“「金」の価値が上昇しているから投資目的として”など一般的な資産としての関心もないことはないが、それだけじゃない。むしろ40歳になって腕や首を「盛ること」に抵抗がなくなり、もっと積極的に服と同じくそれらを「着こなす」快感に目覚めてしまったのだ。そしてどちらも消耗する服と違い、誰かに「継いでいく」ことができるもの。自分領域と周辺領域の間で上手にバランスをとるべき40歳にとって、最良の課金先は自分だけの服より未来の見える時計とジュエリーであると断言します。
GINZA TANAKA|プラチナ ネックレス
時計とジュエリーに今こそ課金すべき理由
「それって、もしかして、まさかのお揃いですか?」。それは9月初旬に行われた、UOMO12月号の「カンヅメ試着」特集撮影現場でのこと。スタジオ入り早々、出演者であるスタイリスト池田尚輝さんとニートのデザイナー西野大士さんが声を上げた。二人の手元に目をやると、池田さんはイエローゴールド、西野さんはホワイトゴールドの「サントス ドゥ カルティエ」ブレスレットが光っていた。しかも二人とも最近購入したらしく、タイプの違う洒落者が、なぜ同じものに惹かれたのか気になった。
「10年以上前からリース撮影はさせてもらっていて、いつか自分でもつけたいな、と思ってはいたんです。もういい年になったし、そろそろかなと思い、結婚記念日に思い切って購入しました。10年迷っても、結局いいものは裏切りませんでしたね。とてもいいタイミングでした」と池田さん。
「僕は昨年、40歳の誕生日に人生初のファインジュエリーとしてイエローゴールドの『ティファニー ロック』のブレスレットを買ったんです。そして今年41歳の誕生日に、ステンレスの時計に合わせる用にホワイトゴールドのブレスレットを探していたら、カルティエのお店で『サントス』を初めて紹介されて知りました。正直『サントス』=腕時計だけだと思っていましたから、思わず感動して衝動買い。40歳を過ぎて、時計に加えて、突然ジュエリー熱が上がってきましたね」と西野さん。
10年超えの計画と衝動買い。きっかけは違えど、どちらも話題の新作やコラボものには目もくれず、ずっと前から静かに継続され続けている名品を手に入れた。二人の話を聞いていたら急に自分のシャツの胸元が寂しくなって、気づけば初心者の僕は本誌で紹介されていたギンザタナカにいた。噂どおりのゴールドの量に圧倒されたが、端のほうで申し訳なさそうに輝く数少ないプラチナのネックレスに心を奪われた。中でも伝統的なベネチアンチェーンと呼ばれるスクエアパーツが連結した隙間の少ないタイプは直線的で、痩せ型で白い肌の自分にしっくり馴染んだ。それ以来、首につけっぱなしにしていて、完全なる自己満足で陶酔している。ゴールドで埋め尽くされた店内からのプラチナの「発掘作業」は実に有意義だった。いつの時代も僕らが求める名品とは「こんなのあったんだ」という密かな興奮とともにある。ヴィンテージではなく現行品を発掘してこそ。