存在感を誇示するような黒は40歳男子には必要ない。かといって、目立たないからといった消極的な理由でも着ない。これは優しい人柄が反映されたような、攻めない黒の選び方。
さらさらな黒
大きな黒の巻き物で首を盛るのは、なんだか表情まで暗くなるし威圧的だ。ちょっと肌寒いこの時期にちょうどいいのはさらっと控えめなシルクスカーフだと思う(薄いのに実はけっこう暖かい)。サンローランで見つけた“ラバリエ”は光沢がないマットなシルクが珍しい。そして、変な柄が入っていない無地であることが重要だ。初めてでも無地なら難しく考えず、カシミヤのタートルネックニットと首の隙間に無造作にぐるりと巻いて、キュッと締めるだけで浮かずに馴染みがいい。シルクは見た目だけでなく、肌にも優しく、なんだか首まわりがさらさらになった気さえする。
スカーフ 長さ160㎝¥40,000・ニット¥173,000/サンローラン バイ アンソニー・ヴァカレロ(イヴ・サンローラン) ニットキャップ/モデル私物
やわらかな黒
ジャケットの下にはカットソー以上シャツ未満なニットポロシャツを着たい。春夏の半袖ニットポロの定番素材はウールではなくコットンだ。だけど、このきれいな肩の落ち方とドレープ、何より極上の肌触りは並じゃない。聞けば、カシミヤ100%! 通気性がいいカシミヤは暖かい時期でも実は重宝するし、とろんとした素材感がチャーミング。黒を着ていると思わせないほどやわらかな印象だ。
ニットポロシャツ¥22,000/エイチ ビューティ&ユース ジーンズ¥38,000/ナパピリ マーティン ローズ(Diptrics) 膝にのせたジャケット¥69,000/トゥモローランド ピルグリム(トゥモローランド) その他/スタイリスト私物
乾いた黒
スニーカーよりも革靴の気分。イギリスのクラークスもいいけれど、よりぽってりとした優しい面構えといえばアメリカのレッド・ウィングのポストマンシューズがあった。いちばんの特徴は厚くて底の平らなソール。足の疲れが軽減されるし、見た目もかわいげがある。ただ定番の#101は艶のあるスムースレザーがちょっといかつくて敬遠していたところ、アッパーがラフアウトレザー(毛足が整えられていないスエード)の新作#9112を見つけた。しかも柔らかなクレープソール。こんな光らない、とがらない、飾らない乾いた黒が大人の足元にちょうどいい。
シューズ¥35,000 /レッド・ウィング(レッド・ウィング・ジャパン) ジーンズ¥38,000 /ナパピリ マーティン ローズ(Diptrics) ソックス/スタイリスト私物
ぶかぶかな黒
選ぶべき黒アウターはやっぱり身体のラインを隠すオーバーサイズで、きれいなAラインを描くぶかぶかな黒だ。バッグでお馴染みのアエタが初めて手がけた洋服であるザ ライブラリー別注コートがその点で完璧。マットな質感のポリエステルナイロンタフタ素材でAラインの形状が出やすく維持されやすい。同素材で作られたバッグも一緒にミニマムに。
コート¥58,000・バッグ¥14,000/アエタ×ザ ライブラリー(ザ ライブラリー 表参道店) シャツ¥25,000/バグッタ・パンツ¥27,000/トゥモローランド ピルグリム(ともにトゥモローランド) ブーツ¥84,000/ビズビム(F.I.L. TOKYO) ニットキャップ/モデル私物
のびる黒
アウターと同じくセットアップもゆとりをもって…とはいかない。黒のセットアップに限っては過度なオーバーサイズだと、いい人というより怖い人に見えてしまう危険性がある。だけど、リラックスした雰囲気は欲しい。エディフィスがグラミチに別注したのは、実はブランド初となるセットアップ。ピタピタすぎないスリムシルエットでシャープながら、そこはグラミチ、驚くほどストレッチがきいていてよくのびる。動きを抑制しない軽さが、明朗な大人に見える秘訣なのだ。
ジャケット¥20,000・パンツ¥13,000/グラミチ×エディフィス(エディフィス 新宿) カットソー¥11,100/コム デ ギャルソン・シャツ フォーエバー(コム デ ギャルソン) スニーカー¥15,000/アシックス(アシックスジャパン お客様相談室) ソックス/スタイリスト私物
イヴ・サンローラン TEL:0570-016655
エイチ ビューティ&ユース TEL:03-6438-5230
エディフィス 新宿 TEL:03-5366-5481
F.I.L. TOKYO TEL:03-5725-9568
コム デ ギャルソン TEL:03-3486-7611
ザ ライブラリー 表参道店 TEL:03-3470-2151
Diptrics TEL:03-5464-8736
トゥモローランド TEL:0120-983-522
レッド・ウィング・ジャパン TEL:03-5791-3280
Hair&Make-up:Rumi Hirose
Stylist:Junichi Nishimata
Model:Taku Obata