2019.10.13
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.35 グッチのリングと、MINEDENIMのジーンズ|2017年2月号掲載

〈グッチ〉のコスチュームリング鬼買い。野口強さんの〈MINEDENIM〉厳選買い。大好きな〈ドルチェ&ガッバーナ〉のネックファーをなくして大騒ぎ…。今月もみんなにお世話になりながら、能天気な服三昧の日々が過ぎました。

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先日、大手アパレルの社長の車に同乗させていただいたら、「服の価値」についての話になった。社長いわく、「ファストファッションの驚異的な発展で、人々の服に対する価値観は変わった」。



確かに、ファストファッションをスタンダードとしている若者に「何のために高級な服を着なくてはいけないのか」と問われたら、僕は彼が納得する答えは出せないと思った。



その数日後、大手百貨店関係者と話したら、ラグジュアリーブランドを買っていた年輩層は、実際に着ていく場所(“オケイジョン”という言葉を連発されていた)が年々減るので買い物をしなくなってきたとのこと。年齢とともに人目につく場所へ行かなくなるから、ラグジュアリーな服は必要ないってことらしい。



最初の話に戻るが、大手アパレルの社長が、前段の話に続けて「日本では年間で60%の服を燃やしているのですよ」と教えてくれた。驚いた後に落ちた。燃やすのか…。60%という数字が正確かどうかはともかく、そういう現実は確かにあるのだろう。



冷静に考えれば、10年前に比べるとファストファッションの店は格段に増えた。それに伴い、流通する服の量も膨れ上がったと思う。大量に作られた服が大量に売られ、売れ残ったものが大量に燃やされる。…寂しい話だ。



僕は単に服をたくさん買っていると思われがちだが、買った服は自慢じゃないけど実に大切にしている。先日、10年以上前に買った〈ドルチェ&ガッバーナ〉のネックファーを紛失して大騒ぎしてしまった。



紛失に気づいた前日は、パークハイアットに出かけていた。なくした場所として考えられるのは、ホテルかタクシーか自宅マンションのエントランスから自室までのどこか、に限られる。ホテルとタクシー会社に電話し、マンションの管理人さんにも確認したが、返事は一様に「ありません」。ガックリ肩を落として友人に話したら「災いを持っていってもらったと考えて、もう追わないほうがいい」と慰められた。



が、その4日後。自宅のマフラーラックからスルッとそのネックファーは出てきた。あんなに探したのに、一体なぜ!? 僕は喜びと恥ずかしさが入り交じった気分とともに、ファーをほっぺに当ててスリスリした。ホテルの落とし物係の方、タクシーの運転手さん、マンションの管理人さん、大騒ぎしてすみませんでした。



60%の服が燃やされているこの時代、古いネックファーに4日間振り回されていた自分の小ささにあきれる。が、その執着心にはわれながらシビれた。服は燃やしてはいけないのだ! 燃やすなら作らなければいい。本当にいいものだけを作ればいい。作るほうはまじめに作り、買うほうもまじめに選ぶ。そうしたら燃やす量も激減するんじゃないだろうか。



先日、一杯1000円のコーヒーを優雅な空間で飲んだ後、コンビニで100円のコーヒーを飲んだ。味には満足したが、そこに1000円のコーヒーにはあった優雅な時間は流れない。安くておいしいのは素晴らしいことだが、100円コーヒー“しか”ない世界は寂しいと思う。ファッションも同じだ。



一昨日〈シャネル〉のブティックでキューバコレクションの映像を観た。みな一様に楽しそう。ファッションに必要な夢を、シャネルは常に無言で教えてくれる。ありがたやありがたや。



(左)〈グッチ〉のタイガーリングはいちばん大きいサイズを取り寄せた。口元がデヘッとしているところが好き。獣でありながらマヌケなのが魅力。(中)野口強さんがディレクションする〈MINEDENIM〉。ファーストコレクションのヴィンテージカスタマイズを購入。色落ち具合がナイス。(右)3点すべて〈グッチ〉。左のタイガーに対抗する、薬指のライオンがポイント。これだけ大ぶりのリングをつけていると、ポケットへの手の出し入れが大変困難。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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