ビルケンシュトックの隠れた名品として愛されるモックトゥシューズ、パサデナ。1990年代後半から2000年代にかけて、裏原宿のカルチャーと結びつきブレイクした。復活の要望も多かったこのシューズが、今シーズン復刻される。そこで当時のシーンを牽引した藤原ヒロシさんのインタビューを含め、パサデナについて多角的に解説。
Q.90年代、パサデナはどんな存在だった?


A. モックトゥとホワイトソールが裏原宿のカルチャーとマッチしてブレイク!
パサデナはビルケンシュトックを象徴するコルクと天然ゴム、ジュート繊維でできたフットベッドを装備したモックトゥシューズとして1993年にデビュー。発売当時はブラックソールだったが、1994年にホワイトソールモデルが登場。裏原宿のカルチャーにマッチしたことで90年代後半から2000年代にかけて人気を博す。2019年以降は次世代モデルが登場し、パサデナ3までバージョンアップされるが、90年代のモデルの復刻を望む声が寄せられ、2025年春、オリジナルに近い形で復活(画像は復刻されたパサデナ)を果たした。
藤原ヒロシインタビュー「90年代の完成されたデザインが今また時代にフィットする」
パサデナは裏原宿のクリエイターたちがブームの発端となった。そこでシーンを牽引した藤原ヒロシさんに当時のことや復活したパサデナについてインタビュー。

――ヒロシさんがビルケンシュトックに出会ったのはいつ頃ですか?
藤原 かなり昔ですね。70年代、何かの雑誌に、確か医療用サンダルとして紹介されていたのが、記憶に残ってます。ビルケンシュトックはいつからあるんですか?
――ビルケンシュトックから初めてサンダルが登場したのは1963年です。それまではフットベッドのブランドとして長い歴史があります。コンフォートサンダルの先駆的な存在だったこともあり、70年代にヒッピーのカルチャーと結びついて世界的にヒットしました。
藤原 今もヒッピーのような人が履いているイメージはあります。当時はバーケンストックとビルケンシュトック、どっちが正しいのか? 意見が分かれて、僕はバーケンストック派でした。
――パサデナが発売された1993年には、裏原宿の起点となったノーウェアがオープンしています。ホワイトソールのパサデナは1994年に出たのですが、当時どんな受け入れられ方をしていましたか?
藤原 パサデナというよりもビルケンシュトックのサンダルをみんな履いていましたね。あの頃は夜中にヘクティクとかノーウェアの事務所に行くと、みんなルームシューズ代わりに自分の好きなモデルを履いていました。竹下通りの交差点の近くに店がありましたよね?
――明治通り沿いにありました。1997年から2014年までは竹下口の近くでした。パサデナのようなモックトゥシューズが、2000年前後に裏原宿で流行っていたと思いますが…。
藤原 ビースティ・ボーイズがワラビーを履いていた影響だと思う。裏原宿のクリエイターや僕のまわりに、パサデナを履いていた人がいたのは覚えています。

――裏原宿のレザーシューズはモックトゥにホワイトソールというのがデフォルトでした。そんなイメージもあってか、パサデナは2、3とアップデートされたんですが、ホワイトソールの復活要望が多かったそうです。ここにオリジナルと今季復活したモデルがあります。
藤原 並べるとオリジナルと全然違って見えますね。
――オリジナルはサンダルと同じフットベッドを使用していたのでシェイプもそれに合わせたものでした。復刻モデルにはレザーシューズ用の新しいインソールが採用され、ディテールもモダナイズされています。
藤原 オリジナルに忠実に復刻するのは、クリエイトするほうとしてはつまらないけれど、買う側はどこまでも忠実に再現されているモデルが欲しいという人もいるので難しいですよね。何かをつくるときは、僕もいつもそこと戦います。

――ここ数年、Y2Kという2000年前後に流行ったものが再び脚光を浴びるトレンドが続いています。パサデナが復刻されたことを、どう感じていますか?
藤原 90年代以降には新しいモノが出ていないので、こういった名品と言われるモノが当たり前のように復刻されますよね。
――当時のものは優れているということでしょうか?
藤原 デザイン的にある程度完成されているということですね。少し前にダッドシューズブームがありましたが、過剰にカスタムされたものを僕はあまりいいとは思わないし、履かないので。
――そういう中でパサデナのような時代を超えたシューズを見るとホッとしますよね。
藤原 そうですね。最近は「スニーカーブームは終わっている」って言われています。だから今またこういう靴がいいんじゃないんですかね。
モダンなスペックで登場した「新パサデナ」は令和のニュースタンダードシューズだ

モックトゥのフォルムが特徴のパサデナが2025年春夏、スエードアッパーにホワイトソールで復活。履き口部分にパッド入りで足当たりがよく、解剖学に基づく靴用のインソールが用いられている。カラーリングも定番のトープ、ブラックをはじめ、トレンドカラーのモカや、配色のストーンコイン/ホワイトもラインナップ。往年のパサデナ・ファンはもちろん、モックトゥの入門シューズとしてもおすすめ。(上から時計まわりに、モカ、トープ、ブラック、ストーンコイン/ホワイト)。
「パサデナ」のディテールをチェック!




甲部分のモカステッチが象徴的なパサデナ。ステッチはボディと同色で、アッパーとソールの接合部分にもあしらわれている。ほどよいソールの厚みが、トレンドに左右されずタイムレスに履けるポイント。2025年の復刻モデルはヒールカップとの縫合部分に2本の手縫い風ステッチ加わり、またヒール部分にロゴを刻印したヌメ革のレザータブが付くのが特徴。取り外しできるインソールはビルケンシュトックらしいコルクベースだが、シューズ用に改良されたバージョンを搭載している。
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