多くの服に袖を通してきた大人たちには、必ず原点となる思い出の一着がある。「大人にしてくれた服」との出会いに耳を傾ければ、洋服を着ることの楽しみを再発見できるはずだ。森岡書店の店主、森岡督行さんにとってのそれは、まだ神保町の古書店に就職したばかりの23歳の頃、初めてのボーナスをすべてつぎ込んで購入したモンクレールのダウンジャケットだった。
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MONCLERのダウンジャケット
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「質のいい洋服と長く付き合っていく楽しみを教えてもらいました」
森岡督行さん/森岡書店 店主
「神保町にある老舗の古書店に就職したばかりの23歳の頃、店のお客さんでモンクレールのダウンジャケットをかっこよく着こなしている人がいたんです。当時はまだモンクレールも有名ではなくて、こういうダウンは珍しかった。『冬はこれ一着あれば十分だよ』と教えてもらい、初めてのボーナスをすべてつぎ込んで購入しました。自分のお金で好きなものを買う…そのときに大人になったのを実感しましたね(笑)。軽くて暖かいし丈夫なので、今でも犬の散歩や娘の送り迎えのときなどに着ています。20年以上前のものなのに今でも日常的に着られるのはすごいと思います。シルエットも今のモンクレールほどシュッとしていなくて、ちょっとボリューミーでスキーウェアを思わせるレトロな感じがいいんですよ。こんなに長い付き合いになる洋服と出会ったのは初めてでした。まさに大人になる過程を一緒に過ごした服でもあります」