2019.12.01
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.66 マノロ ブラニクの「マノロ」|2019年9月号掲載

パリコレへは新しい服を着て行きたい。そう思ってまず購入したのはマノロ ブラニク。表参道店で白×黒のコンビ靴を入手した。さて、白×黒のコンビに合う服は何だろう? 僕はその靴に合うセットアップを探し求めた。暑いパリでも爽やかに過ごせる服はどこに? たどり着いたのはスーパー エー マーケット。僕は涼しげなセットアップを手に入れた。

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6月下旬のパリコレに出発する直前、僕は「涼しい服」を探していた。結局気に入ったのは、メゾン マルジェラの黒い襟なしジャケット&パンツ。見た目は暑そうだが、袖以外は一枚仕立てで、背中からジワッとくる暑苦しさはない。風になびきそうな軽い素材もいい。パリは日なたと日陰の温度差が激しいので、フロントボタンがないデザインは着脱しやすくて便利なのだ。



そもそも、今回セットアップが欲しくなった理由は、マノロ ブラニクの「マノロ」(コンビ靴のモデル名)に合う服はノーカラージャケットだと思えたからだ。表参道にマノロ ブラニクの新しいショップがオープンしたが、そのレセプションで見たマノロのメンズコレクションは僕のハートを瞬時に射ぬいた。



昨年観た映画『トカゲに靴を作った少年』や、20年ほど前に読んだ加藤和彦氏のエッセイに出てきたマノロ・ブラニクのライフスタイルに、僕は並々ならぬ興味をもっていた。そのマノロのメンズが日本に初上陸したのである。中でも「マノロ」はレセプションで見てひと目惚れ。「早く行かないと売り切れて後悔する」と焦りつつ、オープンから2週間後にようやくショップで試着。なんとか僕のサイズもあってほっとした。



驚いたのは、レースアップ部分がぴったり閉じること。ひもの下からシュータンがのぞかない。これは、甲高の僕にとって極めて珍しいことだ。まさかマノロの靴でこんなうれしい体験ができるとは! 長年悩みだった「甲高問題」が一気に解決した。しかしなぜ?? もしや、マノロ・ブラニク本人も甲が高い???



そして、ノーカラージャケットを買ったのは今回が初めてだ。前ボタンもないし、通常のジャケット&パンツのセットアップとはインナーの見え方が大きく違う。さて、何を合わせればいいのだろうか? セットアップはスーパー エー マーケットで購入し、同じときにJ.W.アンダーソンのギルバート&ジョージTやソロイスト.のチャールズ・ピーターソンのフォトTも購入したのだが、それらとマルジェラのセットアップはどうもうまく合わなかった。マノロともけんかした。



どうしたものかと思っていたら、彼女が「ボーダーがいいんじゃない?」とポロリ。ボーダー…? 10年以上着ていない。最後に着たのは確かエディ・スリマン時代のディオール・オムだ。でも、確かにボーダーTはマノロにもメゾン マルジェラのセットアップとも合いそうだ。出発を翌日に控えた僕は、大急ぎで無印のボーダーTを4枚大人買い。杢グレー×ネイビーはサイズ違いで2枚買い、ジャケットのインナーとしてはMを、一枚で着るときはLを着ることにした。



映画『トカゲに靴を作った少年』の中で、マノロ・ブラニクとジョン・ガリアーノが談笑するシーンがある。1994年にパリのシュルンベルジェ邸で行われたジョン・ガリアーノのショーでの一コマだ。そのショーで、息をのむほど美しいコレクションピースの足元を飾ったのはすべてマノロ ブラニクの靴だった。思えば今回のメゾン マルジェラのセットアップはガリアーノ作。マノロの靴が合って当然である。自信がもてる格好でパリコレ巡りができてよかった。



パリ歩きで汚れたマノロは、帰国早々「ザウェイ シングス ゴー」の石見豪さんの元へ。シャインシャインに甦って僕の元へと帰ってきたのであった。



(左)メゾン マルジェラのノーカラージャケットは、カーディガン感覚で着られる軽さをもちながらドレッシーにも着こなせる。色違いでネイビーも欲しくなってきた。(中)マノロ ブラニクの「マノロ」は面構えが超セクシー。スーツを合わせてドレスダウン、ジーンズを合わせてドレスアップ。多面的な魅力が持ち味。(右)無印良品のボーダーT。ボーダーの太さ、首まわりのリブ、裾幅、そして素材感。バランスがよくて合わせやすい。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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