2019.10.06
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.27 ポータークラシックのアロハシャツ|2016年6月号掲載

ついにアロハシャツを購入した。「アロハをスマートに着たい!」。それが今年の春夏の僕の目標である。まずはジャケットと合わせて着る予定。ポリネシア風ではなく、カリビアンな感じで着こなせたら最高なんだけど。

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今年はアロハシャツをエレガントなムードで着こなしたいと思っている。いきなりアロハシャツ一枚を引っかけるような着方はちょっと僕にはハードルが高すぎなので、とりあえずスーツのインナーとしてアロハを合わせてみたい。



思い起こせば、僕の通っていた高校は制服がなかった。だから何を着て行ってもいいのだが、当時、アロハシャツといえば、ヤンキーの夏服の定番だった。ちなみに僕の左隣に座っていたヤンキー岡本は、少し伸びたパンチパーマに白ベースのアロハ。それにオニツカタイガーのライトグレー×赤のジャージーパンツをはいていた。右隣は、留年して同じクラスになった1歳年上の先輩ヤンキーである。彼はなぜか「たのきんヘア」であった。この先輩もアロハをよく着ていた。



そんなある日、先輩ヤンキーは僕にこう言った。「祐真、俺もオマエみたいな格好したいねんけどな~」。満面の笑みを浮かべながら。が、「オマエみたいな格好」と言われても、当時の僕はプレッピールックである。両隣のヤンキーは、どう見ても高校生には見えず、頭にタオルを巻いたら祭りの屋台のたこ焼き屋の兄ちゃんである。なにゆえにこの二人はプレッピールックに憧れたのだろう。



…というわけで、僕にとってアロハシャツとは、あくまでもヤンキーのカテゴリーに属するものであり、とてもじゃないが「僕も先輩たちみたいな格好、したいんですけどね~」とはならなかった。しかも、その高校時代のトラウマは、ごく最近まで続いていた。



「アロハ」の意味を調べると、ハワイ語で「好意」とか「愛情」とか「慈悲」とか「優しい気持ち」…ということらしい。なるほどね。あのヤンキーたちも、見方によっては、「アロハ」な気持ちをもった「アロハシャツ好き」だったような気がする。今はどうしているのだろう。



今シーズンは、〈サンローラン〉や〈ヴァレンティノ〉などからもアロハシャツが発表された。モードのど真ん中に登場したとあれば、いかにトラウマにさいなまれる僕でも、トライしないわけにはいかない。この2カ月、アロハを見れば実にさまざまな店で試着しまくった。



結果、僕に似合うアロハは、バキバキにはっきりした絵柄、ではなく、手描きタッチの頼りなさそうな線で描かれているものだということがわかった。色も単色系のほうがしっくりくる。〈ポータークラシック〉と〈RRL〉の二点が非常に気に入っている。そして〈サンローラン〉のアロハを見ていたら、『ブエナ・ビスタ・ソシアルクラブ』が観たくなった。で、観ていたら、アロハをスーツに合わせたくなり、ストローハットもかぶりたくなり、結局イラストのような格好になった。



僕の衣装部屋には、アロハやキューバシャツ、パラカシャツなどはほとんどない。なぜかと言えば、そういうタイプのシャツはみんな半袖だからだと思う。僕は長いこと、「シャツは長袖が基本」と考えてきた。暑い日は袖をまくればいいのだ。でも今年は半袖の開襟シャツにチャレンジしてみたいと思う。



…のだが、果たしてできるかな~。かき氷なんかも半袖のほうが圧倒的に食べやすそうなので頑張ろう。『ブエナ・ビスタ~』や小津安二郎の映画に出てくる半袖の男たちみたいに、この夏、僕はなれるのだろうか!?



(左)LAで購入した〈RRL〉。テーマは不明だが、落書きみたいで好き。一枚で着るのはビーチでだけ、だろうな~。(中)〈ポータークラシック〉の限定品。真夏に、白いスーツのインナーとして着たいと思っております。(右)〈ポータークラシック〉の色違い。幸福感に満ちた絵柄は、トリュフォーの映画を題材に描かれているそうです。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon Photos:Hisashi Ogawa

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