2025年1月、UOMOは ‘25-26年秋冬のメンズ ファッション・ウィークを取材すべくパリへ。ファレルと盟友NIGOがタッグを組んだルイ・ヴィトン、キム・ジョーンズ最後のコレクションとなったディオールなど話題はつきなかったが、実はまだその後にも本命が残っていた。メンズ・ウィーク終了後、クチュール発表時期に独自にエクスクルーシブなメンズコレクションを発表したサンローランだ。
ショー開催は1月28日夜9時。会場はサンローランがパリでショーを行う際にはおなじみの旧証券取引所「ブルス・ドゥ・コメルス」。現在はフランソワ・ピノーが所有するプライベートコレクションを収蔵するアートスポットとなっている。
安藤忠雄が手掛けた円筒を模したコンクリートの空間に寄せ木細工の床が貼られ、巨大なシャンデリアが直接置かれるという舞台設定。開始時刻をやや過ぎた頃、シャンデリアが明滅して消え、一瞬の暗闇が訪れた直後にショーは始まった。
コレクションの主役となったのは、メゾンの伝統であるクラシックなワードローブだ。スクエアショルダーのジャケット、ダブルブレストのスーツ、エレガントなロング丈のコート。しかしクリエイティブ・ディレクターであるアンソニー・ヴァカレロは、それらに二元性というツイストを効かせる。その二元性を象徴するルックが、ボリュームのあるジャケット、スーツスタイルにウェーダーのようなレザーのサイハイブーツの組み合わせだ。
クラシックなジャケットとパンキッシュなブーツ。テイストの対比に加えて、テクスチャーにおいては豊かなドレープのあるウールと硬質なレザー。フォルムの面では、幅広で構築的なショルダーと円錐形のブーツ。両極にあるものの対比が生む心地よい違和感が、メゾンのコードに意外性をもたらす。
コントラストが生む違和感については、各ルックのスタイリングにも見て取れる。ぜひ真似したいと感じたのは、ジャケットの上からレザーブルゾンを羽織る着こなし。構築的なジャケットの硬さをふわっといなすテクニックは、日々のスタイルとして取り入れやすい。
より現実味のあるアプローチとして、ジャケットとタートルネックの組み合わせにもサンローランらしさが。茶系のクラシックなチェックに、オレンジやマスタード、ボルドー系など、ちょっといなたいウォームカラーのタートルを合わせたルックは、アクの強さが新鮮だ。
来場した多数のセレブリティの中でも、佇まいが抜群に洒落ていたのがシャルロット・ゲンズブール。ワイドなタキシードスーツの上からネイビーのボンバージャケットを羽織って、足元はローファイなホワイトスニーカー。コレクションでのレザーブルゾンとスーツの組み合わせにも通ずるスタイリングを、自分らしく「あえて適当に着ている」ムードが可愛い。
コレクションで発表されたルックの数々、スタイリングのアイデア、またそれを洒脱に着こなしている会場のファッションアイコンたち。今回のサンローランのショーはモデルだけでなく集まったゲストも含め、美しい服とどう向き合うか、そのアイデアにあふれる知的なコレクションだった。
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2025年ウィンター-メンズ-コレクション