ベージュのチノパン=王道である一方で、どうしてもぬぐえないコンサバ感。気のきいた今っぽい一本は本当にあるのか、旬な着こなしは可能なのか、ファッション経験値の高い3人がはき比べながら白熱レビュー!
試したのはこの3人
普通だからこそ難しいチノパンをどう攻略する?
池田 チノパンといえばオールデンを合わせた王道アメカジが強く連想されてしまい…その粋を超え、シャレて着こなす難易度が高い。素材や色でひとクセ加えたものはまだいいのですが、こういう王道中の王道であるベージュのチノパンは正直、はいてこなかった。
霜降 若い頃にラルフ ローレンやブルックス ブラザーズなどトラッドなチノパンを買ったもののうまくこなせずにほぼ着なかった苦い思い出が…。
高橋 オーセンティックなものほど難しいですよね。普通すぎてファッションとして成立しなかったり…時代錯誤なアメカジおじさんになるのも避けたい。ディッキーズ874のようなワーク系のパンツはストリートに振れるから簡単なんですが。今日は果たして今っぽくこなせるのか、ある種、挑戦の気持ちです。
池田 いい年になったことだし、さらっとうまくはけたら粋なんですけどね。
霜降 試すチノパンはどれもブランドのこだわりが詰まってそう。われわれの苦手意識が先行していただけで今のブランドなら洗練された一本が見つかるかもしれませんよ?
高橋 なるほど。クリーンにはけたら理想的ですね。
’40sミリタリーチノをアップデート
HYKE
ツイル アーミー チノ ¥26,400
洗練されたベーシックウェアが人気のハイク。ユニセックスで継続展開されている定番型を、あらためて試着。’40年代のミリタリーチノに着想を得た一本は、レトロな色味とすっきりとしたストレートシルエットの掛け合わせが魅力。
黄味の強いクラシックなベージュが新鮮
真っすぐ落ちるクリーンなストレート
ウエストのタックを省いて後ろ姿も美しく
霜降 古きよきミリタリームードを感じる武骨なベージュがあらためて新鮮。デッドストックのようないなたい風合いの生地も、いい味になっています。
高橋 黄味がかった色には’40年代のミリタリーを感じますね。
池田 パターンの設計もさすがハイク。かなりアーカイブを掘ってそうですね。腰まわりはゆったりさせないノータックで、緊張感のあるシルエット。そこから膝下にかけて真っすぐ落ちるラインは、今あまり見ない形です。
高橋 昨今のトレンドがゆるめのシルエットだったこともあり、やや細身のストレートはフレッシュに感じますね。クッションさせてはくと、さりげなく裾口が広がって繊細なフレアになるので武骨さが和らぐ。ユニセックスというのも繊細に見える理由かもしれません。
霜降 確かに。ヴィンテージを表現しているわりに、野暮ったさを感じないのが珍しい。一見、普通なのに洗練された一本、どうはくのが正解だろう? クリーンなシルエットに合わせてトップスもコンパクトにまとめるほうが大人っぽく着こなせそうです。
池田 かつブルーやイエローなど鮮やかなカラーとミックスすれば、ベージュのレトロ感が払拭されそう。
いなたいベージュと、
きれいなシルエットの
バランスがこなれてる。
頑張っている感じがせず
さり気なく見えて、大人っぽい。
(霜降)
ヨーロピアンミリタリーから
着想を得たモダンな一本
COMME des GARÇONS HOMME
コットンチノトラウザーズ ¥42,900
トレンチコートにも使用される高密度のギャバジンに洗い加工を施した生地は、玉虫色の光沢が特徴。上品さと男らしさを両立した風合いが、今の気分だ。太いベルトループや内股のガゼット仕様は、欧州ミリタリーのディテール。
’90年代を思わせるテーパードシルエット
ラグジュアリーな玉虫色の光沢
フラップポケット付きのトラッドな後ろ姿
池田 深いツータックが入り、太めのわたりからテーパードするシルエットがトラッド。小細工のない潔さが気持ちいいです。この形は’90年代にも流行ったので親しみがありますね。
高橋 お尻のフラップポケットも、そのムードですよね。
池田 しかも裏原シーンをリアルに通ってきた僕たちにとって、ギャルソンという点でも気分がアガる(笑)。
霜降 まさに。全盛期を通ってきたので当時はギャルソンをスケータースタイルで着ていました。
池田 今ならチノパンがしっくりくる気がしませんか? デザイナーズブランドで、クセの強い服でなく定番モノを選ぶというのが大人ならではの余裕かな、と。ポケTを合わせて王道のアメカジスタイルで着たいです。慣れ親しんだフォルムでスタイリングしやすいし、生地の独特な光沢も気がきいている。シンプルにはいて、十分にコーディネートが成立しそう。
霜降 僕はまだハズしたい気持ちがあるのでシェルやウインドブレーカーなどのテックウェアをはおりたいかも。
高橋 確かに、光の当たり方で表情が変わって見えて、スポーティなナイロン素材の光沢とも相性がよさそう。スタンダードかつ今っぽく着たいです。
深いタックのテーパードシルエットが
オーセンティック。
高密度で張りと光沢のある
生地とのバランスもいい。(池田)
風格のある渋い風合いが魅力
NICENESS
チノトラウザー ¥63,800
フレンチ、イギリス、アメリカの異なるミリタリーの要素を織り交ぜ、現代的なシルエットに再構築。柔らかいコットンに洗いをかけることで’40年代ミリタリーのいなたい風合いを表現。ポケットの裏地には高級レザーを使用。
大胆に振りきったワイドシルエット
横から見てもズドンと存在感あり
裏地のレザーが見え隠れする上品なヒップの玉縁ポケット
高橋 艶のある上質なコットンを使用しながら、あえて着倒したようなナチュラルな風合いに仕上げているところが計算し尽くされていると感じました。たまたま着ていたナイスネスのジャケットを合わせてみたんですが、エレガントさと古着っぽさが共存したスタイルになって、すごく自分好み。
霜降 赤味を帯びたベージュは、くすんで見えないのもいいですね。チノクロス特有の硬さがなく、滑らかな素材のおかげで空気をはらんだようなボリュームが出るのもしゃれています。
池田 古いヴィンテージチノの雰囲気がありつつ、今のスタイルにも馴染んでくれるのは、随所にアレンジがきいているからですね。ヒップポケットの裏地がレザーになっていて、ちらりと見え隠れするのもいい。
霜降 ワイドなシルエットに、リラックス感のある生地と、僕たちの気分を拾ってくれているのもうれしい。
高橋 スタイリングは楽チンですね。ゆるさを生かしてストリートに振ってもいいですし、シャツとジャケットで昔ながらの紳士っぽく振ってもこなれて見えてうまくいく。
池田 さらに今日の高橋さんのように、白のコンバースで抜くのはすごくいいですね。
張りとコシの抜けた柔らかい生地。
テーラードジャケットに
合わせてリラックス感を
出したいです。(高橋)
チノパンツに関するオススメ記事はコレ!
Hair&Make-up:AMANO
Stylist:Takeshi Toyoshima
Model:MIKIYA
Text:Takako Nagai