夏用にジャックパーセルを新調。シャープから出たクリーニング機は、スタイリストの新たな必需品に決定。ルブタンのストレートチップは、レッドソールが魅力な勝負靴。早く来い来いゴールデンウイーク!
3月は新しい仕事が重なり、その絡みでファストファッションの店へ足しげく通う日々が続いた。僕はこれまでそういうショップをきちんと見たことがなかったので、いろいろと学ぶことが多かった。どこも同じようなものだと思っていたのだが、実はそれぞれ、ブランドによって微妙に価格設定が違っているのだとわかった。それぞれがコンペティターだと思っていたが、マーケットのすみ分けが価格差によって綿密に行われていたのだった。
今回はウィメンズの服を買い揃えるのが主な目的で、渋谷、原宿、銀座界隈のファストブランドの店を、何度も行ったり来たりした。最初のうちは勝手がわからず、フィッティングルーム待ちに並ぶ女性たちの列をレジ待ちの列と間違えて並んでしまったりもした。途中で周囲の不穏な空気を察知し、「お呼びじゃない」と心の中でつぶやきながら列を離れた。そりゃ、変だよね。僕はいつから女装趣味? 今思い出しても恥ずかしい場面だった。
どの店も、レジは行列に並ぶことが多いが、店によっては大行列のときとすいているときが波のように交互にくることがあり、何度か通ううちに、その引き波時を狙って並ぶことを覚えた。
ファストショップの流儀に慣れてきた頃、レジ待ちが一人だけ、という状態で並んだことがあった。すると突然、一人の女性が横からブツブツと独り言を言いながら歩いてきて、僕の前、つまりレジで精算中の客の背中にピタッと身体をくっつけて立った。てっきり前の客と知り合いで、ついでに精算しようとしているのかと思ったが、前の客は突然くっついてきたオバサンに怪訝な顔をしている。
そうすると、レジ係の男性も、「きちんと並んでください。あちらが待つ場所です」と身振り手振りで説明した。女性は不機嫌そうにまた独り言をつぶやきながらズンズンと歩いてきた。と、僕の前でくるっと踵を返し、立った。僕の前に! 彼女のかかとは、ウェイティングラインを豪快に越えていた。
僕はその瞬間、彼女の肩にそっと手を置いた。彼女の不満いっぱいの顔がぐるっとこっちを向く。僕は「You, after me」と言った。女性は、不満そうに僕の後ろへと回った。僕の番になりレジまで行くと、すぐ後ろに人の気配。女性はおんぶお化けのように僕にくっついていた。
レジが混み出したため、もう1台レジが開いて、担当者が「次の方!」と呼んでいる。僕は自分の精算もそっちのけで、女性に「あっち。あっち」と指をさした。結局、女性は日本語も英語もわからないようだった。その女性を、今度は遠くから友人らしき男性が大声で呼んでいる。二人は大声で話し始めた。
友人は突然、手に持った傘を広げて、「こっちのほうがええんとちゃう?」的なことを言っているもよう。すると、レジにいるオバサンは買おうとしていた折りたたみ傘を広げた。結果、友人の勧める傘のほうがよいと判断したのか、それを小走りに取りに行って再びレジへ戻り、これまで買う予定だった傘は開いたままレジ横へ置いて帰った。
僕は心の中で「バカヤロー!」と叫んだ。まったくもう、「人生山あり谷啓」(←高校時代の親友の口癖)である。ファストショップは、僕の新たな修業の場でもありました。
さて、上の僕が着ているのは、ワコマリアのスカジャン。リバーシブルってところがいいんだよね。最近、人生何度目かのスカジャンブームが僕に訪れました。スカジャンは品よく着る、というのが僕のテーマです。
それと、去年の秋口からグッチのリングをあれこれ買い集めて愛用しているが、まあ〜、いろんな人に「それ、どこのですか?」と聞かれる。グッチですよ、グッチ! また新しいデザインも出たらしいので、みんな見に行くといいのでは? 価格が手頃なのもナイスなんです。
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa