2019.11.03
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.50 バレンシアガのトリプルS|2018年5月号掲載

トリプルSを履くのが楽しくて仕方ない。気づけばほぼ毎日履いているという状況だ。そして今回、それに合わせる超ビッグサイズのバレンシアガのロゴ入りシャツを入手。本当にデカくて、’90年代に流行ったラルフ ローレンのビッグポロを思い出した。ビッグロゴの服を着るのは実に約40年ぶり。BIGIのスウェットシャツ以来である。

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最近は毎日バレンシアガのトリプルSを履いている。先日ニューヨークへ出かけたときも、トリプルSを履いていた。



羽田から出発する飛行機が予定より7時間も遅れたおかげで、JFKでの入国審査はいつもよりすいていた。ほかのエアラインと到着がかぶらなかったからだと思う。ラッキー! 速やかに入国審査を終わらせ、トランクをピックアップ。



出口に向かうと、待ち構えていた荷物検査の係員2名(ブラザー風)が検査そっちのけで「おまえのスニーカー、どこの?」と聞いてきた。そのときの雰囲気はといえば「よう! そのスニーカー、クールだぜ! チェケラッチョ」という感じ。



僕は「バレンシアガや」ととっさに関西弁(横山やっさん風)で返した。二人は「Ohhhhh〜!」と叫んで上半身を後ろへ反らし、一人が僕が渡したばかりの荷物検査表を握った右手で「行け」というゼスチャーをした。へこんでしまったリモワのトパーズを両手で押しながら、僕は心の中で「トリプルSはネタになるなー」と思い、出口へ向かった。



その1週間後、東京・銀座のドーバー ストリート マーケットにいたら、突然一人の男性に話しかけられた。「いつもUOMO読んでますよ」。僕が「ありがとう」と答えると、彼は「本当に履いているんですね、トリプルS」と言った。「はい」と答えながら、「僕は噓はつかんよ」と心の中でつぶやいた。



同じ日、今度は青山にある某ラグジュアリーブランドのショップスタッフに「祐真さん、ぽくないスニーカー履いていますね?」と言われた。一拍おいて、「僕は53年、“ぽくなく”生きていますから」と返した。正直、何が自分っぽいのかがわからない。今、何が面白くて、何が格好いいのか。毎日それだけを考えている。



でも周りに「ぽくない格好」と言われるときというのは、自分のファッションに変化があったときなんだろうと思う。これまで、そんなことを数えきれないくらい経験してきた。それは僕にとっていわば脱皮のようなもので、ひと皮むけて一歩進化したのだと思うことにしている。



バレンシアガのトリプルSは、これを履くだけで全体の雰囲気をガラリと変えるパワーをもっている。先日は、撮影現場で巨匠カメラマンに「祐真さん、背が伸びた?」と聞かれた。53歳で背が伸びるわけはないが、トリプルSを履くと背も高くなる。だから、見るほうの視界も変わるということだ。



最初は、何と合わせて履こうかと迷っていたが、最近は結局、何にでも合わせて履いている。いちばん気に入っているのは、トム フォードのブーツカット(1年前のモデル)との組み合わせ。エレガントなムードになるのがいい。



今季のグッチのフレアパンツと合わせるのも好きだ。この場合はファンキーな印象になる。外ロケのときなどは、細身のジーンズやストレートのスラックスとも合わせている。が、なぜかスーツにはまだ合わせていない。半年前にダンヒルでフレアパンツのスーツをオーダーしたので、それが完成したら組み合わせる予定。



トリプルSは僕にとって代打逆転サヨナラ満塁ホームランのようなアイテムだ。大げさに聞こえるかもしれないが、場の雰囲気までも変えてしまう。トリプルSの登場で、ラグジュアリーブランドスニーカーの新時代が到来したのだ。スポーツブランドのスニーカーにもショックを与えるに違いない。僕はこの先当分、トリプルSに狂い続けること間違いなし!



(左)バレンシアガのシャツは、サイズ表記41。裾のドローストリングをギュッと締めるとバルーンシルエットに。ひもをゆるめればダラーンと長め。いろんな着方ができる。どんな着方でも、絶対トリプルSを合わせることになるはず。(中)黒一色のトリプルS。ダークネイビーのダンヒルのスーツ(ビスポーク)に合わせる予定。(右)ヴェトモンのレインコート。最近、ロゴものが新鮮に感じる。雨の日が待ち遠しい。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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