春に欠かせない9アイテムにつき、目利きの9人がそれぞれマイベストを選出。ベーシックといえど、9人9様の細やかなこだわり満載で面白い。テーラードジャケットはドレスでもカジュアルでも、ややビッグな気分が継続中。
CELINE
「セリーヌらしいエレガントな佇まいにひと目惚れ。クラシックなハウンドトゥースの美しさに絶妙なさじ加減のゆるさが加わってモダンでもある。構築的なショルダーにやや長めの着丈、繊細なAライン…とすべてのバランスがツボでした」
「春夏にこだわりたいのはサイジング。何をジャストフィットにして、何をオーバーサイズで着るのか、フレッシュなバランスを常に探しながら楽しみたい」
PAUL STUART
「深いVゾーンに重厚感が漂う一着。そこに光沢のあるリネン生地で清涼感を与え、メタルボタンで華やかに仕上げたのが素敵。ちなみにポール・スチュアートの旗艦店では生地からカスタムオーダーできるアイテムが豊富に揃います」
「NY出身の自分なりに考える国際的なクラシックが好き。どの国で過ごしても馴染みよく映える服がいい。今季は日本の素晴らしい専業ブランドに多数出会いました」
BROOKS BROTHERS
「いろいろなジャケットに手を出し、結局この紺ブレに帰ってきました。素材も縫製も上質ですが、脇にダーツがなく誰にでも似合いやすいデザインで、個人的にはカバーオールのような存在。中にアノラックやスウェットを着てもいいですね」
「今季らしい新鮮なものと、不朽の名品を組み合わせて大人らしいファッションを楽しみたい。ジャケットやTシャツは今、あらためて定番品に回帰しています」
Q RETAILOR
「ロロ・ピアーナの細く艶やかなウールを贅沢に使用しながらイージーな着心地というギャップがうれしい。肩パッドのないアンコン仕様の一枚地で、ゆとりあるシルエット。クラシックな素材と仕立てのよさは残しつつ、シャツ感覚で肩肘張らずにはおれるジャケットが、まさに今の気分」
青山にある玄人好みなショップで、新鋭ブランドを多数ピックアップ。「エレガントであることからハズれず、エッジのきいたデザインを軽快に着たい」
RE-PURPOSE
「自分なりに今の気分を詰め込んだオーセンティックなジャケット。縦に長く、腰はシェイプせず、ボタンの間隔にまったりした余白がある。ただし仕立ては美しく、基本のディテールも踏襲。古着ではこううまくいかないというオーバーサイズで、どの体型にもハマる包容力があります」
「そもそも僕のワードローブは白シャツ・デニム・ジャケット…のような王道の組み合わせ。その一点ずつを、いかにブラッシュアップするかが勝負です」
COMOLI
「かろうじてテーラードジャケットの体をなしているような気負わないタイプも日常着として魅力的です。コモリの一着はVゾーンが狭く、軽いコットン素材。何度も洗いをかけて褪せたようなスミ黒もいい。淡い配色で全身をまとめ、これ一枚をガバッとはおるくらいがよさそうです」
「’80sのプレッピーを、今っぽく削ぎ落としたスタイルが気になる。ヨーロッパのお坊ちゃんのようなスクール風のアイテムや上品な配色に注目しています」
UNLIKELY
「肘と背中まわりの裏地はメッシュ。ボックス型のパターンとトロピカルウールの表地でアメリカントラディショナルな顔立ちですが、内側にはハイテクな要素が入っています。アメリカンユニフォームのいいとこ取りをしたような一着で、共地のスラックスとセットアップで着るのも気分」
「マイブームはアメリカントラディショナル。スタイリングのセオリーやキーアイテムを大事にしつつ、ディテールには現代の感覚を加えてアップデートしたい」
LEA BOBERG
「女性デザイナーのリアが作るジャケットはメンズ服には見られないデザインが新鮮。ラペルにカラーが重なっている仕様はユニークですが、どこかエレガント。構築的なパターンを、軽やかな素材で仕上げたのも美しい。計算し尽くされた一着です」
人気ブランドsteinのデザインを手がけ、セレクトショップcarolを主宰。「現代的なソリッドさと、ブランド独自のほのかなニュアンスを併せ持った服が好き」
COMME DES GARÇONS HOMME DEUX
「縮絨ポリエステルのジャケットは唯一無二。自分で洗ってもスーツケースから取り出したばかりでもシワのあるテクスチャーが味になり、強度もあってタフに使えます。作り手のことを想うと自然と背筋が伸びてくる縁起のよい服」
ファッションを中心にデザインのコンサルティング、プロダクションを行う会社の代表。「作り手の個性を感じる、縁起のいい服が好きです」