなシルエットが新鮮で、’90年代と今の空気がミックスされた中性的なプロダクト」
ファッションを中心にデザインのコンサルティング、プロダクションを行う会社の代表。「作り手の個性を感じる、縁起のいい服が好きです」