年月というふるいにかけられて残ったものには意味がある。それでもまだ欲しいものには理由がある。
ブックディレクター幅 允孝さんの、コート選びの極意を聞いた。
幅 允孝さん ブックディレクター
「着続けて自分のものになる。その余白を楽しみたい」
ずっと着続けているコート 「BALENCIAGAのフーデッドコート」
ドストエフスキーが『我々は皆ゴーゴリの外套から生まれ出たのだ』と語った近代ロシア文学の先駆『外套』という小説。なけなしのお金をはたいてコート(外套)を新調した男が、それを追い剝ぎに奪われ、その悲しみで死んでしまう(その後、幽霊化)というすごい話です。時代は違いますが、コートはほかの衣類と比べて付き合う時間が長い(値段も高い)。そういう意味で選ぶときは命がけ(!?)です。
16/17AWシーズンに購入したバレンシアガのコートは、雪山でも都心のホテルでも、どんなオケージョンにも合うので重宝しています。デムナ・ヴァザリアがアーティスティック・ディレクターに就任した最初のシーズンのものですが、ビッグシルエットはほどほど。何より機能的で暖かい。裏地は中綿入りのキルティングで表地はコットン×ポリエステルだから多少の雨もへっちゃらです。しかも、フード部分のムートンがモフモフと気持ちよい。経年変化が楽しみなコートは付き合いが長くなるはずです。
この冬探していたコート 「FRANK LEDERのロングコート」
一方、今年欲しいのはフランク・リーダーのロングコート。彼はコンセプチュアルな服作りをする職人ですが、素材の存在感を大事にしたオブジェ的側面がある一方で、着続けていくと自身の身体に馴染んでくる余白がある。そろそろ大人なので、『外套』と長く付き合って自分のものにしていくような買い物をしたいですね。 ¥168、000(トートバッグ付き)/フランク リーダー(MACH55 Ltd.)
MACH55 Ltd. TEL:03-5413-5530
Photos:Arata Suzuki[go relax E more]
Stylist:Yoshiki Araki[The VOICE]
Composition&Text:Jun Namekata[The VOICE]
Stylist:Yoshiki Araki[The VOICE]
Composition&Text:Jun Namekata[The VOICE]