2019.11.03
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.49 ラフ・シモンズのポートレートT|2018年4月号掲載

ラフ・シモンズがプリントされた長袖Tシャツ。それに合わせたのは、彼がディレクターを務めるカルバン・クラインのらくちんなパンツ。そしてスニーカーはバレンシアガのトリプルS。Tシャツの下にはタートルネック、が基本です。撮影現場ではこういう格好が動きやすくて最高。でもこういうスタイルのときって、いつもソックス選びが悩みどころなんだよな。

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もうずいぶん前の話になってしまったが、年末年始は東京で過ごした。久しぶりの東京の休日だったので、年末は映画を3本観てルミネtheよしもとにも行き、年明けには新橋演舞場で新春歌舞伎を鑑賞。池袋・新宿・新橋と、普段は行かない街をぶらぶらしていた。特に池袋を散策したのは実に25年ぶり。東京に住んで32年になるが、僕にとって池袋はヘタな外国よりも遠い地に思える。



池袋には何をしに行ったかと言うと、ロサ会館で映画『イット』を観るためだった。公開からずいぶん時間がたっていたので、池袋でしか観られなかったのだ。開演1時間前に着いてしまったので、周辺を歩いてみた。と、映画館の隣のビルの看板が気にかかり、思わずその最上階のタイ式マッサージ店に入ってしまった。



看板には「30分から」とあったが、店内のメニューボードには「60分〜」。ええっ、映画が始まってしまうやん、と思いながら「下の看板には30分から、って書いてあったよ!」とタイ人の女性スタッフに訴えたら、「30分でもOKよ」とすんなり。一瞬でも熱くなった自分が恥ずかしかった。僕はまだまだ未熟です。…って、50を過ぎたおっさんが言う言葉じゃないけどね。



で、僕は怪しい雰囲気の廊下を歩き、カーテンで仕切られた部屋に案内され、施術開始。期待していなかったせいもあって、その技術に感動した。ツボにググッと入る力強い指が超絶快感。映画前の思わぬリフレッシュメントとなった。



同じ日に新宿で観た『マノロ・ブラニクトカゲに靴を作った少年』は、おしゃれなマノロ・ブラニクのドキュメンタリー。マノロが飛び抜けたセンスの持ち主であるということは、昔読んだ加藤和彦さんのエッセイにも書いてあった。



確か、「いかなる状況でも、マノロ・ブラニクだけは流行と関係ないような服を着ている。が、それがとびきり格好いい」というような内容だったと思う。流行に惑わされず、自分の確固たるスタイルをもつのは簡単ではない。僕は仕事柄、流行に惑わされず、というわけにはいかないが、マノロのような生き方にも深く憧れているのであります。



新橋演舞場の新春歌舞伎では、中村獅童、市川海老蔵、市川右團次の豪華な顔ぶれを堪能した。年明けに歌舞伎を観るのは初体験。正月に歌舞伎っていいもんだなあ、としみじみ思った。正月と歌舞伎、二つのめでたさが重なって、こちらの気持ちも前向きになる。



ルミネtheよしもとへはウーマンラッシュアワーほかの漫才を観に。ウーマン村本氏のしゃべりには恐れ入ったが、しゃべり以上に彼がロエベの犬Tシャツを着ていたのがうれしかった。面白い人がおしゃれだと最高だ。



アーティストは着る物に気を配るべきだと思う。最近、天才棋士・藤井聡太少年が「ドルチェ&ガッバーナとアン ドゥムルメステールに興味がある」と言っていたと人から聞いた。この先ますます注目を浴びる彼の格好がどんなふうに変化していくのか、とても楽しみだ。



今回のイラストは、うちの近所の店「JOHN」で買った、ラフ・シモンズのポートレートがプリントされたTシャツをメインにコーディネートしたもの。バレンシアガのスニーカーは前号でも紹介したけど、履けば履くほど癖になる。背が若干高くなるのも視界が開けてよし。



(左)トラディショナル ウェザーウェアの折りたたみジャンプ傘。軽量&コンパクトで旅向き。折りたたみ傘は持たない主義だが、パリコレ期間中、毎日雨との予報を見て購入。(中)ラフのポートレートは、彼がディオールのディレクターに就任した頃のもの。(右)グッチのエンブロイダリーブーツは仕事で使って自分も欲しくなってゲット。人気商品なので、取り寄せてもらって手元に届くまで3日かかった。最近、毎月グッチを買っている。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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