たかがアンダーウェア、されどアンダーウェア。いつもはまったく気にも留めないけれど、いま一度、真剣に対峙してみたら深遠な価値観や哲学がそこにはあるのか、ないのか。
洋服を脱いだときに、違和感があるような下着であってはならない
スタイリスト/池田尚輝さん
近年は独自の視点による企画展を催すなど、キュレーター的活動も。旅先では就寝時と翌朝とではアンダーウェアは必ずはき替える。
かつては、カルバン・クラインやグリジオペルラのようにウエストのロゴが主張するアンダーウェアが趨勢でしたし、自分自身も愛用していました。ただ2006〜’07年頃にトム ブラウンをはじめとするアメトラブームが起こり、その後、ノームコアに端を発するライフスタイルの流れが広がるにつれ、アンダーウェアにも、ファッション性より、素直なはき心地や歴史背景を求めるようになったのは当然でした。
現在は、夏から秋にかけてはサンスペルの天竺コットンのボクサーショーツを、それ以外の季節はフィルメランジェのボクサーショーツの「ジョイ」を愛用することが多いです。天竺のアンダーウェアはチョイスが限られますが、サンスペルのものは薄手なのにコシがあって通気性があり、緩むこともなく最高。唯一、ショーパンのときだけは裾からの外気でお腹が冷えないように腿まわりがフィットしたフィルメランジェに頼りますが、夏場のパンツと何かと相性がいい。
「ジョイ」はボディ部が綿100%なところが好きです。ジーンズなんかをはく際、中で下着がゴワゴワするのはストレスですが、これだと収まりがいい。もちろん布帛のトランクスをはくこともあります。スーツにドレスシャツを合わせるような場合は、シャツをインしたときにやはりトランクスのほうがシャツとの一体感もあるし、腰まわりの落ち着きがいいですね。
腰裏のポケットも心なしかシャンとして感じます。これは昔から言っていることなのですが、洋服を脱いだときに、下着とそれまでの自分の格好に齟齬があるのがすごく抵抗があるんですよね。スーツの男性が服を脱いだときにはやはりトランクスにロングホーズソックスがいちばん。これが派手な柄パンや短いソックスだと様にならない。
本音を言えば、普段も黒のTシャツには黒のボクサー、白Tには白ブリーフ…と下着もセットアップで揃えるのが理想ですが、こればかりは洋服との相性もあってなかなか難しいです(笑)。
人生最後のアンダーウェアは手に入れた。次は人生最後のソックス
フォトグラファー/長山一樹さん
一年中いかなるときもスーツスタイル。インスタグラムでは専用のアカウント「mr_nagayama」で、ジェンツなライフスタイルを発信。
「贅沢な精神」を日頃からもつことを大切にしています。ただの贅沢な体験であれば一瞬で満足感が終わってしまうし、後に残るものがありません。大事なのは精神が満ち足りていること。それには普段から最高級のものを当たり前に身につけるのがいちばん。それも、奮発してブランド物の値の張るコートを買うとかではなく、もっと身近かつ無理のない範囲で。そういう思考から、サンスペルのボクサーショーツを愛用することにしたんです。
どういうことか? 普通、下着ってブランド物でも2000〜3000円ですよね。サンスペルは6050円。倍ほどしますが、品質は文句なしに最高級。サンスペルは布帛のトランクスも有名ですが、僕は一年中スーツで過ごすため、トランクスだと中がゴワゴワして落ち着かないのでボクサーショーツ派です。これを年始に1週間分=7枚まとめ買いして、総入れ替えしています。
1枚6050円として年間4万2350円。1日に換算すると約116円。普通に毎日飲料水を買うのと同じですよね。だったらけっして「わかりやすい贅沢」ではないけれど、上質なアンダーウェアを毎日味わえる喜びに僕は投資したい。誰にも見えないものだから安価な下着でいいやって精神はけっして豊かとはいえないし、人生においても次のステップに行けないと思うんです。
5年前に実行に移して以来、一日たりともほかの下着ははいてません。まさに「人生最後のアンダーウェア」というわけです。今、探しているのは人生最後のソックス。具体的にはローファーを履いたときに外から完璧に隠れて見えないソックスです。特にオールデンのタッセルローファーは履き口まわりが深く作られていてソックスがはみ出しやすい。僕にとっては踵のずり落ちにくさなんかより、よほど大事な問題。いろんなショップを巡りましたが、これが本当に見つからない。ドレスシーンにはあれだけ多くのプロフェッショナルが揃っているのに、いったいなぜなんでしょうか?
SUNSPEL MEN’S Q82 SUPERFINE ボクサーブリーフ
サンスペルを代表するQ82コットンジャージー素材を用いたアンダーウェア。手摘みされた最高級の超長綿コットンを使用。「黒、白ともにはきます。程よくドライタッチで優しく身体にフィットします」(池田)。
偶然にも池田氏と同じQ82素材を愛用。「ウエストロゴが同色で主張しないのもいい。年間一枚当たり約50回着用する計算ですが、へたることなく気持ちよくはける。潔く白を、とも思いましたが黒を愛用」(長山)。
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