2022.04.27
最終更新日:2024.03.07

祐真朋樹の密かな買い物 |Vol.94 ソックス、ボクサーショーツ、ネクタイ

これまで最も数多く購入してきたアイテム。ソックス、ボクサーショーツ、ネクタイである。ネクタイしなくちゃいけない職業じゃないけど、古着からモードまで数多のタイを締めてきた。ボクサーショーツもいろんな種類をはいてきた。ソックスに至っては、果たして? どんだけー!? 今回はそんな僕にとって三種の神器的小物を厳選してピックアップしました。

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 ここ数シーズン、愛用しているロングホーズは「タビオ」のシルク×パイルである。このホーズの魅力は、足首からふくらはぎの見え方が絶妙であること。シルクが生み出す程よい艶は触らずして滑らかさを感じさせる。そしてこの名作の最大のポイントは、指先から踵にかけて、パイルを使っていること。これによりちょうどいい弾力性が生まれ、はき心地抜群。同時にシルク製の底よりはるかに強度が増し、長もちホーズになっている。ロンドンやローマ、パリの老舗店でも山ほどソックスを買ってはいてきたが、こんなに素晴らしい素材のソックスに巡り合ったことはない。



 その素晴らしいホーズに惚れこんで、昨年の暮れには、ディレクターを務めている「ランバンコレクション メンズ」でもぜひ別注できないかと思い、渋谷にある東京オフィスへ依頼に行った。残念ながら商談は成立しなかったが、貴重な話を聞くことができた。現在、このミラクルなロングホーズを作ることができる機械は日本では(おそらく世界でも)タビオにしかないらしい。それも、ほんの数台とのこと。当然、生産量は限られるわけで、効率を考えれば普通の経営者なら手を出さないはず。だが、タビオの越智直正会長は違っていた。常人には想像すらできない、底抜けの靴下愛にあふれていたのである。そんな会長のおかげで、僕はこのような素晴らしい名品と巡り合えた。以前から、お店のショーケースに置かれた越智会長の自叙伝が気になっていたが、この話を聞いて、その本ががぜん、読みたくなった。が…その数週間後、僕は会長夫妻が事故で亡くなられたという悲報を、運転中にラジオで聞いた。僕は車を路肩に止めて靴を脱ぎ、パンツの裾からのぞくロングホーズを眺め、手を合わせた。こんなにいい物を作っている人にも寿命はあるのだな。それも突然に。僕はもっと毎日を必死に、ちゃんと生きようと思った。



 お気に入りのボクサーショーツはスイスの「ハンロ」のもの。これはシーアイランドコットンのタイプだが、ほかの素材も愛用中。シルエットの美しさに最も惹かれているが、肌触りのよさも群を抜いている。僕の場合は9割、紺か黒をはいており、その2色の色艶も好みである。最近は日本でも取扱店が増えているが、コロナ前は毎回パリコレへ行くと、ボンマルシェの下着売り場で買っていた。今年の夏あたりには、久々にメンズのパリコレへ出かけたいものだ。



 ランバンコレクション メンズのナロータイは、100年以上の歴史をもつネクタイブランド、アンシム・ムーレイが手がけたもの。極力芯を薄くし、シルクの滑らかさと艶を最大限に生かして風になびくようなネクタイを目指した。「結び目は小さく、ディンプルは深く」が締めるときのポイント。この一本を作るのに10カ月ほどかかったが、この先ももっと素晴らしいネクタイを作っていきたいと思う。仕事着として惰性でするネクタイではなく、おしゃれを愉しむためのネクタイを追求したいのである。



 今回は、「脇役」とも言える3アイテムを紹介した。映画では渋い脇役が光る作品に惹かれることが多いのだが、日々のファッションにおいても脇役は大きな意味をもつ。諸先輩の素晴らしい仕事を見るにつけ、よきものが登場する裏には、作り手の「愛」があったことがわかる。その「愛」こそが、身につける人の何かを変える気がするのだ。

(左)ハンロのボクサーショーツはフィット感が素晴らしい。スラックスやジーンズなどのシルエットにも悪影響を与えません。(中)タビオのロングホーズ。これは僕的には世界最高傑作! この先も永遠になくならないでほしい! 色柄の種類が増えたらなおうれしい。(右)アンシム・ムーレイ製のランバンコレクション メンズのナロータイ。小さな襟のタブカラーシャツに合わせています。ヘリンボーンの地模様入りのしなやかな一本。
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Text:Tomoki Sukezane
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa

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