モードやストリートなど既存のジャンルではくくれない、大人が心地よく着られる魅力をもつOAMCの新作は自然の要素が無理なく落とし込まれた、欲しいものだらけ。ディレクター、ルーク・メイヤーのインタビューも必読だ。
INTERVIEW with LUKE MEIER
多国籍で生きてきた経験と豊かな自然が今季のヒント
――3年半ぶりの来日だそうですね。
日本の知り合いと「すごく久しぶりだよね」と話をしているのに、そう感じさせない雰囲気もある。自分自身のフィーリングと実際の出来事が結びつかない不思議な感覚にとらわれています。
――ご自身にとって日本とは?
OAMCを立ち上げてから定期的に訪れていたし、私にとっては特別な場所で、思い入れの強い国です。
――東京で注目しているカルチャーはありますか?
日本を尊重する気持ちはずっと前からもっているから、現在、特別何かに着目しているとかはありません。両親がスイス人とイギリス人で、カナダで生まれ育ち、ニューヨークやパリやミラノにも住んできた。そういった自分のルーツがあるから、常に世界をフラットに見ています。いろんなものを感じ取って、素直に表現できる自由さはとても大切なことだと思っています。
――日本で買ったもの、買って帰りたいもの、教えてください。
絶対にこれを買うってものもなく、偶然の出会いを楽しみたい。3年前に来たときは日本でしか見たことのない不思議なペンに出会ったし、能登半島で知り合った紙すき職人の作品は、そこでしか絶対に出会えなかった。そう思うと、確かに日本での出会いは他国より多いかもしれません。以前、東京で見つけた木とガラスの棚は、今もミラノの自宅の衣装ケースとして使っているほど、記憶に残る大切なものです。
――では、あらためて23SSのコレクションについて教えてください。
生まれ育ったバンクーバーは、山と湖と川と海が一つになって、その中に街がありました。山を登ると3000㎞先まで誰もいないんじゃないかと思うほどの雄大な自然を、身近に感じ続けてきた経験がインスピレーションになっています。山に咲く花や岩を拡大してプリントしたり、1960〜’70年代のクライミング用の地図記号をOAMCらしく解釈したり。そして写真家のジョーダン・ヘミングウェイがスイスで撮影した山の写真を服に使っています。あとは今季初めてデニムを扱いました。これから研究を深めて、展開の広がりを模索したいです。
――フラグメントデザインやダブルタップスなど、日本のブランドとのコラボレーションが続いています。
藤原ヒロシさんも西山徹さんも20年近く前からお互いにリスペクトし合う関係を保っています。ビジネススケールの話をせず、共通の興味や好きなカルチャーを軸に取り組めることはとても幸せだと思います。
――ルークさんのファッション観はどうやってアップデートしていますか?
自分ではスタイリングが上手とは思っていません。ただ、3年前に手に入れた服を突然着てみるなど、体型や生活の中の小さな変化を感じ取って、そのときに着心地のいい服を選ぶことは多いかもしれません。自身のコレクションのサンプルを試したことで新しいスタイルが見えてくることも多いです。
――すごくシンプルで洗練されたスタイルだと思っていますが、実際どのくらい服を持っているんですか?
数えたことがないけど、必要以上にあります。服とレコードと本はいまだに増え続けているかな。資料用として手元に持っていたい、というのは都合のいい言い訳かもしれませんね(笑)。
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Hair:SHOTARO[SENSE OF HUMOUR]
Stylist:Toshihiro Oku
Model:Tristan
Interview&Text:Masayuki Ozawa