2019.09.22
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 Vol.18 TODD SNYDERのタキシード|2015年9月号掲載

2016年春夏メンズコレクションを見に、ロンドン、ミラノ、パリを回った。かれこれ四半世紀通っているが、毎回、初めて来たような気持ちになる。ランウェイには魔物がいるのだ。その魔物は、僕をけっして離さない。

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今回のファッションウイーク・ツアーはロンドンから始まった。泊まったのは、ジョナサン・アンダーソンも大好きだという「THE ROOKERY」。長い歴史に彩られたこのホテルには、最新式の設備はない。が、かといって押しつけがましい無駄な威厳もない。内装の趣味もスタッフの心遣いも、程よい加減で気持ちがよかった。



チェックインの直後は、古い壁や床の印象から「金縛りになるかも」とビビッたが、ひと晩過ごすとそれが杞憂だということがわかった。ベッドの硬さや家具の配置、バスルームの使い勝手のよさ、そして部屋からの眺め。そのすべてが、いちいち考え尽くされたものであった。



都合7泊したが、日を追うごとに落ち着け、快適度が増した。結論を言えば、超快適なホテルであった。朝5時から夜10時まで明るいこの季節だから、よけいにそう思ったのかもしれない。朝が遅くて夕方はすぐ暗くなる冬に初めて来たら、だいぶ印象は変わったと思う。



ホテルに求めるもの。それは言い出したらキリがないが、最終的にはスタッフの人柄に尽きると思う。例えばバリのアマンダリのスタッフのように、完璧なサービスを客の目につかないかたちでさりげなくしてくれるのは最高だが、もちろん欧米でそれは期待しない。



自分でやれることは自分でやるし、常に危険と隣り合わせだという緊張感を保ちつつ、しかし程よくリラックスできる宿に泊まりたいと思う。過度なサービスは求めないが、頼めば速やかに物事を解決してくれるスマートなスタッフが欲しい。「THE ROOKERY」にはそれがあった。部屋に置かれている菓子や酒のセレクションにも、さりげないこだわりが感じられた。



ロンドンに7泊したのは1年半ぶりである。その後、ミラノ~パリと移動するので、僕としては珍しく、荷物はスーツケース1個にした。通常は2個。考えてみると、一度も着ない服まで持ち歩いているのが常であった。今回は、そんな無駄を徹底的に省くことにトライ。やればできるものである。



ロンドンに着いた翌朝は、時差ボケで4時半に起きた。時差ボケではあるが、爽やかな目覚めであった。シャワーを浴びた後、メールチェックなど、ひと通りのデスクワークをすませ、さて、何を着ようかと考えた。とりあえず、いちばん近くにあった〈トッドスナイダー〉のタキシードに袖を通す。気張ることなく、カジュアルな気分で着られるのがMade in USAの魅力だ。ジャケットはカーディガンのように、パンツはジーンズのように。タキシードなんだけどね。



そんなスーツには、インナーにTシャツを合わせることが多い。この日合わせたのは、息子に借りてきたバスケットボールのチームロゴが入ったもの。靴は〈コンバース〉のオールスター。このイージー・タキシードには、デザイナーズブランドのスニーカーではなく、オールスターや〈ヴァンズ〉のオーセンティック、〈コンバース〉のジャックパーセルを合わせている。



靴下は「JOHN」で買ったスケーターソックスにしたが、これ、期せずして渋カジ全盛期の女子高生のルーズソックスと激似。〈LCM〉のラペルピンをつける位置で30分迷ったが、半端な位置につけたまま、お出かけとなった。



(左)〈トッド スナイダー〉のタキシードは、気軽に着られるところが魅力。最近マイブームのMade in USAものだ。(中)〈グッチ〉のラポ・エルカン モデルはネイビーのシアサッカー。華やかな裏地にシビレます。(右)〈ダンヒル〉のコットンジャケット。脱いだり着たり、着脱の多いこの季節には実に重宝する一着。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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