2019.11.24
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.64 グッチのブレザーとマイ・ヴィンテージの服|2019年7月号掲載

20年ほど前、某誌で連載ページをもっていた。そのページでは、知られざる東京の地を訪ね、そこでファッション撮影をし、その写真とともにその地にまつわる僕のエッセーを載せていた。僕はよく、「懐かしいが新しい」と書いたものだ。そして今、僕は33年間に購入した服を眺めて新しい服と合わせるのが楽しみになってきた。まさにテーマは「懐かしいが新しい」なのである。

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.64 グの画像_1

先日取材を受けていたら、「マイ・ヴィンテージ」という言葉が自然と口をついて出た。それは何かといえば、僕が東京に来てからの33年間に着てきた服や小物で、今も保管しているものを指す。取材相手は言葉の意味を理解していたようで、解説をつけることなく話は進んだ。



そのとき履いていたシルヴァノ・マッツァの靴は20年前に購入したものだった。「マイ・ヴィンテージ」という言葉は、そんなひと昔前の服と今の服とを混ぜて着る機会が増えた、という話をするために出てきたワード。これまでも古い服と最近の服を一緒に着ることは多かったが、20年前のアイテムを持ち出すことは稀だった。が、最近は10年前のベルト、20年前の靴、いつのだかわからないくらい古いネクタイ…などを合わせることが楽しい。



そもそも僕は昔から古着にはあまり興味がなかった。デニムやライダースなどのヴィンテージは数点持っているが、基本的に眺めるだけで着ない。でも自分が昔着ていたもの、すなわち「マイ・ヴィンテージ」に関しては積極的に着るようになってきた。ほとんどがデザイナーズブランドだが、’80年代後半から’90年代中盤あたりの服は、今合わせると面白くなるものが多い。



この日も、靴は20年前のシルヴァノ・マッツァ。ボリュームのあるトウとダブルソールが今の気分にフィットする。足は小さく見えるより大きく見えたほうが落ち着く。多分、無意識のうちに顔の大きさとバランスをとっているのだ。なんといっても僕は「顔デカめ」ですから。



蛍光オレンジのパンツは、10年ほど前のジル サンダー。当時はラフ・シモンズがクリエイティブディレクターだった。彼がピッティ・ウオモの招待デザイナーとしてコレクションを発表したときのものである。短めの丈が懐かしい。それに着丈長めのネイビーブレザーを合わせた。これは今季のグッチ。背中のシャトー・マーモントのロゴにシビれました。



以前、『祐真朋樹の密かな愉しみ』の中で、こんなことを書いた。「僕の人生の節目というか、一定の周期でネイビーブレザーを着るときがやってくる。年齢でいえば16、23、33、46…」。僕は今、54歳でこのネイビーブレザーに恋をしている。



胸ポケットにあるエンブレムは気恥ずかしくて躊躇しかけたが、背中の派手さに比べたら照れてる意味がわからない。肩幅や胴回りは狭く、ベントもなし。細長い筒のようなシルエットは動きやすくはなく、むしろ不機能的。でも、だから好き。不機能美を極めたいと思う。



インナーにはブルックス ブラザーズのオックスフォードボタンダウンシャツを合わせた。ネイビーブレザーとくればこれが王道。このシャツは代官山の「ジャーニー」で買いました。大柄のタイは’60年代のもので、25年前に購入したマイ・ヴィンテージ。往年のテレビキャスターをイメージしたインパクトのあるタイである。この日は「Web Magazine OPENERS」でスタイリストの馬場圭介さんと対談の予定が入っていたので、つい気合が入って濃い組み合わせになった。



マイ・ヴィンテージを使った温故知新な組み合わせは、常に「少し変」になるところが好き。古い服は着るより眺めることのほうが多かったが、これからはどんどん着ることにしよう。服はやっぱり「着てなんぼ」である。家の近所のバーで会った服バカ京都人の後輩も言っていた。「スケさん、服なんて着てなんぼですから」。



(左)ブルックス ブラザーズのボタンダウンシャツはメイドインUSA。シャトー・マーモントなネイビーブレザーに合わせたかった! (中)スリッパ。改装が終わったわが家で、最近はこれ履いてます。フィット感が素晴らしく超快適。色&デザインもナイス。興味がある人は「63ロクサン レザースリッパ」で検索を。(右)グッチのネイビーブレザー! 背中はこうなってます。ジャーン!
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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