多くの服に袖を通してきた大人たちには、必ず原点となる思い出の一着がある。「大人にしてくれた服」との出会いに耳を傾ければ、洋服を着ることの楽しみを再発見できるはずだ。ヘア&メイクアップアーティストの樅山 敦さんにとってのそれは、着なくなった今も捨てられないという、2001年に購入したトム ブラウンのシャツ。
THOM BROWNEのシャツ
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「動きやすさというスタイルを捨てて初めて飛び込んだトラッドな洋服」
樅山 敦さん/ヘア&メイクアップアーティスト
「買ったのは2001年。NYに旗艦店ができたときです。ちょうどアシスタントがNYに行くって言うので買ってきてもらいました。それまではヘアメイクとして動きやすい服を重視していて、白シャツみたいにトラッドなものは考えたことがなかったんです。ただ当時流行っていたダメージデニムにクラッシュシャツという服装で帰省したときがありまして。そしたら祖母にジーッと見られて『…お金がないんか?』と言われてね(笑)。そのときからですね、白シャツを着るようになっていったのは。その後トム ブラウンのスーツにシューズを追加で購入。2年くらいでトム フォードに心変わりしてからは全然着なくなっちゃったんだけど、今のスタイルの土台をつくってくれたのは、間違いなく祖母とこの白シャツ。もう着ないけど、捨てられない一枚ですね」