フアラライ、ボラボラ、ダナン、パリ…。どこかへ行きたい願望が心の底から湧いてくる。今ならビーチでごろりと一杯やりたい気分だ。しかし、コロナ禍においてはそんなの夢物語。そこで! タイダイルックで仮想リゾート体験。セリーヌのハット&Tシャツで海沿いを散歩、そしてコルビュジエ色の歯ブラシを持参します。そんな日が、一日も早く取り戻せますように。
毎日、新型コロナウイルス関連のニュースとそれに伴うワクチン情報、そして東京五輪騒ぎ…。なかなか前向きになれない空気が続く中、それでも春は刻々と近づいているわけですが、皆さんはいかがお過ごしでしょうか? 僕は今年も花粉症に悩まされており、35年目の“ウィズ花粉”な春に…トホホ。コロナの罹患経験者の話、特に後遺症についての話を聞くにつれ「絶対にコロナにはかかりたくない!」と思うけれど、花粉症もコロナとは比較にならないとはいえ、やる気が出なくなり家で寝ていたいという症状が現れるので困ったもの。手足の冷えや、鼻のグズグズ、耳の穴と目のかゆみ、そして喉のイガイガに就寝時の息苦しさ、さらに頭がボ〜ッとしてきて…(これは普段からそうかも)。これまで漢方を含むいろいろな薬や食事療法、そしてブロック注射なども試してきたが、結局どれも一時的な改善は見られるものの、完治はしない。しかも、たいていの場合は何かしら副作用が出て、結局プラマイゼロ。なので、最近はノー・ドラッグなウィズ花粉ライフを実践している。コロナのおかげでマスクをする習慣がついたせいか、例年は1月早々に症状が現れるのに今年は2月中旬からのスロースタート。周りにも花粉に悩まされている仕事仲間は多く、「今年は黄砂やPM2.5による大気汚染もひどいから気をつけたほうがいい」という声も聞く。が、何に気をつけるんだ? 目に見えないものとの付き合いは本当に厳しい。
「かんじんなことは、目に見えないんだよ」とは『星の王子さま』に出てくる言葉だが、今や肝心なことばかりでなく、目には見えない何やら得体のしれない厄介なものも、僕たちの周りに充満している時代になってしまった。これからは、よきにつけあしきにつけ、目に見えないものにも注目していく必要がありそうだ。
さて、前号でも書いたセリーヌのタイダイTシャツが入荷したので早速入手。ハットはミヤシタパークで開催されていたセリーヌのポップアップショップで買った。前から欲しかったのだが、ミヤシタパーク限定だったので、オープン日前夜のプチレセプションパーティで購入。派手なハットにタイダイTシャツ、とにかく明るい格好をしていたいのだ。花柄も着たい。セリーヌのレセプションは、店のサイズがコンパクトなのと、コロナ禍ということもあり、少人数で静かに行われていた。来ている人たち全員の顔が見え、互いの距離もしっかりとれる状態だったので、近くの人と小声で話す感じの雰囲気。安心できて落ち着いた。そこで、知り合いの編集者に「最新のセリーヌメンズコレクション、すごくよかったですよね」と話しかけられたのだが、僕は答えられなかった。まだ観ていなかったから。2021-22秋冬のリモートコレクションはセリーヌに限らずすべて観そびれていた。YouTubeでそのうち観ればいいや、という気分になっていた。いかんいかん。家に戻って早速チェック。確かにセリーヌの映像は素晴らしかった。春夏のダンシングキッドの雰囲気とは一変、愛の戦士と呼ぶにふさわしい、美しすぎる勇士の姿にシビれた。特にフリルブラウスとシルバーチェーンのネックレスの合わせにはグッときた。
知らず知らずのうちに、ファッションに対するポジティブな気持ちを失いかけていたことを痛感&反省した出来事であった。
Illustration:Sara Guindon
Photos:Hisashi Ogawa