
五重塔とディオール!
2025年4月15日(火)、1946年に創業した仏・パリの老舗ラグジュアリーブランド「Dior(ディオール)」が、世界遺産として名高い京都・東寺の庭園にて、2025年フォールコレクションを発表。取材メディアほか国内外の豪華セレブリティが多数来場し、古都の夜をモードに彩った。

2017年春夏から(2016年7月就任)ウィメンズ クリエイティブ ディレクターを務めているマリア・グラツィア・キウリ(Maria Grazia Chiuri)が目指した今秋のデザインアプローチは、安易なオリエンタルなムードに寄らず、「ファッションと建築」の哲学的近似性に立ったものである。
公式リリースから一部を抜粋。今秋のファッションショーは、平安遷都から間もない796年に建立された東寺に着想を得つつ、「新しい解決策を示唆する対話への取り組み」としての位置付けである。「建物の本質は、その内部空間によって定義される」という建築原理をファッションに置き換え、「境界地帯において、慣習によって異なる様相を呈する身体と衣服の関係性」を問うたのだ。
ディオール2025年秋コレクション




和楽器が奏でられショーがスタート。
深淵なるファッション命題を体現する「ディオール」のため、東寺が幾世も垣間見てきた重厚な歴史に刹那のくさびが打たれた。古都の夜桜とラグジュアリーファッションの共振に酔いしれる。




途方もない問いかけ、それはすなわち、マリア・グラツィア・キウリが今秋に熟慮を重ねた「身体のための衣服」と「衣服のための身体」の相互依存の関係性に他ならない。「衣服が身体となる」という魂を巡る過程において、マリア・グラツィア・キウリは着物とテキスタイルが織り成す均衡を建築的センスの中に組み込むというメソッドで探求。
この作業で帰結した、身体を包み込むようなラインのジャケットやコート、艶やかに揺らめくワイドパンツとロングスカートは今秋のハイライトだ。
今秋の象徴、キモノジャケット




フローラルパターンや日本庭園のスケッチが施された極上のシルク生地のウェアのほか、メゾン創設者のムッシュ・ディオールの試みに比肩するアイコニックな「キモノジャケット」が登場。
1957年秋冬にて、ムッシュ・ディオールが着物の上から着られるようデザインした「ディオパルト(le Diorpaletot)」と「ディオコート(le Diorcoat)」の伝説的アーカイブを彷彿とさせる今秋の象徴だ。衣服を平面と立体で研究し、伝統衣料をモードに昇華させた逸品である。
ディオールと日本

ちなみに、メゾンと日本文化との蜜月はムッシュ・ディオールの幼少期まで遡り、コレクションの場に限定しても70年以上もの長きに渡る。有名なものでは、1952年秋冬の「クリスチャン ディオール-ニューヨーク」で発表された“トウキョウ”ドレス、翌年の1953年春夏オートクチュール コレクションでは桜の木に鳥が憩うモチーフ(Jardin Japonais / 日本庭園)をアンサンブルに採用、また翌秋冬には京都の龍村美術織物の生地を用いた「Utamaro(歌麿)」「Tokio(東京)」「Rashomon(羅生門)」のアンサンブルが発表されている。
なお、「ディオ―ル」は今回発表されたコレクションでも同様に龍村美術織物に生地を依頼。ムッシュ時代のコレクションで使用した生地を復刻するなど、龍村美術は実に3年も前から、この一夜のための制作を準備し始めていたという。

時間と国境を超越した文化の邂逅。1953年10月以来、72年振りとなる京都でのファッションショーは1200を数える春が通り過ぎた東寺にて。
ほんの二十数分のキャットウォークの間に桜が幾枚散ったことだろう。国内外から招待された取材メディアやセレブリティたちは、過ぎ行く春を惜しむかのように、万雷の拍手を贈っていた。
国内外から豪華ゲストが来場
Dior Fall 2025 Show
開催日:2025年4月15日(火)
開催場所:東寺(京都府京都市南区九条町1)