冬のロケに心強いアイテムを得た。それはまだ日本では馴染みの少ない〈Mr&Mrs ITALY〉のモッズコート。内側のリアルファーが最高に暖かい。これさえあれば、氷点下の真冬早朝ロケだってへっちゃらだ。
僕は、子どもの頃からずっとサウナ愛好家である。サウナがあれば、ホテル、ジム、銭湯、ゴルフ場…ところ構わず利用する。最近こそ、サウナ目的でわざわざ行くということは少なくなったが、20代後半から30代の頃には、それこそわざわざ足しげく通っていた。
当時の行きつけは韓国式。スチームとドライサウナが隣り合って並んでいて、湯船と洗い場の奥にはあか擦り用のベッドが7つか8つ並んでいた。浴場を出て地下に下りると、オモニが腕を振るった韓国料理のコーナーがあり、サウナ後にそこでウゴジスープや豆腐チゲを食べるのが常だった。
マフィア映画にもサウナ風呂のシーンがよく出てくるが、そのサウナでは立派な入れ墨を入れた方々を大勢見た。あるときなど、サウナの中で、僕以外は全員入れ墨チーム、ということもあった。
でも、お互い裸でいるからなのか、不思議と外で洋服を着たそういう方々と会ったときの緊張感はない。なので、そんな状況の中でも、僕は冷や汗をかくこともなく、ただただ気持ちいい汗をたっぷりかいて、サウナの快楽を堪能していた。
サウナって、快楽ですよね。これって人にもよると思うけど、僕の場合、サウナに行くと頭と身体がスッキリする。だから、仕事のアイデアがまとまらなくなったら、迷わずサウナへ行く。
そういえば、ジョギングを頻繁にしていたときも同じようなスッキリ体験をした。汗をかくというそれ自体が、人をスッキリさせるのだろうか。机で考えてもダメなときはジョギングだ! …と言えれば格好いいのだが、僕はそのジョギング自体がもうシンドイので、サウナへ行きます。毛穴の汚れもスッキリ落ちるしね。
サウナのマナーとして僕がこだわっているのは、サウナを出た後、直接水風呂に飛び込んだりしないこと。これは子どもの頃、銭湯で飛び込んだら、見知らぬじいさんに「あんただけの風呂やないで」と怒られた体験が教訓となっている。
なので僕は、必ずサウナと水風呂の間にはシャワーを挟むことにしているが、でもそんなのお構いなしで勢いよく水風呂に飛び込むオヤジは大勢いる。子どもの頃、身近に怒ってくれるオヤジがいなかったんだな、と諦めるしかないが、できればやめてほしい。
最近、寒い日は必ずこの〈Mr&Mrs ITALY〉のコートを着ている。デッドストックのモッズコートの内側にリアルファーを張ったリメイクコートで、裸で着るとファーの感触が抜群に気持ちいい。が、実際、外出時に裸でコート、というわけにはいかないので、基本、スーツに合わせてワイルドなジェントルマンスタイルを目指している。
今季は年のせいか(そう思いたくはないけど)、これまで以上に「冷え」を実感している。このコートは少々ヘビーだけれど、重さよりも暖かさを優先して愛用しているのだ。僕は今年も、軽くてラクチンなダウンアイテムとは縁のない毎日だ。やせ我慢と言われようとも、ますます頑固に星一徹並みの眉間ジワでジェンツ道を貫き、「華麗なる加齢」を目指す所存だ。
まあ、そのためには身体のコンディションを整えないといけませんね。昨年後半、僕は101日の断酒をしたが、あれは果たして身体によかったのだろうか? 酒の解禁後、飲む量はうんと減ったのでよかったんだろうか。でも、飲んでも飲まなくても、たいして体調は変わらないような気もする。
さて、先ほども述べたとおり、このコートにはスーツを合わせることを基本としたい。カジュアルに着る場合は、ミリタリーパンツとルーズニット。足元はビッグシルエットの〈マルニ〉のスニーカーである。スーツを着たら、ラペルに〈シャネル〉のピンをつける予定だ。キューバをテーマにしたパイナップルモチーフのもの。パールなのにお気楽なところがいいんだよね。
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa