ベルヴェストは1964年にイタリア・パドヴァで創業した、屈指のテーラード技術を誇るイタリアを代表するスーツブランド。北イタリアを象徴する軽やかな仕立て、ボディラインを強調しない端正なシルエットはまさに都会的なラグジュアリー。クラシックとモダンを兼備したジャケットを、ファッションのプロ8人が多彩なスタイリングで披露する。
端正な黒ジャケットをさらりとノンシャランに着たい
1.西口修平/BEAMS F ディレクター
-JACKET IN THE BOX / SINGLE JACKET
「美しい縫製と着心地のいい仕立ては言わずもがな、ベルヴェストのベストセラー『JACKET IN THE BOX』をバイイングし続けています。8年前にパターンのご相談をして、胸ポケットとボタンの位置を上げ、裾は流れるようなカーブにしてもらいました。以降いっさい変わらないこの形を、いつ着てもモダンだと感じています。今季、華やかなイタリアのスタイルでは避けられがちな『黒』をあえて選択。さらにボタンはシルバーメタルでよりシックに仕上げました。クセのない洗練された佇まいがベルヴェストの持ち味で、ゆるめのタートルネック、90年代のリーバイス501、ウエスタンブーツのような様々な要素をすんなり引き受けてくれる。いい歳ですから、これみよがしなものではなく匿名性のある上質なものをノンシャランに着たい。まさに酸いも甘いも知っている大人の服だと思います」。
柔らかな仕立てに、ニュアンスあるブルーが映える
2.川辺圭一郎/TOMORROWLAND バイヤー
-DOUBLE FACE SINGLE JACKET
「ダブルフェイスのジャケットを、贅沢にカシミヤ素材で堪能しています。肩には薄い芯地のみが使われ、まるでカーディガンを羽織っているような心地よさ。このベルヴェストお得意の柔らかな仕立てに、ニュアンスのあるブルーがとても相性がいいんです。袖を折り返したときの裏地のネイビーもちょっとしたアクセント。タイドアップもいいけれど、ラグジュアリーなものをさらりと着たいと思ってジャストよりワンサイズ上げています。パターン自体はすっきりと都会的で、メゾン マルジェラのボーダーニットにドリス ヴァン ノッテンのデニムのようなデザイナーズブランドとも好相性。ブルーを軸にしながらフレンチトラッドを意識したスタイルです」。
古き良きハウンドトゥース柄と、随所にしのばせた遊び心
3.稲葉智大/伊勢丹新宿店メンズ館 バイヤー
-FULL CANVAS HALF LINING SINGLE SUITS
「昔ながらのハウンドトゥース柄と、モダンなシルエットのスーツという掛け合わせが新鮮。ジャケットはほんの少しゆとりを持たせたフィッティング。スラックスはいつもより丈を長めにとり、ストレートに見えるように裾幅を広げています。上下ともに繊細な微調整で自分好みにパターンオーダーしました。真っ白ではなくニュアンスカラーが特徴かつ、襟の剣先が長いハズバンズのシャツにニットタイを合わせ、シューズは丸みのあるプレーントゥ。様々な要素を組み合わせています。王道のドレススタイルを守りながら、ルールの範疇で遊び心を入れていくのが楽しいです」。
ダブルフェイスのウール生地で、ジャケットとコートの中間的な存在を愉しむ
4.豊永譲司/ユナイテッドアローズ メンズチーフバイヤー
-DOUBLE FACE SINGLE JACKET
「ふっくらしたダブルフェイスのウール生地を、濃紺で選んでみると、ジャケットとコートの中間のような一着になりました。ハンドメイドで仕立てられた柔らかさ、精緻なステッチワークと気品は十分ですが、カジュアルなスリーパッチポケットが手伝って、気負わず羽織りやすい。ネイビージャケットにグレースラックスというコンサバに陥りがちな組み合わせでさえもコンテンポラリーに映るのがベルヴェストの底力です。タートルネックをハイウエストでタックインするような80’sムードが今の気分で、首もとには当時のアーカイブ風のスカーフを差してみました。とはいえタイドアップしてもスウェットパンツを合わせてもハマる一着。ミニマルなワードローブの中で頼もしく感じられます」。
美しい仕立てだから選べた大ぶりなチェック柄が主役
5.米島力伊/高島屋 MD本部 サロン ル シック セレクト メンズ バイヤー
-JACKET IN THE BOX / SINGLE JACKET
「身体のラインに沿った柔らかなシルエットと軽やかな着心地が特徴の『JACKET IN THE BOX』。歴史あるベルヴェストの中で特にモダナイズされているモデルです。洗練されたパターンだからこそ、アルパカ素材を贅沢に使ったチェック柄のような存在感のある一着に挑戦したいと思えたし、色選びの遊び心にも惹かれました。届いた一着をよく見ると、身頃と袖の生地の合わせ、胸のバルカポケット(胸ポケットの左端が尖ったクラシックな仕様)の付け方など、細部まで全体のチェック柄がまとまるように美しく生地がつながれていて…丁寧過ぎる手仕事に驚きました。ジャケットを主役にしながらヒューベントのワイドパンツを合わせ、パンクチュエーションズのネックアクセサリーで重心を上げてスタイリングしました」。
ブルーとグレーの現代的なグラデーション
6.入井奏流/エストネーション 六本木ヒルズ店 スタッフ
-JACKET IN THE BOX / SINGLE JACKET
「Vゾーンの色選びがこだわりです。最高級の仕立てを直球で楽しみたかったので、ジャケットは正統派のグレーを。ただし中にはトーンの異なるブルーを重ね、フレッシュさを演出しながらも知的な色合わせにしています。全身のシルエットは程よいジャストフィットで揃え、スラックスは中太のストレートが今っぽい。イタリアの老舗でありながら、ベルヴェストには『どこかの国っぽさ』という主張がないのもポイント。イタリア的でもイギリス的でもないから、クリーンに着られて現代的。レスカのメガネやリザード素材のローファーのような個性の強い小物をプラスする楽しさも生まれます」。
ミックススタイルが楽しめる、包容力あるジャケット
7.星野悠人/バーニーズ ニューヨーク六本木店 シニアセールスアソシエート
-JACKET IN THE BOX / SINGLE JACKET
「『JACKET IN THE BOX』は言うなれば包容力のあるジャケット。王道のドレススタイルはもちろんキマりますが、軽やかでミニマルだから何を合わせても受け止めてくれる。ざっくりと胸元のあいたスキッパーニット、それもハイゲージではなく起毛のあるミドルゲージを中に入れて、ヘルシーな肌見せにトライしても面白い。メゾン マルジェラのワイドスラックスを合わせ、タンクトップの色を覗かせたりコンチョベルトを見せたり、足もとはスニーカーだってまとまります。ただしドレスのスタイルのマナーとしてスカーフを入れることは忘れずに、くしゃっとラフに差して仕上げました」。
モノトーンに柔和さを与えるハウンドトゥース柄のダブル
8.宮崎雄司/DESIGNWORKS Mens DIV. ディレクター
-LIGHTWEIGHT SINGLE JACKET
「ちょっと気合いを入れる展示会や商談で着ているのが『JACKET IN THE BOX』のダブル。ともすると威圧感が出て難しいダブルですが、柔らかな仕立てがそうは感じさせない。実際に動きやすさは格別で、疲れないのが嬉しいし縫製レベルの高さを物語っています。このジャケットだけで落ち着いた品が生まれるので、合わせは気張らずにシンプルなニットと古着のスラックス。ハウンドトゥースの柄に合わせてモノトーンを軸にしながら、シューズはトリッカーズ別注のベルベット素材のスリッポンでハズし、スカーフをチラりと見せて少しの華やぎをプラスしています」。
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