その名も「ARC’TERYX MUSEUM」。
アークテリクスの歴史や技術的なイノベーションがわかる体験型イベント「ARC’TERYX MUSEUM」が、原宿キャットストリートの6142 HARAJUKUで4月20日(土)からスタートした。UOMO編集部の薬師神が、プレビューでその全貌を明かす!
薬師神:「アークテリクス博物館」というコンセプトにふさわしいイベントでした!
ENTRANCE|LEAVE IT BETTER この世界を、より美しく。
表参道からキャットストリートに入って3分ほど歩くと、右手に「ARC’TERYX MUSEUM」の大きな文字が表れる。そこが会場。外からはカラフルなアークテリクスのジャケットなどの陳列が見えるが、入口は右側のドア。
中に入ると正面に今回のイベントを通してアークテリクスが伝えたい、ブランドパーパス「LEAVE IT BETTER(この世界を、より美しく)」についていのストーリーが。
このイベントはまずエレベーターで3階に上がって、2階、1階と降りてくる順路。エレベーターホールには、アークテリクスの本社がカナダ西部のバンクーバー、コースト山脈のふもとにあることを示す地形図の展示が。
1時間もあればすぐに登山が楽しめる環境にアークテリクスのデザインセンターがあるということが、ブランドにとっていかに重要かを可視化した。地図中には主要な山々の名前も記されている。
3F|Who We Are. [Introduction / Theater] アークテリクスを知るための動画を鑑賞
エレベーターを降りると、そこは縦型のモニターが3つ並んだ空間。モニターには西暦年、重さ、幅などを表す数字が表れては消えていく。
3つのモニターはハーネス、BORA バックパック、アルファ SV ジャケットと振り分けられており、それぞれのアイテムの誕生年やイノベーティブなできごとを数字で表現。
薄暗い空間に目が慣れると、柱にアークテリクスのジャケットなどがクライミングロープで巻き付けられていることに気づく。廃棄される予定だった製品(アークテリクスの基準をクリアしなかったB級品など)を再利用している。ARC’TERYX MUSEUMで伝えたいメッセージのひとつ、「Re(再生)」が会場の随所にちりばめられている。
1分半ほどの動画を3本見た後に、次の部屋へ移動。
ここではアークテリクスの創成期から現在に至るまでの歴史や、ブランドの世界観を凝縮した5分ほどの映像を鑑賞。
アークテリクスのデザイナーなどが登場し、つくったらすぐに過酷なコースト山脈でフィールドテストができることが、ブランドを成長させたとコメント。さらにアークテリクス製品を生産するマザー工場、ARC'One(アークワン)を筆頭とする提携工場やプロダクトを使用するカナダのノースショアレスキュー隊員の紹介も。
薬師神:バンクーバーの自社工場(ARC'One)と同じような近代的な工場が、アジア各地にあるんですね。
動画を見た後は階段で2階へ。通路の壁には、縦型モニターに映し出されていた言葉や数字が。
たとえばこの「708g to 485g」はアルファ SV ジャケットが登場したときの重さと現行モデルの重さ。1998年に登場して以来、随時アップデートされてきたが、その間に223g軽量化したことを示す。
2F|Product Innovation [Exhibition] 主要3製品の進化の過程をたどる
2階ではアークテリクスがスタートするきっかけになったハーネス、その手法を応用したBORA バックパック、そしてアウターウェアの礎となったアルファ SV ジャケットの歴史とイノベーションの変遷にフォーカス。
歴史をたどる構成で、まずハーネスからスタート。壁面にはハーネスが地元のクライマーに人気を博したことや、クライミングマガジンで高評価された経緯が画像資料とともに紹介されている。
ハーネスの開発の様子を見せるスクリーンの前には、1992年に登場しハーネスの常識を覆したVAPOR(ヴェイパー)ハーネスが。熱成型フォームを使用するアークテリクス製品の原点としてフィーチャー。
アークテリクスでは2020年にアーカイビストが誕生し、アーカイブの整理保存に本格的に乗り出している。今回のセレプションにはその発案者、Darren Ritten(ダレン・リッテン)氏が来場。本国から提供されたアーカイブにはこのようなペーパータグが付く。
アークテリクスは1989年にROCK SOLID(ロックソリッド)社としてスタートし、1991年に社名をアークテリクスと変えている。このハーネスは始祖鳥ロゴが表面にあしらわれているが、裏面のブランドタグには「ROCK SOLID MANUFACTURING」と書かれているのが感慨深い。
次はハーネスに続いてアークテリクスがヒットを飛ばしたBORA バックパックのコーナー。1994年に登場した初代モデルは中央の台に。
VAPORハーネスで採用した熟成型の3Dフォームをバックパネル・ショルダー・ヒップベルト部分に使用して、吸い付くような背負い心地を実現したBORA バックパック。その背面の変化や変遷がわかるように展示されている。
バックパックコーナーには実際にBORA バックパックを背負って荷重の分散を体験できる一角も。
薬師神:おもりが入ったBORA バックパックを手で持ったときはかなり重く感じましたが、ウエストでベルトをアジャストしてしっかり背負うと、びっくりするほど重さを感じない!
2階の最後のコーナーはアークテリクスのハードシェルジャケットを代表するアルファ SV ジャケット。中央の台には1998年に誕生した初代モデルが。後ろのスクリーンには、社運を賭けたゴア社との提携の秘話が映し出される。
壁面にはアルファ SV ジャケットの細かい変遷が描かれ、変化を象徴する4体を展示。アークテリクスがYKKに持ち込んだアイデアから誕生したWater Tight™ファスナーが採用され、初期モデルにあったフラップを廃止した2002年モデルと、最軽量の485gを実現した2023年モデルが両端に。
対面にもフードの改良やGORE-TEX素材のサステナブル化、シームテープが19mmから8mmへと進化した様子を比較する展示が。
止水ファスナーの変遷がひと目でわかるように並べた展示もあり、アークテリクスの進化を詳細に知ることができる。
2階から1階への階段はバンクーバーの森の風景がプリントされたガラス壁で、開放的なムード。降りる途中から1階のひろびろとしたスペースが目に飛び込んでくる。
1F|ARC’HIVES [Community Archive Collection] ストーリーのある愛用品が100点以上
1階は日本全国のアークテリクス・コミュニティから集めた個人の愛用品を展示。アークテリクスが日本に上陸した1990年代から最近のものまで、その数なんと100点以上!
今回のプロジェクトには山岳ガイドやテレマークスキーヤーなど山と相対する職業から、専門ライター、アークテリスク所縁のディーラー、そして一般ユーザーまで、多様な人々が参加。今年の1月から応募して、選ばれたものがここに展示されている。
ファッションユーザーにはあまりイメージのないグローブのようなプロダクトもこの通り。それぞれのアイテムに所有者のストーリーがあり、データ部分にはさわりだけが紹介されている。その横のQRコードを読み込めば、全文を見ることができる。
気になるアイテムのストーリーをQRコードを読み込んで、確認しながら展示を見る薬師神。
薬師神:ヘリで遭難救助されたときに着ていた、なんてヘビーなエピソードは迫力がありますね。自分が知っているファッション業界の人の“おしゃれ目線”のエピソードに共感したり、ついつい長居してしまいました。
展示の中には日本では発売されていない「ReCUT(リカット)」という、廃棄される製品を再利用した北米だけで展開される限定プロダクトも。
フロアの奥にはLibraryとして、今回のARC’HIVESを一冊にまとめたブックも展示。棚にはGORE-TEX製カバーに入ったブックと、2014年からの日本の製品カタログが並ぶ。
箱型のカバーのファスナーを開けると中に「ARC’HIVES」の分厚いブックが収納されていて、自由に閲覧できるようになっている。
薬師神:これは今回の製品を提供してくれた人に贈られるスペシャル・アイテムだそうです。なんだかうらやましいですね。
WORKSHOP|ReBIRD™/NewMake コラボレーション 廃棄物を利用してネームタグやポーチを作る
最後はアークテリクスが推進する循環プログラム「ReBIRD™」と連動したワークショップのコーナー。
今回のワークショップでは、廃棄される予定だった製品のテキスタイルを再利用して、オリジナルのネームタグやポケットポーチを作ることができる。このワークショップは、アップサイクルを通して、新たな価値を生み出す活動を行うコミュニティ、「NewMake」とのコラボレーションで実現した。
実際のプロセスを紹介すべく、ネームタグ作りに薬師神が挑戦。
まずはハギレの中から無地とARC’TERYX MUSEUMのロゴがスタンプされたものを、好みの組み合わせで2~3枚選ぶ。薬師神はいつも通りのネイビーと、クリーンなホワイトをチョイス。
なお期間中は生地のカットやARC'TERYX MUSEUMロゴの熱転写なども体験できる。
次にパンチングを使って、ネームタグ用のリングを通す穴を開ける。
薬師神:(ギュッとハンドルを握るが)ムムム…開かない…。
アウトドアには縁のない文化系の薬師神だが、アークテリクスのテキスタイルのタフさを体験することになった。
穴が開いたらハトメを通して木槌で平になるように叩き、リングを通してオリジナルのネームタグが完成。
この部屋の壁には、34点のジャケットと5点のパンツを再利用してバンクーバーの景色が描かれていた。端には「Re」と大きなバードロゴがあしらわれ、記念撮影にも最高のスポットに。
ワークショップは当日会場にて予約が必要。
ネームタグワークショップ(所要時間30分程度)実施日:4/20~29、5/2
ポケットポーチワークショップ(所要時間90分程度)実施日:4/22、30.5/1~5
STAFF T-shirt|ARC’TERYX MUSEUM Uniform バックプリントがスタイリッシュ
会場のスタッフがユニフォームとして着ていたTシャツがめちゃくちゃおしゃれで、どこかで買えるのか? 尋ねてみた。
薬師神:残念ながら今回のARC’TERYX MUSEUMは物販はなく、Tシャツは非売品とのことです…。
ワークショップのほかにもARC’TERYX MUSEUM会期中にはさまざまなスペシャルコンテンツが用意されているそうだ。公式サイトをチェックして、気になるイベントにはぜひとも参加してほしい。
開催概要|ARC’TERYX MUSEUM
開催日時 :2024年4月20日(土)~ 5月5日(日)11:00~19:00
開催場所 :東京都渋谷区神宮前6-14-2(キャットストリート沿い)
詳細URL :https://museum.arcteryx.jp/
入場料金 :無料