会場となったのはトスカーナの自然に囲まれた工場、つまりクラフツマンシップの舞台裏。ユーティリティーとサルトリアルが絶妙な塩梅で交錯するコレクションに、フェンディのクオリティとウィットが象徴された。
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フィレンツェでミラノのファッションウィークに先んじて開かれる、展示会を中心とした「ピッティ・ウオモ」。第104回を迎えた今回のゲストブランドの一つは、フェンディだ。今回はフィレンツェ市内から車で30分強のバーニョ・ア・リーポリにできた、新しいレザーグッズ工場「フェンディ ファクトリー」のお披露目も兼ねている。丘陵地帯の風景を損なわないよう、フラットで横に伸びるようデザインされたモダンな建物に着くと、職人たちが最新の機械を操ったり手作業でステッチを施したり、と平常通りの作業に携わっていた。
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ひととおりファクトリー内を見学した後、通路に設置されたシートに着席したゲストたちが見守る中、ショーがスタート。ファーストルックではFENDIと読み取れるバッジと肩にかけた巻尺、段ボール箱風のトランクで、職人たちの聖地へのオマージュが顕著だ。
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その後はメンズウェアのベーシックアイテムがさまざまな解釈で登場。いずれもブルーやベージュ、キャメル、オフホワイトでシックにまとめられている。またエプロンや工具ポケットに象徴される“ユーティリティー”は遊び感たっぷりに、しかもシックに展開。全身を単一色の帆布でまとめたルックでは、服の構築性とディテールが際立った。

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メゾンの3代目、アーティスティック ディレクターのシルヴィア・フェンディは、ファクトリーの外観、設備すらもモチーフに取り込んだ。ルーフトップにも中庭にも無数のオリーブの木をはじめ地中海地方に特有な低木種が植樹されるなど、緑に囲まれた工場の様子はオリーブカラーのルックで表現。単一色でまとめたルックは数多く見られたが、ソフトテーラードからカジュアルまで、バリエーション豊かで見るものを飽きさせない。シルヴィアの手札の多さを、物語っている。
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もう一つのキーカラーは、ブルー。工場内で職人たちが纏っているユニフォームはベージュだが、ブルーと言えばワークウエアの象徴。長年の経験から揺るぎないカッティング技術をものにしているシルヴィアは、ひと捻りしたブルーの使い方を披露した。
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ファクトリーとクラフツマンシップを基本に幾つかの要素をオーガニックに発展させた中でも斬新だったのは、ホルターネックでベアバックのシャツ。アイテム自体はウィメンズからのインスピレーションにも思えるが、アームのラインはエプロンのシルエットにも呼応している。
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またシャツはさまざまなバリエーションで展開され、ボタンダウンはロールアップできるカフスでドレスダウン。一方メッシュ・ニットはロングドレスにも取り入れられたが、チュニック風に纏うことで、ジェンダーレス・アイテムをあくまでシックに装うという提案も新しい。
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ショーも終盤になると、ナチュラルカラーから一変して白またはオフホワイトと黒でまとめた、シャープで粋なルックが続く。中でもシルヴィアのクラフツマンシップへの敬意を明確に表現したのは、テーラリングの工程を見せるかのように、仕付け糸のハンドステッチを施したセットアップ。ステッチは同時にグラフィックな効果も演出している。
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特筆すべきは、このファクトリーがバッグを中心とするレザーグッズの工場であるからか、57ルックのいずれにもバッグが添えられたこと。中でもアイコニックな「ピーカブー」と「バゲット ソフト トランク」を和欄紙やシラカバ樹皮などを使って特別に開発した素材で進化させたのは、なんと日本が誇る建築家、隈研吾。彼とシルヴィアはフィールドは異なれど、ともにクラフツマンシップへのこだわりをシェアしている。残念ながら彼は今回のショーには不在だったが、シルヴィアはフィナーレにファクトリーの職人たちを従えて堂々とランウェイを歩いた。
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全ルックはこちらから。
Text:Minako Norimatsu