1月下旬に開催されたパタゴニアSS25 プレスプレビュー。後編はライフ・アウトドアーズのアウターやフリース、ロゴTなどのデイリーウェアにフォーカスしていく。今季からパタロハが新シリーズに切り替わるなど、ニュースもピックアップ。
スタイリスト瓜坂拓海(身長175cm)が副編集長の薬師神(身長165cm)とともに展示会へ。ライフ・アウトドアーズ カテゴリーは、パタゴニア日本支社 マーケティング部の本橋大地さんが案内してくれることに。
Life Outdoors|コットンのアウターに注力しつつ薄手フリースのバリエーションも追加
本橋: ライフ・アウトドアーズはパタゴニアの日常よりの製品のカテゴリーです。まずは春先に重宝するアウターから紹介させていただきます。
瓜坂: よろしくお願いいたします!
パタゴニアのチェックネルシャツがよく似合っている本橋さんは、雪山と海をこよなく愛するスノーボーダー兼サーファー。カナダでスノーバム生活を経験したこともある筋金入りのアウトドア好きだ。
01.ファンホッガーズ・アノラック ¥23,650
本橋: このコーナーに並んでいるのはオーガニック・コットン、コットン・イン・コンバージョン、ヘンプなどの天然素材の製品です。このアノラックも2年前から出ていますが、コットン・イン・コンバージョン製で…。
瓜坂: これはpatagoniaロゴがシンプルでボディと同色ですね。
本橋: 最近はこんな風にボディの色に合わせる製品も多くなっています。
薬師神: 昔のロゴを使った製品もちょいちょい出ていますよね。
本橋: はい、他の製品でレガシーラベルと呼んでいるものも登場しています。
02.メンズ・ウィンドスウィープ・ジャケット ¥30,250
続けて本橋さんが紹介してくれたのは、なんと…。
本橋: こちらはトレイルランニング用のフーディニ・ジャケットをオーガニック・コットンのリップストップでつくった新作です。
薬師神: UOMOのアートディレクター、藤村さんも愛用しているフーディニ! 僕、試着します。これもポケットに収納できたりします?
本橋: はい、左胸のポケットに収納できます。さらにPFAS(有機フッ素化合物)不使用のDWR(耐久性撥水)加工が施されているので、小雨程度でしたら弾いてくれます。
03.(左)ライトウェイト・ワックスド・コットン・ジャケット ¥52,800
瓜坂: このちょっとオイルドっぽいジャケットも新作ですか?
本橋: ワックスド・ジャケットの新作で、ハレー・スティーブンソンズ社のエバーワックス・オリーブ(食品産業で廃棄された原料を再利用した植物由来のワックス)を使用しています。表地はオーガニック・コットン100%のリップストップ、裏地は産業用ヘンプとオーガニック・コットンを混紡したモスリンで、表面がしっとりとしているのが特徴の防水素材です。洗濯はせずにワックスを塗り足して使っていただきます。
瓜坂: 内側の織りネームにも「Wax, Don’t Wash」と書かれていますね。育てていくタイプ。
薬師神: 着続けたらめっちゃ味が出そうじゃないですか? 一生モノな感じがします。
04.(左)メンズ・マイクロD・シャツ ¥18,150 05.(中)メンズ・マイクロD・フーディ ¥14,850 06.(右)メンズ・マイクロD・クルーネック¥13,750
瓜坂: このあたりのフリースも気になります。シャツとか、今までありましたっけ?
本橋: 新作です。ほどよい保温性と通気性のある薄手のフリース、マイクロDのシリーズもバリエーションが増えました。シャツ、フーディ、カンガルーポケットが付いたクルーネックと新作が3型出ます。2~3月に活躍してくれること間違いありません。
瓜坂: マイクロD3兄弟ですね。
あたたかく多機能なマイクロDシリーズは、両面に毛玉防止加工を施したリサイクル・ポリエステル100%のマイクロデニール・フリースを使用している。
07.メンズ・ライトウェイト・シンチラ・スナップT・プルオーバー ¥20,900
薬師神: これは通常のスナップT? めっちゃきれいな色ですね。
本橋: 定番のメンズ・ライトウェイト・シンチラ・スナップT・プルオーバーの新色です。
パタゴニアの代名詞的定番、シンチラ・シリーズは、季節にマッチするシーズン・カラーにも定評がある。
パタゴニアのトロピカルシャツ「タイダル・スレッズ」コレクションがデビュー
会場でもひと際目立ったトロビカル・シャツのコーナーへ。
本橋: 今シーズンのトロピカル・コレクションは海の中の動植物の互恵関係がインスピレーションです。人がひとりでは生きていけないように、海の生きものたちもお互いが助け合って生きています。トルソーが着ているシャツは、ほかの魚の外部寄生虫を食べるホンソメワケベラなどがモチーフで、ほかにもバリエーションがいろいろとあります。
瓜坂: 夏らしい南国のイメージですね。
08.メンズ・タイダル・スレッズ・キャンプ・シャツ 各¥19,800
本橋: こちらは柄のバリエーションで、左が海底の植生を描いたUndersea(アンダーシー)、右が珊瑚モチーフのOh Coral(オー コーラル)です。
瓜坂: タグもアロハ仕様ですね。
メンズ・タイダル・スレッズ・キャンプ・シャツは、オーガニック・コットン100%のドビー織り生地で開襟、ココナツボタンを使用して裾はスリット入りのストレートというデザイン。
09.(左)メンズ・ゴー・トゥ・シャツ ¥12,100 10.(右)メンズ・バギーズ・ショーツ 5インチ ¥9,900
本橋: トロピカル・コレクションはスタンダードなシャツ・スタイルも展開しています。これは「スワロウテイル」という柄で、同柄のショーツの展開もあるので、セットアップとしても着用いただけます。
薬師神: 夏、このセットを着たら、快適すぎて戻れないかも…。
メンズ・ゴー・トゥ・シャツはオーガニック・コットン60%/リサイクル・ポリエステル40%の平織り生地で、軽量かつ通気性に優れているのが特徴だ。
廃漁網をリサイクルしたネットプラスにも新作&アップデート製品が登場
廃漁網をリサイクルしたネットプラス製品も今季のフォーカス・アイテム。展示会場の一角には「このウェアの原料は本来海にあるべきものではありません」というメッセージポスターとともに、ネットプラスの原料となる廃漁網がディスプレイされている。
地球全体で毎年約880万トンものプラスチックが海に流出しており、そのなかでも有害なプラスチック汚染のひとつが廃棄された漁網だ。その廃漁網にかかって命を落とす海洋動物は毎年65万匹にも上る。この問題を解決すべく、2014年からパタゴニアはブレオ社によるネットプラス素材の開発を支援してきた。
11.メンズ・アウトドア・エブリデー・マースーピアル ¥24,200 12.メンズ・アウトドア・エブリデー・ショーツ 6インチ ¥13,200
本橋: ネットプラスは世界中の漁業共同体から廃棄された漁網を集め、それを原料として100%リサイクルした素材です。この素材を使った新コレクションが登場します。
瓜坂: ライフ・アウトドアーズで人気の「エブリデー」シリーズですね?
本橋: ジャケットは新作で、ショーツとパンツはデザインがアップデートされました。ジャケットは胸ポケットのほか、両サイドにカンガルーポケットが付いた水陸両用デザイン。ショーツはストレッチ性がアップして、ポケットのデザインが変わりました。
「アウトドア・エブリデー」シリーズは日常着としてだけでなく、低山でのハイキングやフライ・フィッシングなどアウトドア・アクティビティにもおすすめだ。
13.メンズ・バギーズ・ショーツ 5インチ ¥9,900
薬師神: ネットプラスを普及させるため、パタゴニアの夏の定番バギーズに大々的に投入されたことがありましたよね。確か2021年とかでしたっけ?
もともとは帽子のつばにネットプラスを使用していたが、リサイクル技術の向上によって、2021年からバギーズ・ショーツに使用して製品数を拡大。現在ではさまざまな製品に取り入れられている。
Logo|パタゴニアのメッセージを多様なグラフィックで伝える人気のロゴ製品
続いてはパタゴニアに欠かせないロゴ・カテゴリー。Tシャツだけでなくトートバッグやキャップもラインナップされ、毎シーズン、楽しみにしているファンも多い。
14.メンズ・アクアティック・アクション・オーガニック・Tシャツ ¥6,930 15.リサイクル・マーケット・トート ¥6,930
本橋: パタゴニアのデザイナーだけでなく、スポーツやトレイルランニング、サーフィンといろいろなスポーツに携わるアーティストがグラフィックを手がけているので、バラエティに富んでいます。これはCall to Action(行動を呼びかけよう)」シリーズのグラフィックで、「食物連鎖の下位にいる小魚を食べよう」というメッセージを描いています。
レトロ・ポップな作風の「Little Fish」は壁画アートの分野でも活躍するアメリカのアーティスト、ビル・レボルツ(Bill Rebholz)によるグラフィック。パタゴニアの缶詰がモチーフになっている。
16.メンズ・アクアティック・アクション・オーガニック・Tシャツ ¥6,930
本橋: これも同じシリーズでムール貝が描かれています。後でパタゴニア プロビジョンズのコーナーもご案内しますが、今季、新たなムール貝の缶詰が発売されるので、その製品とのつながりが描かれています。
ユーモラスなムール貝のイラストと“パタゴニア貝類愛好会”というクラシックな文字が目を引く「Shellfish Society」は、アメリカ・ミシガン州出身で現在はカリフォルニア在住のアーティスト、ニール・ヒューバート(Neil Hubert)が描いた。
17.メンズ・キャスティング・ロゴ・レスポンシビリティー ¥6,930
薬師神: 僕はこの釣り糸のシンプルなモチーフのプリントが気に入りました。グラフィックが目立つものよりも、着やすそうです。
本橋: シンプルなものが一番着やすいですからね。今シーズンはフィッシングがキャンペーンのメインになっているので、フィッシング関連のグラフィックも多くなっています。
18.ハイクアバイク・オーガニック・Tシャツ ¥6,930
瓜坂: 僕はコレです。色がよくて、柄がバックに大胆に入っていますが、溶け込んでいる感じが素敵です。花と自転車の車輪の柄ですね…よく見ると人もいる?
本橋: 「野花を踏まないように」というマウンテン・バイカーへのメッセージですね。
自然の中でのスポーツを称賛しつつ、自然を大切にするパタゴニアの基本理念を描いた「Hike-A-Bike」グラフィックは、パタゴニアのデザイナーによるものだ。Seabird Greyにラベンダーの配色がモダン。
ロゴ・カテゴリーとも関連のあるハット&キャップのコーナーへ。視線の先に帽子の並んだラックを見つけると薬師神がさっそく試着している。
19.ウェーブフェアラー・バケツ・ハット ¥7,260
薬師神: これ、オレンジ×白×グリーンの配色がネイビーに合いますね。
本橋: そのウェーブフェアラー・ハットはネットプラスの廃漁網のリサイクル・ナイロンを使った製品です。パタゴニアのキャップのツバの芯材も、すべてネットプラスです。
20.コーデュロイ・キャップ ¥6,930
瓜坂: 僕はこのコーデュロイのキャップ。パタゴニアのフィッツロイ・ロゴがモノトーンで入っていて…同色ロゴ、いいです。
21.コーデュロイ・キャップ ¥6,930
薬師神: キャップならさっき見つけたこの鳥のモチーフ。いい意味でパタゴニアっぽくなくて、コレ、好きです。
本橋: これはロゴ・カテゴリーのアイテムで、「Sunfirst」という木版画のイメージからインスピレーションを受けたグラフィックが特徴です。
タイポグラフィの分野でも活躍するアーティスト、ジェームス・コフマン(James Coffman)によるバード・モチーフ。彼は自然のモチーフをシンプルに描くことを得意としている。
22.ブリーズフェアラー・キャップ ¥6,050
瓜坂: さっき薬師神さんが気に入っていたグラフィックのキャップもありますね。全部メッシュです。
薬師神: 全部メッシュってなかなかないよね。
本橋: 釣りの場合、フードをかぶったりするので、総メッシュぐらいのほうが使いやすいというのがあって。
薬師神: 日差しだけ遮れればいいんだ。なるほど。
23.メンズ・キャプリーン・クール・デイリー・グラフィック・シャツ(ウォーターズ) ¥7,700
瓜坂: このTシャツたちは…?
本橋: パタゴニアのベースレイヤーとして欠かせない、キャプリーン・クールのTシャツです。
薬師神: 山崎が夏に愛用しているヤツですね。何でも酷暑はこれじゃないと乗り切れないとか…。この波のロゴ、いいですね。
本橋: 夏は暑すぎるので、毎日キャプリーン・クールとバギーズです。この組み合わせが夏は最高で。キャプリーン・クールは寝るときにも着ています。洗濯してもすぐ乾くし…。
瓜坂: 酷暑のときは、干さなくても着られるくらいですよね(笑)。
Patagonia Provisions|地球を修復するためにパタゴニアは食品をつくる
展示会の最後は地球を修復する食のコレクション、パタゴニア プロビジョンズのコーナー。今回は3月にミニサイズが発売される日本酒と、4月に発売されるムール貝の缶詰を使ったおつまみが並んだ。
24.(左)やまもり 2024(仁井田本家)720ml ¥2,420 25.(右)繁土 ハンド 2024(寺田本家)720ml ¥2,200 26.ムール貝・オリーブオイル漬 スパイシー(4月3日発売) ¥1,296
試食の前に「パタゴニアが農業や漁業に着手したのは、地球を修復するためなんです」と、パタゴニア プロビジョンズ ディレクターの近藤勝宏さんからの説明が。日本酒は土壌を修復するリジェネラティブ・オーガニック認証を目指す酒蔵でつくられていたり、ムール貝が植物プランクトンを食べて育ち、海洋生物のために水質を改善することなど、目からウロコのストーリーが。
薬師神: 仕事の都合上、日本酒のテイスティングができなくて残念ですが、ムール貝、おいしいです。
瓜坂: 辛みがいい感じに最後にきますね。パスタにからめたりして食べたいです!
日本酒は720mlボトルのラベルが刷新され、ミニボトルも3月6日に出るとのことで、花見シーズンのおともにもおすすめだ。
Activism|待ったなしの温暖化をストップするため気候変動に対しての取り組みを支援
会場の入り口には深刻化する気候変動へのアクティビズムについてのコーナーが設置され、前回と同じく、パタゴニア日本支社 環境社会部門の坪井夏希さんからお話が。
坪井: パタゴニアは「私たちは、故郷である地球を守るためにビジネスを営む」ことをミッション・ステートメントとして掲げています。現在、気候変動は深刻な状況にあり、このままのペースでCO₂の排出が続けば、約5年で取り返しのつかない状況に達すると言われています。そうなると、永久凍土が解けるなどの現象が起こりますが、それらの変化は一度起こると元に戻すことが非常に難しいため、とにかく時間がありません。
今回は中学生を含む全国の15~29歳の若者16人が、日本の主な火力発電事業者10社にCO₂の排出を削減することを求めて提訴した事案や、アウトドア業界が連帯してパリ協定の「1.5°C目標」を実現するための季候政策を求める提言書を提出した活動などをパネルで展示し、坪井さんが真摯に解説してくれた。店舗でもさまざまなアクションが展開されているので、ぜひ「自分事」として考えるきっかけにしてほしい。
初参加の瓜坂も真剣な顔で坪井さんの解説に耳を傾けた。ハイクオリティな製品をつくるだけでなく、いち早く環境活動にも取り組んできたレスポンシブル・カンパニー、パタゴニアのメッセージだからこそ響く。できることはある。まずは小さな一歩を踏み出したい。