いつも新鮮な感じで洋服を着たいが、新しいものだけが新鮮とは限らない。古いものを今のものと合わせると、予想外の新しさに出会うこともある。「懐かしいが新しい」新旧ミックスのマイ・ブームはまだまだ続く…。
ありがたいことに、11月、12月と、いろいろなところでトークショーをする機会を得た。ほとんどの場合がラグジュアリーブランドの主催で、聴きに来てくれるのはそのブランドの顧客である。中には雑誌との共同イベントもあり、そういう場合は読者も聴きに来てくれた。
トークの内容は、基本、ブランドについてがメインだが、あからさまにベタぼめするだけじゃつまらなくなるので、あれこれファッションやトレンドの話をしながら、その中にブランドの話を織り込んでいくことが多い。そんなとき、よく「スタイル」についての質問を受けるのだが、僕はこの「スタイル」という言葉が好きではない。というか、「スタイル」って何なのか、よくイメージできないのだ。なので、スタイルに関しての回答は中途半端なまま終了となる。
「スタイル」って何なんだろう。単に洋服をどう着こなすか、という話ではないことはわかる。人はみんな、可能な限り自分の好きなものを食べ、好きな場所に住み、好きな友達と一緒に遊び、好きな服を着る。そのすべてがその人の「スタイル」になるのだと思う。だから、他人に「こんなスタイルがはやってるよ」とか「こんなスタイルがいいと思うよ」なんてことは、軽々しく言えることではない。
結局、スタイルは自分でつくるしかないんだよな、というのが僕の持論だ。その「スタイル」がどんなに時流から離れたものであっても、自分でつくり上げた「スタイル」は個性的で素晴らしいと思う。
さて、今月サラがイラストにしてくれたのは、〈バリー〉のニットに〈グッチ〉のパンツといういでたち。バリーのマスタード色のニットは、去年6月にミラノでプレゼンテーションを見てひと目惚れ。きれいなカラーと、タートルネックの高さが好きだ。先月紹介した〈マルニ〉のニット同様、イエロー系である。
最近はイエローニットブームかも。これまでの人生で、黄色いニットを買ったのは2回だけだった。最初は29歳の頃で、〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉のモヘアのタートル。2度目は、つい5年前の〈ラグビー〉のシャギーモヘア。クルーネックでアイビーなアイテムだった。29歳のときは金髪だったので、〈コム デ ギャルソン・オム プリュス〉のニットはそれにふさわしくパンクでクレイジーな感じ。〈ラグビー〉はクリーンな気分の時代だったのでアイビーな雰囲気だった。〈マルニ〉はヒッピーライクなアーリーʼ70s。
この〈バリー〉のニットも、レイトʼ70sなムードで着ようと思っている。合わせるのは〈グッチ〉の太めのストレートパンツ。靴は〈ラグビー〉のルームシューズだ。これも、前述のニットとともに、5年前に購入したもの。〈グッチ〉のパンツはウールモヘアで素材に張り感があり、シルエットが崩れにくいのがいい。丈は長めのワンクッションにしている。
ランウェイに倣ってズルズルはくことも考えたが、モデルと自分の違いを熟慮した結果、こうなった。丈の長いスラックスをはくのは、エディ・スリマンの〈ディオール オム〉以来、12年ぶりだ。新鮮。新生〈グッチ〉と〈バリー〉の合わせ、そして足元はマイ・オウン・ヴィンテージから引っ張り出した〈ラグビー〉。こんな組み合わせにわくわくする、今日この頃なのである。
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa