夏といえばTシャツだ。今年もアーティストTシャツが面白い。JWアンダーソンやグッチ、ソロイスト. 等々、ブランドの思いが凝縮されているのが楽しい。僕が買ったのは、インパクトのある絵柄中心。サイズは肩が落ちるような大きめが気分。合わせるのはジャージーやウールのスラックス。で、デニムを合わせる場合は断固革靴なのだ。
先日、テレビで白いTシャツを紹介する番組を見た。長年こだわりの白Tを着てきた中年男が、自ら白Tをレコメンドするコーナー。話題の店の、話題の白Tを紹介していた。白Tといえば、かつてはモテ男のマストアイテムだった気がするが、番組に登場した彼は、エアガンマニア的なオーラを放っていた。毎日毎日白Tを着ている中年男を、女たちは「爽やかで素敵」と思うのだろうか。
僕はといえば、今も昔も「モテたい」と思って白Tを着たことはない。この業界に入った’80年代中頃、ルンルンな20歳前後の女子に男性ファッションの取材をすると、みんなあれこれ好き勝手なことを言った後に「結局、白いTシャツにブルージーンズが似合う男の子が好き」と、判で押したようにおたんこなすな答えを返してきた。
心の中で「まったく時間の無駄やな」と思い、かつ「ばかやろう」と叫び、同時に「それが現実か〜」と感じてもいた。その頃の僕のファッションは、全身コム デ ギャルソン・オム プリュス。そして今や、爽やかなイケメン男子じゃなくても、白Tについてテレビでオタッキーに語る時代がきたのだ。僕は感慨にふけりながら、好物のグアバアイスを頰張った。
この夏、僕は白Tとは無縁だ。4年前にはヴァレンティノの白Tにはまり、これぞ新時代のドレスTだと、いろんな媒体で吠えた。が、今やその形&素材感に似せたものが出すぎて冷めた。ヴァレンティノのドレスTは大切に保管してあるが、今季は着ない。
今年は、去年に引き続きアーティストTを数枚購入。イラストで紹介しているのは、ギルバート&ジョージの作品がプリントされたJWアンダーソンのTシャツ。ギルバート&ジョージといえば、必ず二人してメイフェア的なスーツ姿、というのが定番だが、そんな彼らのコンテンポラリーな作品を、カジュアルにTシャツとして着られるのが面白い。
首に掛けているのはヘッドフォン型携帯扇風機。6月のパリコレを見に行くときに手に入れた。コレクション会場は熱気で暑さが倍増するので、それをしのぐのに重宝した。パンツはキャバンのイージーパンツ。ベルトいらずでTシャツの裾をアウトして着る際に腹部が膨らまないのがいい。
靴は’90年代中盤に気に入っていたシルヴァノ・マッツァ。あれこれ購入してよく履いていたし、仕事でも多用していた。イラストで履いているのは、デザイナーにインタビューをしたときにプレゼントされたUチップ。一度も履いていなかったけど、最近部屋を改装したときに発見。まったく劣化していないことに感動して、ヘビロテ中である。
グッチのマスクTは超ヘビーウエイト。先日、香取慎吾さんと一緒にやっているヤンチェ_オンテンバールのミーティングに着ていったら、慎吾ちゃんが「それ、買ったんだ。やっぱりラグジュアリーブランドのTシャツは、大人が一枚で着られるようになっているね〜」とつぶやいた。慎吾ちゃんもプライべートではグッチやバレンシアガのTシャツを着ている。
そういうTシャツは高価だけど、確かに大人が一枚で着られる。ドレスコードがうるさい席でも通用しそうなくらい、素材、デザイン、作りがいい。ソロイスト.のチャールズ・ピーターソンのフォトTは、グランジフィーリングが詰まったクールな一枚。スーツスラックスと合わせてヘビーローテーションで活用中。靴はジャックパーセルを合わせます。
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa