着こなしに深みを出してくれる古着は、おしゃれな大人のマストアイテム。’90年代以来と言われる古着ブームに沸く今、スタンダードになりうるものはあるのか? 古着の達人、坂田真彦さんがすすめる今買うべき3モデルを教えます!
ちょっとだけ視点をずらせば古着もスタンダードアイテムに
ウィリス&ガイガーのハンティングジャケット
ウィリス&ガイガーは1902年に設立されたアメリカの本格アウトドアブランド。「1930年代にいち早くサファリクロージングを手がけました。中でも作家のアーネスト・ヘミングウェイのために作った“ザ ヘミングウェイ ブッシュ ジャケット”が有名」。¥59,900/アネモネ
ハイテクなミリタリートレーニングシューズ
これはデザイン性の高さに定評のあるドイツ軍の’90s~’00s室内用トレーニングシューズ。「各国のデザインを見比べるのも楽しい」。¥13,200/DAMAGE DONE 2nd
Made in USAのリーバイス® 501
右ポケットにダメージのある’80sの501。「この頃ののぺっとした色落ちが今また評価され、狙って作るブランドも出てきているほどです」。¥7,700/Mr.クリーン
ヴィンテージへの造詣が深く、ルーツに基づくものづくりが得意な古着賢者の坂田さん。
「古着を好きな理由はいくつかあって、今の技術では作れない染めや織り、仕立てなど、貴重なものが存在する点。これはデザイナー目線ですが、“スタンダードになる古着”とはやはり新品にない価値や優れた点をもつものだと思います。それは例えば、デニムやレザーのような経年変化によって佇まいがカッコよくなるもの。ミリタリーやワークウェアのように、サイズ展開が豊富で誰でも似合うように作られているもの。あとはアウトドアものに多い、究極の機能服としての面白さがあるもの。そういう古着には“長く愛せるスタンダード”になりうる魅力が詰まっています」
大人の古着というとヴィンテージに目がいきがちだが、坂田さんは「レギュラー古着」といわれる’80年代以降の古着を推奨する。
「例えばヴィンテージデニムは独特の縦落ちが魅力ですが、今ではバリュー系ブランドでも縦落ちデニムが作れてしまう時代。ヴィンテージに何十万円も払わずとも、色落ち具合もサイズもバリエーションが豊富で、自分好みのMade in USAのリーバイス® 501を選ぶのが、スタンダードではないでしょうか」
現行のリーバイス®でも別格扱いされるMade in USAモデルだが、古着なら手頃だし何よりアメカジの王道としての本物感がある。
「ミリタリーは今回、トレーニングシューズをピックアップしました。これもジャーマントレーナーのようなローテク系のヴィンテージではなく、2000年代以降のハイテクなものが今っぽくて面白いと思います。アウトドアではすでに定番として確立されたバブアーよりも、ディテールコンシャスなウィリス&ガイガーのハンティングジャケットがおすすめ。古着界隈では、何かが流行るとそのアンチ的なもの、あるいはマイナーなものを掘り起こす天の邪鬼な人たちがたくさんいて、それがまた脚光を浴びて、やがてスタンダードになっていくということがよくあります。注目されていないものから光るものを見つけるには、天の邪鬼な視点、そして“古着でこそ”という価値を考えることが大事だと思います」
ウィリス&ガイガーのハンティングジャケット
昔ながらの狩猟に特化した“道具”としての魅力を備えたジャケットです。使用する目的によってポケットの数や配置が異なり、右利き用・左利き用など微妙にデザインの違うものがたくさんあって、掘りがいがあります。(坂田)
1990s Unknown
“ブッシュ・ポプリン”を使用したハンティングシリーズのシャツジャケット。重なるように配されたフラップポケットやハトメパッチが新鮮。背面に両サイドフラップ付きのゲームポケットあり。Made in HONG KONG。¥45,990/アネモネ
1980-’90s Unknown
フード内蔵のスタンドカラーで、ウエストがドローコードで絞れる“ホワイトハンター”に類似したデザイン。中でもMade in USAは稀少モデルだ。背面にはフラップ付きのゲームポケットも。¥198,000/サファリ5号店
1990s The Hemingway Bush Jacket
キルト加工のリコイル パッドと上下のフラップ付きポケットがアイコン。ベルト嫌いなヘミングウェイのために、ゴム入りのシャーリング仕様に。背面中央にアクションプリーツ入り。Made in USA。¥45,000/コズミックジャンパー
1990s The Hemingway Bush Jacket
タンのほかに、雨の季節やサバンナの緑の中で保護色になるピューター(グリーン系)をラインナップした“ヘミングウェイ”。袖にロールアップ用のボタン留めタブがつくのもウィリス&ガイガーらしい。Made in USA。¥59,900/アネモネ
ハイテクなミリタリートレーニングシューズ
’80年代以降の、近代ミリタリーの中ではスニーカーが抜群に面白い。名だたるメーカーが作っていて、軽量で履き心地も抜群。旬のボリューム感がありながら、匿名性の高いデザインは人とかぶりません。(坂田)
UK Magnum
英国アウトドアブランドHI-TECが、軍の依頼を受けて立ち上げた「MAGNUM」製。白はイギリス軍の室内用トレーニングシューズ。メッシュアッパー×レザーのコロンとしたフォルムも今どき。デッドストック。¥14,300/アミーチ
UK Magnum
ストームを想定した悪路用に作られていた、2000年代の英国軍のシューズ。M字が2つ重なるサイドのテープや、流線状のソールもマグナムらしい。軽量メッシュアッパーに旬のブラウンワントーンで今っぽく履ける。¥10,000/アンコール
German BW SPORTS
マルジェラがサンプリングしたと噂されるジャーマントレーナーを製造していたことで有名な、BW SPORTS社製の’90s~’00sインドア用シューズ。メッシュ×レザーにブルーのアクセントがきいたデザイン。¥13,200/DAMAGE DONE 2nd
Czech Unknown
チェコのワークシューズメーカーが手がける2015年製のミリタリートレーナー。アッパーのデザインだけでなく、ビブラムソールを採用するなどリアルにハイテクなスニーカー。マルチカラーの配色センスも抜群。¥9,680/Good ScarP
Made in USAのリーバイス®501
40年以上ジーンズをはいていますが、本物として今も色褪せないのが古着の501。赤ミミ以降もMade in USAは2000年代初頭まで作られていて、価格も手頃。自分好みの色落ちでオリジナルレングスのものを買えば愛着も湧きますよ。(坂田)
1990s
ヒップラベルに501XX、Made in USAの文字が残り、ねじれが強めに出ている501。内側にもリーバイスロゴ入りのシンプルなMade in USAタグが。ケミカル感のある色落ちが今また新鮮だ。¥14,740/ジャンピンジャップフラッシュ
1990s
ヒップラベルの501が刻印で入ったMade in USAもので、内側の白タグは洗濯表示の文字のみ。やや黄みがかった色の落ち方が大人にちょうどいい“味”に。いろんなスタイルにハマる。¥13,090/ジャンピンジャップフラッシュ
1990s
ヒゲや膝裏のハチノス状のアタリが秀逸。右膝のダメージもちょうどいいあんばい。ヒップラベルは文字が消えかかっているが、内側にリーバイスロゴ入りのMade in USAタグがつく。¥15,840/ジャンピンジャップフラッシュ
1990s
ほぼムラのない、アイスブルーのような明るいカラーリングが新鮮。ヒップラベルの文字もほぼ消えているが、内側のタグには洗濯表示とともにMade in USAの文字が入る。明るい色のトップスにも好相性。¥8,800/Mr.クリーン
Stylist:So Matsukawa
Illustration:Shigeo Okada
Interview&Text:Hisami Kotakemori