梅雨時にはレインコート、傘、長靴。大雨の朝でも焦らなくていいように用意周到&準備万端を心がけている。『雨に唄えば』の主人公よろしく、大雨の中でも歌って踊る心意気で梅雨を乗りきりたいものである。
6月の中旬は毎年メンズコレクションへと出かける。去年はロンドン、ミラノ、パリと三都市を巡ったが、今年はミラノだけ。パリを避けたのはテロの可能性がなくなっていないというのも理由の一つだが、なにより東京でやらなくてはいけないことがたまっていたからである。
今回は、生まれて初めてフィンエアーを利用した。東京→ミラノのノンストップ便がやたら高かったし、パリ経由はロストバゲージが心配だったので、ヘルシンキ経由を選んだのだ。フィンエアーでコレクションへ行く人なんてまずいないだろうなと思っていたら、ミラノに到着時、某アタッシェドプレスの女性に会った。
フィンエアーでの旅は快適だった。まず、乗り換えで降りるヘルシンキのヴァンター空港の規模がいい。小さくて、ターミナルビルは一つ。シャトルバスなど必要なく、すべて歩いて移動できる距離。国内旅行みたいで気が楽だ。空港内には、ラグジュアリーブランドも少しはあるが、北欧ならではの店がズラリと並ぶ。
乗り換えの時間は約1時間。店をのぞきながらゲートへ向かうと、ちょうど搭乗時間だった。効率よく乗り継ぎできるのはノーストレスで最高だ。最近は、パリのCDG経由でミラノに入るとかなりの確率でロストバゲージをくらっていたが、ヴァンター空港のミニマムな雰囲気や機内でのホスピタリティを見る限り、ロストなど起こり得ないと思えた。
案の定、行きも帰りも荷物はすんなりと出てきた。ヤッホ~! 荷物は出てきて当然なのに、ロストを何度も経験すると、この当たり前のことがたまらなくうれしい。ヨーロッパへは、当分フィンエアーを使うことにしようと思う。
さて、梅雨である。僕のワードローブには、いわゆる一生モノと呼べるものはない。そもそも、一生モノとはどんなものを、何を基準に言うのだろう。そんな僕にも、ごく稀に、大昔に買ってもう一度着てみようと思う服がある。
今回着ているレインコートはそんなレアアイテムの一つだ。買ったのは約25年前。パリのサンジェルマン・デ・プレにある「マルセル・ラサンス」のものだ。もうのぞくこともないが、当時はあの店でよく服を買っていた。
このレインコートのほか、ツイードジャケットやコーデュロイシャツなど、フレンチ・カントリージェントルマンな服を買っていた。が、今も着るのはこのレインコートだけ。茶色のほかに黒も持っていたはずだが、今はどこにあるのかわからない。多分、トランクルームのどこかに眠っているはず。
このコートは、身体を包み込むオーバーサイズで、着ている感じがしない軽さが素晴らしい。雨が止めば、丸めて小さくして鞄に入れられるのもありがたい。もしかしたら、僕にとって、これこそいわゆる「一生モノ」なのかもしれない。
梅雨時は、ビニール傘ではなくて本格的な傘を使いたい。朝から丸一日雨の日があるからだ。〈フォックス〉でオーダーしたタータンチェックの傘は自慢の逸品で、かれこれ10年前に作ったが、使ったのは10回未満。なくすのが怖くてめったに持ち歩かないからだ。
先日、某プレス女子に「伊勢丹の傘ですか?」と言われて落ち込んだ。確かに伊勢丹のチェックと似てはいるが…これは〈フォックス〉でオーダーしたの!!!
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa