肩パッドシャツに白いデニムのバギーパンツ。大胆なペイントスニーカーに大型サングラス。今回は大胆なシルエットに挑戦してみた。これにマスクとフェイスシールドを合わせると、ニューノーマルも結構楽しいかも、と思える。この時期は足が蒸れやすく靴にニオイもこもる。脱いだ靴の脱臭乾燥に効果大のアイテムも発見。入れておくだけで、思わずニヤリの秀作です。
山本寛斎さんの訃報に触れ、昔のことを思い出した。1982年、当時高校3年生だった僕は、同級生と一緒に寛斎さんの服を買った。そのとき、店でもらった小冊子には、寛斎さんのそれまでのヒストリーが書かれていた。内容はおぼろげにしか覚えていないが、装苑賞を目指していた頃の葛藤、ロンドンとパリを巡る旅に出たらロンドンでは歓迎されパリでは非難を受けたこと、デヴィッド・ボウイのステージ衣装を作って、それを客席側から見たときの感動…などなど、そこには寛斎さんの情熱的な生き様がつぶさに詰まっていた。当時17歳だった僕は、洋服を着ることへの興味だけは人一倍あったが、自分がこれから何をしていけばいいのか、将来に対しては漠然とした考えしかなかった。そんなときに出会ったこの小冊子は、僕にその後の指針となるものを与えてくれた。「素直に“服が好き”という気持ちがあれば、それだけでやっていける」と思わせてくれたのだ。この貴重なメッセージは、今も僕の背中を押してくれたものとして心の中に生きている。今、あらためて寛斎さんに畏敬の念を覚える。感謝しかない。
高校の卒業アルバムにはそのときに買った服を着て写っている。どんな服かというと、浮世絵と漢字が混在したポップなグラフィックが胸にプリントされたロングスリーブシャツ。確かメンズラインはなかった頃なので、ウィメンズかユニセックスだったかをジャストサイズで着ている。それにオランダ製の後染めデニムを合わせていた。いかにもアーリー’80sらしい。
そんなこんなで、ずっと服好き人生を続けられているのは本当に幸せなことだと思う。が、今やコロナによってファッション業界も前代未聞の危機に直面している。「ピンチはチャンス」とか「変革の時」などと言うのは簡単だが、命が脅かされる事態となれば、ファッションも他業種同様、成り立たなくなるのは自明の理だ。しかし僕は今でも、ファッションは人間に夢や希望を与えてくれるものだと信じている。歌やアートがそうであるように、服にもそんな力があるはずだ。
今回のイラストのルックで最も気に入ってるのは、肩パッド入りのロングスリーブシャツ。パッドは薄めだが、着ればしっかり垂直肩になる。コンケーブドショルダー(少しいかり肩)のジャケットを着ることはよくあるが、カジュアルなロングスリーブシャツの肩パッド入りというのは初体験だ。着心地はお気楽なのに、見た目はドレス仕様というのがいい。これはヤンチェ_オンテンバールのもので、フミエタナカとの共作。長袖のラインが、提灯袖を長くしたようになっているのが面白い。太いデニムパンツとスニーカーも、同じくヤンチェ_オンテンバール。パンツはエドウイン、スニーカーはアシックスとの共作だ。スニーカーには香取慎吾さんの絵が大胆に描かれている。サングラスはロエベのもの。
先日、このサングラスをかけて先輩と喫茶店で待ち合わせた。僕的には普通にスルーされると思っていたが、先輩に「ぶっ飛んだん、かけとるな〜」と言われていささか残念だった。新しい服や小物は積極的に身につけたい。でもその姿は普通に見られたい。それが僕のスタイリングのこだわりだが、先輩にはそう見えなかったようだ。
世の中の常識は、日々少しずつ変わるものだが、コロナ禍の今後はどうなるだろう。どんなときもファッションに希望や夢がもてる時代であってほしいと願うばかりだ。
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa