高い実戦経験を持つイギリス軍特殊部隊の元隊員2名が1985年に立ち上げたブランド「ArkAir(アークエアー)」。彼らの母体となるArktis(アークティス)社は、英国軍装備の限界に挑戦し続け、独自の進化を遂げてきた。その実力は各国軍が認めるところで、現在では英仏独蘭の軍事組織だけでなく、世界中の特殊部隊や治安機関にギアを提供している。
そんな本物のミリタリーDNAを持つアークエアーが、2025年春夏シーズンからリブランディングして再始動。"未知の地"を意味する「terra incognita(テラ・インコグニタ)」をコンセプトに掲げ、ミリタリーウェアの新境地を切り開く。
今回の試着ルポでは、そんな噂を聞きつけたミリタリーアイテム大好きスタイリスト西又潤一がショールームに突撃。“新生アークエアー”を象徴する4アイテムの魅力を探りつつ、大人男子におすすめのコーディネートを紹介してくれた。
1983年、北海道生まれ。二村毅氏のアシスタントを経て2012年に独立。現在はUOMOをはじめとするメンズファッションメディア、広告などで活躍する。モノの本質を見抜いたシンプルかつ繊細なスタイル提案に定評あり。
早速新生アークエアーのアイテムが並んでいるラックをチェックする西又。出迎えてくれたプレスの瀬戸章汰さんがまず最初に紹介してくれたのは、アークエアーのアイコンである「コンバットスモック」だ。
西又:アークエアーって素材へのこだわりも半端ないですよね。この独特な生地の手触り、何か特殊な加工ですか?
瀬戸:はい。まず全アイテムの生地自体がコットンとポリエステルを50-50でブレンドしたリップストップなんです。そこにDWR加工を施して...。
西又:DWR?
瀬戸:Durable Water Repellentの略で、糸自体に撥水加工を施す特殊な処理なんです。水滴が生地に染み込まずに、コロコロと転がり落ちる。その効果で、雨や汗をかいても快適な着用感が保てます。
西又:なるほど。でもこの独特なハリ感は失われないんですね。
瀬戸:そうなんです。機能性と質感の両立にかなりこだわりました。タフで実用的でありながら、ファッションアイテムとしての品位も保てる。これぞアークエアーといった素材です。
西又:ボタンも特徴的ですよね。
瀬戸:パラシュートボタンって呼んでます。太めのコードでボタンを留めているので、まず外れにくい。でも同時に、布地との間に適度な距離があるから、着脱も楽なんです。
西又:細かいところまで実戦経験が活きてるんですね。ちゃんとブランドロゴも入ってる。
瀬戸:こういった細部へのこだわりこそが、アークエアーの真骨頂。本物のミリタリーウェアが持つ機能美を、今っぽくアレンジしているんです。
西又:カラー展開って、どんな感じなんですか?
瀬戸:はい。まずは定番の3色からスタートします。オリーブグリーン、コヨーテ、ブラックですね。
西又:なるほど。ミリタリーの鉄板カラーを押さえてきましたね。
瀬戸:さっそく着てみますか?
西又:はい。コンバットスモック、コンバットパンツ、ユーティリティパンツ。アークエアーの軸となる3アイテムを使って、すべてブラックでコーディネートしたいと思います。
1. B110RA Combat Smock
コンバットスモックは、第二次世界大戦で英国空挺部隊が纏った伝説の"デニソンスモック"が源流。4ポケット&ジップアップという特徴的なデザインコードを受け継ぎながらアップデートを重ねてきた、現在もなお第一線で活躍を続けるミリタリーの名作だ。
ストイックなミリタリーアイテムはダークにまとめてモダンに
西又:全身ブラックが主体のダークトーンでまとめました。特にコンバットスモックは、イギリス軍の伝統的なデザインながら、日本人の体型に合わせて着丈を短くし、袖回りを広げるなど現代的なシルエットに仕上がっているので、あえてモダンな着こなしに挑戦してみたんです。
ウールのスラックスを合わせたのがポイントで、ミリタリーアイテムが持つ力強さを、上品な素材と綺麗めなシルエットで柔らかい印象にしています。足元のワークブーツも、カジュアルすぎず綺麗めすぎない中間を狙える重要なアイテム。全体的にリラックス感は残しつつ、品の良さも感じられる。大人でも取り入れやすいミリタリースタイルです。
アジャスター付きのフードはワイヤー入りで型崩れを防止。オリジナルより首周りを広くし、着脱しやすくなっている。
前立ては風の侵入を防ぐためにジップとベルクロの二重構造。階級章を取り付けるための「ランクスライドタブ」がついていて、ミリタリー出自のディテールはしっかりと残されている。
前身頃の4つのポケットと左肩のフラップポケットに加え、ハンドウォーマーポケットが新たに追加された。収納力も十分で手ぶら派にもうれしい。
2. C111RA Combat Pants
フレンチミリタリーの代表格として語り継がれる両側カーゴポケットの意匠を纏ったコンバットパンツ。シルエットは深めの股上から、後ろ腰にかけて余裕を持たせながら、裾へと美しくテーパードを効かせ現代的に。そこへブリティッシュミリタリーの特徴的なディテールである傾斜を帯びたバックフラップポケットを融合させている。
仏英ハイブリッドの最強パンツを上品トップスで柔らかく穿く
西又:コンバットパンツはディテールも本格的なミリタリー感の強いアイテムなので、大人っぽく取り入れるのが難しいと思われるかもしれません。ですがトップスに綺麗な色味とシルエットのアイテムを合わせると失敗しません。今年の冬に選ぶなら、色は断然ブラウン。さらに上質なニットを合わせることで、ミリタリーパンツの持つハードさを柔らかくしています。
穿き方のポイントは、腰で穿いて裾が溜まるようにすること。深めの股上を活かしながら、ワイドテーパードのシルエットを活かす穿き方がおすすめです。足元はニットの色に合わせたブラウンのスエードで、色をリンクさせるのも大人っぽくまとめるポイント。
コンバットスモックと同じ実戦での運用を想定して採用された、コットンポリエステルリップストップ生地を採用。タフな生地感とモダンなシルエットの組み合わせは、タウンユースからアウトドアまで幅広いシーンで使える。
3. C415RA Utility Pants
USミリタリーの名作ファティーグパンツと、レンジャー部隊に供給していたアークエアーのアーカイブのパンツ。その二つのDNAを掛け合わせることで誕生したユーティリティパンツ。深めの股上から腰にかけてゆったりさせながら、裾に向かって落ちるワイドテーパードシルエットで今っぽく仕上げた。
ミリタリーパンツは綺麗めアイテムでモダンに
西又:本格的なミリタリースペックのユーティリティパンツを、大人の品格を保ちながら着こなすスタイリングです。ポイントはカジュアルになりすぎないよう、ネイビーのシャツできれいめに落とし込んでいること。光沢のある素材とリラックスしたサイジングのシャツを合わせることで、パンツの持つミリタリー感がモダンにシフトします。
足元は黒のスエードシューズを合わせました。ワークブーツほどカジュアルすぎず、革靴ほどフォーマルすぎない、この中間的な存在が大人のカジュアルスタイルには効果的です。ミリタリーアイテムを取り入れる際は、合わせるアイテムをきれいめなものでまとめる。これが、大人のミリタリースタイルを作る基本です。
深い股上から腰にかけての余裕あるシルエットは、裾へと向かって美しくテーパード。ミリタリーの機能美を現代的にアップデートしている。
随所に息づく本物の実戦仕様も見逃せない。ヒップには二重生地による補強を施し、耐久性を確保。さらに、グローブを装着したままでも出し入れを可能にする広めの開口部を採用するなど、実戦経験から得られた知見が惜しみなく注ぎ込まれている。
4. C406RA Utlity Shorts
瀬戸:じつはこのショーツが原型となって、ユーティリティパンツは生まれました。いわばユーティリティパンツの源流とも言えるアイテムです。
西又:これ、ミルスペックのディテールがそのまま残っていて本格的ですね。
瀬戸:はい。特にウエストのバックル式ホールドにはこだわっています。アクティブに動いても安定感は抜群です。
西又:バックポケットの作りも秀逡。
瀬戸:その通りです。二重生地による高い耐摩耗性と、グローブをしたままでも使える広めの開口部。実戦経験から得られたノウハウを惜しみなく投入しています。
西又:裾のドローコードもいい。その日の着こなしによってシルエットを変えられる。
瀬戸:スタイリングの自由度を上げる重要なポイントですね。カジュアルにもモードにも対応できます。
西又:でも何よりミリタリーショーツって、意外と選択肢少ないんですよね。特にこういう本格仕様だけど、ちゃんとファッションとして取り入れられるものがなかなかない。
瀬戸:そうなんです。ガチすぎず、かと言ってチープでもない。アークエアーらしい絶妙なバランスかなと。
西又:ショーツって個人的にずっと苦手意識があるんだけど、これなら来年の夏、挑戦してみたいかも。
アークエアのアイテムが試着できるイベントを開催
アークエアーのアイテムを展開するグリニッジオンラインストアが、試着体験型イベントを開催する。場所は東京・青山にあるショールーム「試着Lab」。紹介した4アイテムを自由に試着できるほか、その場で購入手続きもできる。完全予約制、1日限定開催のため気になる人は早めのチェックを。
グリニッジオンラインストア試着Lab ― 都市生活と英国ミリタリー ―
開催日時:2024年12月14日(土)
開催時間:11:00-18:00
住所:東京都港区南青山5-11-9 内田ビル1F
※1日限定、完全予約制
※商品はイベント終了後に指定の送付先へ発送
※注文した商品は2025年3月上旬よりデリバリー予定
グリニッジ
TEL:03‐5774‐1662