定型のあるデザインゆえに、着る人のパーソナリティが端的に表れる。スーツってそんな服。だからこそ、自分のライフスタイルにぴったりの一着を選ぶのが正解なのだ。となれば当然、イチから作るのが得策。洒落者たちの声をもとに、理想のオーダースーツについて考えてみよう。
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▶︎▶︎▶︎長山一樹さん、ビスポークはテーラーケイドの山本さんに一貫してお願いしている理由はなんですか?
僕の好みを熟知しているので、すべて任せられます。
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最新のオーダー場所
テーラーケイド
これまでのオーダー回数
25回
オーダーしたきっかけ
店主の山本祐平さんと波長が合うのを感じて。一生着るオーセンティックなスーツは、ビスポークで仕立てたいと思ったから。
Profile:
広告からブランドルックまで幅広く手がけるフォトグラファー。365日スーツを着用する。
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
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初めてケイドで仕立てたスリーピース
最初に誂えたのは、ケイドの顧客なら誰もが所有するヘリンボーンのスリーピーススーツ
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耐久性にも優れたウールシアサッカー
生地は大定番でも、長山さんの好みに合わせて’30〜’50年代のボールドルックにデザインされている。2着目は春夏用にシアサッカースーツを。
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キャンプにも着ていくチノスーツ
コットンではなく、ウール素材であるところがポイント。日常着としての耐久性に配慮した結果だそう。3着目はチノクロス製。
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次の一着は“和風なリネン”
非常にタフな素材で、山本さん曰く「これでキャンプも行ける」とのこと。着込むほど味が出るのも魅力。そして目下製作中なのはリネンスーツ。「和のイメージで選んだリネンです」と長山さん。
―海にも山にも、砂丘にまで、毎日スーツを着る長山さん。その裏には相当なこだわりがありそうですが…。
長山 よくそう言われるんですが、実際“こだわっている”わけではないんです。毎日着てわかったのですが、スーツってものすごく楽な服。今となっては、毎年の流行を気にしながらトップスとボトムの組み合わせを考えるカジュアルな服のほうがしんどいです。
山本 いいことをおっしゃいますね。堅苦しそうと思われがちですが、本当はスーツって、もっと懐が深い服。そして、着る方の日常に寄り添ってパーソナリティを引き立てる服なのです。
―長山さんがケイドで初オーダーしたのは2016年と伺いましたが、そのときの印象はいかがでしたか?
長山 僕が好きなスーツは今のトレンドからすると少々特殊なのですが、山本さんにはそれをいちいち説明する必要がありませんでした。「君が欲しいのはこういうスーツでしょ?」と、ズバリ言い当ててくれたんです。なので、最初からとてもスムーズでしたね。
山本 長山さんの佇まいを見て、’30〜’50年代の「ボールドルック」と呼ばれるスタイルがぴったりだと思いました。男らしい重厚さと、ゆったりとした余裕を感じさせるスーツです。
長山 まさにそんな雰囲気が理想でした。ただしガチガチの構築的スーツではなく、’80年代モードを思わせるようなやわらかさも取り入れたかった。
山本 そこで、仕立てはソフトさを意識しました。とはいえ下手なミックススタイルにならないよう、クラシックテーラーの流儀に照らして論理的にデザインしています。ここが曖昧だと、“変なものを作っちゃったな”とお客様に後悔させかねないですからね。
長山 山本さんは特定のハウススタイルを押しつけることはしませんが、かといって客のいいなりにもならない。10年、20年後を見据えて、“こうしたほうがいいんじゃない?”と諭してくれるから、こちらも安心して任せられるんです。時折“海外の有名な〇〇でビスポークしてみたら?”などと言われることもあるのですが、僕としてはケイドへ通い続けて“行きつけ”にすることに魅力を感じます。変化がないように見えて、その果てには何かがあるような気がするんです。
山本 それを理解していらっしゃるなら安心。自身のスタイルを築くには、同じことを繰り返すしかないんです。
長山 例えば生地選びにしても、昔はただ色柄の好みだけで判断していたのが、今は生地の奥に“背景”が見えるようになりました。このリネンは神田の蕎麦屋が似合いそうだ、とか。そういう小さな発見を重ねていくことで、自分だけのスタイルと呼べるものができていくのかもしれませんね。
Tailor CAID
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古今東西のカルチャーに通じる店主・山本祐平さんが率いる老舗テーラー。NYのトランクショーも毎回大盛況。
住所:東京都渋谷区宇田川町42-15 中島ビル2階
TEL:03-6685-1101
営業時間:11時〜20時、日曜・祝日〜 18時※要アポイント
定休日:木曜、第2・4日曜
Composition&Text:Hiromitsu Kosone